東京悪夢物語

ヨッシー@

文字の大きさ
2 / 30

シロイルマ

しおりを挟む
東京悪夢物語「シロイルマ」

白い、
入る、
悪魔の魔、
「白入魔、って書くんだ…」

奥田が、独り言を言った。
奥田は、都市伝説が大好きだ。
いつもネットで検索している。
また、新しい都市伝説を見つけたらしい。
深夜12時ちょうどに現れ、ゆっくりと街を徘徊する妖怪。
全長2メートルぐらい。頭は細長く、鼻が異様に長い。全身が真っ白で首と腰に黒い線が入っている。尻尾は短い。
一見、アリクイのように見えるが、体毛は一本も生えていない。ツルツルだ。
目撃例は多々あるが、半透明な姿が多い。
普段は神社の土の中に眠っているが100年に一度、食事の為に地上に現れる。
餌は油で、何十リットルも飲み干す。
ただ、人間に見られるとその人間を襲い、その人間に成り代わる…らしい。

怖い話だ、
誰が考えたんだ。
作り話もいい加減にして欲しい。
気持ちが悪いにもほどがある。私は、その手の話が苦手だ、うんざりだ。
昔から、そうだった。
幽霊やら心霊番組などは見たことがない。
所詮、嘘ばかりだ。
また、聞きたくもない話を聞いてしまった。
早く帰ろう。
今日の夕日も、嫌な色だ…
……
……
つい、うたた寝をしてしまった。
「はっ、」
もう、12時近い。
今日は、遅くなってしまった。
急がなくては、
私は、朝早いので夜に洗濯物を干す。

ベランダ、
三階は風が吹いていた。
ガタッ、ガタッ、
パン、パン、
「うるせえなぁ、何時だと思ってるんだよ!」
「す、すいません」
隣の黒川さんだ。
異様に音にうるさい。
ちょっとでも物音を立てると、すぐ怒鳴ってくる。
そーっと、洗濯物を干す。
「…… 」

ぎにゅーん、
ぎにゅーん、

何だ?
通りの交差点の方から聞こえてくる。
ぎにゅーん、
よく見ると、細長い動物が歩いていた。
白い、
鼻が長い、
あれは、
奥田が言っていた、シロイルマ!
まさか、本当にいるなんて、
ぎにゅーん、
ぎにゅーん、
12時とはいえ、まだ誰かが通るかもしれないぞ、
大丈夫か、見つからないのか、
ぎにゅーん、
ぎにゅーん、
ゆっくりと、通り過ぎて行くシロイルマ。

次の日、会社。
「奥田、昨日言っていたシロ何とかの事なんだけど」
「シロイルマですね、はい」
「ああっ、それ」
「何ですか、」
「見たんですか?」
「いや…」
「最近、目撃例が多いんですよ~」
「見える人と見えない人がいるらしく、見える人は、しょっちゅう見るそうですよ~」
「そうか…」

その晩、
午後11時55分、ベランダ
私は、もう一度、シロイルマを確認するために準備をした。
双眼鏡、ビデオ、カメラ
11時59分58秒、
11時59分59秒、
12時00分
…… 、
…… 、
…… 、
現れない、
やっぱり幻覚だったのか。
奥田が妙なことを言うから幻覚が見えたんだ。
「寝よう、寝よう、バカバカしい」
ぎにゅーん…
ぎにゅーん…
!?
いた、
やっぱり、いた、
シロイルマだ!
ゆっくりと歩いてくる。
半透明だ。
双眼鏡で見てみる。
毛が生えていない、ツルツルだ。
まるで、ガラスの置き物のようだ。
ぎにゅーん、
ぎにゅーん、
じっと見る。

ぎっ、
動きが止まった。
ゆっくりと、こちらを振り返るシロイルマ。
黒目が無い。
目が合った、
まずい、気付かれた。
慌てて部屋に逃げ込む。
ガチャ、
シャーッ、
ベランダの鍵を閉め、カーテンも閉める。
ぎにゅーん、
ぎにゅーん、
こっちに近づいて来る。
ガタッ、ガタッ、
登って来てるのか、ここは三階だぞ、
ガタッ、ガタッ、
ぎにゅーん、
「まずい、」
「食われる、」
ぎにゅーん、
「うるせえなぁ、何時だと思ってるんだよ!」
黒川さんだ、
ガタッ、ガタッ、
「うるせえなぁー」
ガラッ、
ベランダに出る黒川さんの音、
ぎにゅーーーーーん、
「ゔうっ…」
……
……
ピチャ、
ガタ、ガタ、ガタッ、
ガタ、ガタ、ガタッ、
震えが止まらない、
「来るな、来るな、」
「神様、」
私は意識を失った…

朝、
いつもの朝日だ。
夢だったのか、何でもなかった。
ゴミを出しに行く。
黒川さんが立っていた。
「お、おはようございます」
「……」
「おはようございます、昨日…」
「……」
黒川さんは、じっと、空の油のビンを眺めていた。
心なしか青白い顔をしている。
色黒で常に日焼けしてる黒川さんが、青白い顔をしている。手も白い。
ああっ、
もしかして、
私は慌てて、その場から逃げ出した。

その後、
黒川さんは行方不明になった。
近所の中華店の油が、大量に盗まれた事件もあった。
犯人は見つからない。

たまに、神社の前を通る。
ぎにゅーん、
小さな声がする。

また、100年後か…
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2025/12/13:『ものおと』の章を追加。2025/12/20の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/12:『つえ』の章を追加。2025/12/19の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/11:『にく』の章を追加。2025/12/18の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/10:『うでどけい』の章を追加。2025/12/17の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/9:『ひかるかお』の章を追加。2025/12/16の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/8:『そうちょう』の章を追加。2025/12/15の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/7:『どろのあしあと』の章を追加。2025/12/14の朝8時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

トンネル

旅人
ホラー
5分くらいで読める短いホラーです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

どうしてそこにトリックアートを設置したんですか?

鞠目
ホラー
N県の某ショッピングモールには、エントランスホールやエレベーター付近など、色んなところにトリックアートが設置されている。 先日、そのトリックアートについて設置場所がおかしいものがあると聞いた私は、わかる範囲で調べてみることにした。

奇談

hyui
ホラー
真相はわからないけれど、よく考えると怖い話…。 そんな話を、体験談も含めて気ままに投稿するホラー短編集。

処理中です...