東京悪夢物語

冷凍電車

東京悪夢物語「冷凍電車」

暑い、

今年は6月から、うだるような暑さだ。
この調子でいくと、7、8月は、どうなってしまうんだろう。
それにしても暑い、暑い…

電車、ガタン
暑い、
この電車は冷房が効いているのか？
暑過ぎる。
乗客も皆、汗だくでいる。
ちょっと暑すぎないか？
バタン、窓を開ける。
まったく涼しくない。熱風が入ってくるだけ。
耐える…
やっと駅に着いた。
運転手を見つける。
「君、君、」
「今日の電車、凄く暑いぞ。あんなに暑くちゃ、熱中症になってしまうじゃないか」
「もう少し、温度を下げたらどうなんだ！」
「そうですか、すいません」
トボトボと歩いて行く運転手。
「…うるさい客だ」ブツブツ、ブツ

次の日、
電車、ガタン
涼しい、
今日の電車は、冷房が効いている。
涼しくて気持ちがいい、
いや、冷え過ぎる。
乗客も皆、腕を抱えて震えている。
ちょっと冷えすぎないか？
ハーッ、手を擦る。
耐える…
やっと駅に着いた。
運転手を見つける。
「君、君、」
「今日の電車、凄く寒いぞ。あんなに寒くちゃ身体に毒じゃないか」
「もう少し、温度を上げたらどうなんだ！」
「そうですか、すいません」
トボトボと歩いて行く運転手。
「…うるさい客だ」ブツブツ、ブツ

数日後、
今日も、うだるような暑さだ。ジリジリと日差しが刺す。
早く、電車に乗ろう。ガタン、
寒い、
今日はまた、一段と寒い電車だ。
皆、ガタガタと震えている。
寒すぎる！もう限界だ、
途中の停車駅、
私は慌てて、運転手に文句を言った。
「君、君、」
「こんなに寒くちゃ、風邪をひいてしまうじゃないか！」
「おかしいですね、お客様。電車を間違えて乗っていませんか？」
「えっ？」
プルルルルーー(ベルの音)

寒い、
窓が霜で凍ってきた。
ガタガタガタ、
震えが止まらない、まるで冷凍庫だ。
バタン、
女の人が倒れた。
バタン、バタン、
次々と、乗客が倒れていく。
大変だ、
ガンガン、ガン、
私は、運転席の窓ガラスを叩いた。
「おい、みんなが倒れているぞ、早く止めろ！」
運転手は、振り返りもしない。
「どうしたんだ、早く止めろ！」
まったく、運転手は振り返らない。
バタン、
とうとう、私一人になってしまった。
寒い、凍えてしまう。
降りなくては、
意識が遠のいていく、
もう、ダメだ…
バタン、
消えゆく意識の中、運転手のアナウンスが聞こえた。

「この電車は～冷凍電車になっておりま～す…」