GLACIER(グレイシア)

弓チョコ

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第99話 We will keep living on this world.

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「ぐはあ! 疲れたーっ!」
「あ。お帰りなさーい」

 玄関からオルヴァリオの声がした。リディも一緒だろう。シアはエプロン姿のままぱたぱたと迎えに行った。

「おうシア! これ見てくれよ!」
「なあに? オルヴァさん」
「あんたそればっかりよオルヴァ。良いけど」
「?」

 泥だらけで帰ってきたふたりは、意気揚々と1枚の紙をシアへ渡した。

「……『特級証明書』!」
「そうだ。遂にやったぜ。これで俺も特級ハンターだ」
「俺『達』でしょ。お馬鹿」
「凄い! おめでとうっ!」

 それはギルドからの正式な書面だった。シアは自分の事のように喜び、ぴょんと跳ねた。

「取り敢えずお風呂」
「沸いてるよー。私がいつもこの時間だし」
「助かるわ。ほらオルヴァ。寝るなら部屋行きなさい。玄関で寝るな」
「ほげ……」
「あー。荷物も片付けとくから。ふたりは先休んどいて良いよ」
「悪いわねシア。クリューは?」
「お仕事。最近帰り遅いの」
「へえ。あいつも頑張ってるのね」

 ばたばたと、ドロドロのままふたりは2階に上がって部屋へ入っていった。それを、やはり嬉しそうに眺めるシア。

「『家』感あるねえ。今回も無事に帰ってきてくれて良かった」
『シア様。お鍋が』
「ああっ!」

 ネヴァン教の事件が解決してから。
 しばらくの時が経っていた。

「で、何して特級になったんだオルヴァ。トレジャーか?」
「ふっふ。聞いて驚くなよ。新大陸だ!」
「なに!」
「そうそう。あの『大霧海』を攻略したのよ。その先に、見たことない大陸があった。第一発見者は勿論あたし達。すぐに出回ると思うわ。世界が震撼するわよ」
「凄ーい!」
「ふふん。これでようやくエフィリスに並んだぞ」
「と言っても、エフィリスはたったひとりで『ガルバ荒野』制覇したらしいから、実力的にはまだ及ばないかもだけど」
「良いんだよ。同じ特級だ。約束してたんだ。チームアップするって」
「なら、次はエフィリスとその新大陸に行くのか」
「ああ。『大霧海』の越え方は俺達しか知らないからな。大遠征になる。他の特級も募るつもりだ。また山ほど土産話、持って帰ってくるからよ。楽しみにしててくれ」

 オルヴァリオとリディが帰ってきた夜はいつもこんな調子だ。途端に賑やかになる。クリューも心から楽しそうに話を聞いている。そんな彼を見て、シアも嬉しくなる。サスリカもにこにこしている。

「で、あんた達子供はまだなの?」
「うーん。もういつでも授かっても良いよね。クリューさん」
「……そうだな。まあ焦る必要も無いだろう」
「ていうかリディさんの方は?」
「あたしはまだ冒険が優先かなあ。やっと特級になって、これからって時だし。ねえオルヴァ」
「ああ。子供には悪いがまだまだ足りない。今すぐ新大陸へ行きたくてうずうずしてるからな」
「オルヴァも『トレジャーハンター』になってきたな」
「なんだそりゃ。俺は最初からトレジャーハンターだぜ」

 いつまでも、皆一緒に。その願いは最大限叶えられた。

『シア様。洗い物はワタシが』
「良いって。じゃあ一緒にやろ?」

 屋敷に、使用人は居ない。家のことはすべてシアとサスリカが行っている。

「妻がふたり居るようなもんだな。クリュー」
「ありがたいことにな」

 サスリカはもう冒険には行かない。壊れてしまったら誰も修理できないからだ。そんな危険を冒させる訳にはいかない。老朽化は激しいが、シアがなんとか応急処置を続けて、後は安らかに最後を待つ状態だ。

「しかしエフィリスは良いとして、サーガはローゼ帝国に戻って、マルは孤児院の先生か。もう集まれねえかなあ」
「そうね。前に全員集まったのはクリューとシアの結婚式だから……」
「別に一生会えない訳じゃない。なんならお前達の式にもう一度集めれば良い」
「確かに!」

 恐らくは。しばらくはずっと、この生活が続くだろう。

「あんた仕事はどうなの? クリュー」
「こっちも順調だ。『冷蔵庫』と『ストーブ』は売れすぎて生産が追い付かない。今度中央大陸の方にも工場を建てるんだ。久し振りにエヴァルタに会って来るよ」
「おお、やるなあ。大社長!」
「シアとサスリカのお陰だけどな。俺はアイデアを出していない」
「でも私とサスリカじゃ折衝なんてできないもの。ねえ」
『ハイ。ますたーも役に立ってます』
「言い方」
「あははっ」

 その日は夜中まで話し声、笑い声がしていた。
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