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【最終話】
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廃棄場の運搬ロボットは積荷をトラックからおろした。そしてロボット工務店の倉庫にゆっくりと置いた。
ICタグで管理された荷物のデータは「配送中」から「配送済み」に自動で書き換えられた。
運搬ロボットがそそくさとトラックへ戻ると、トラックは再び走り出した。この後も配達する荷物が沢山あるのだろう。
周りに人の気配がないのを確認すると、ウールは箱から這い出した。胴体の羊毛の上にはフープティの部品が乗っかっている。
『急げ、人がいない今の内だ』
頭だけのフープティが言った。
『ええ』
ウールは小声で返事をすると静かに倉庫を出た。
フープティは移動するウールの上で自分の体を組み立て始めた。
ウールは出来るだけ人気のない道を選んで歩いた。自らを組み立てるロボットとそのロボットを乗せて歩く羊など目立って仕方がない。
『さっきの倉庫はどこの倉庫だったんです?』
『ああ、俺の主人の知り合いの店さ。あそこの店の倉庫に人がいないことも、廃棄場からジャンクパーツを買ってることも知ってたんだ』
『なるほど、けどあなたの主人もロボット工務店をやっているのでは? そこに届けてもらってもよかったんじゃ……』
ウールは疑問を口にした。フープティは少し押し黙って、そのあとゆっくり口を開いた。
『いや、もう店はやってないんだ』
『?……そうなんですか』
『ウール、そこを右に曲がってくれ。俺の目的地はもうすぐそこなんだ』
ウールは言われた通りの道を進んだ。
『よっと、ありがとよ、運んでくれて。もう大丈夫だ』
フープティはウールから降りると自分で歩き始めた。ウールはフープティの後に続いて歩いた。
しばらくすると、少し開けたところに出た。
ここは公園? いや、違う、ここは。
『霊園……?』
『ああ』
フープティは霊園に入っていくと、中を歩き回った。そうして、しばらく歩くと一つの墓碑の前で立ち止まった。
『ここが俺の目的地さ』
フープティはじっと墓碑を見つめた。
『じゃあ、あなたの主人は……』
『ああ、作業中の事故でな。目を離した少しの間のことだったよ。俺は近くいたのに助けられなかった……。だから……そのことをずっと謝りたかったんだ』
『……』
『ウール、俺からの最後の忠告だ。お前は主人から離れちゃダメだ、片時もな。ずっと後悔することになる』
『……はい』
『俺はもうしばらくここにいるよ。なんせ久しぶりの再開だからな。ここでお別れだ』
フープティは前を向いたまま言った。
『ええ、ここまで来れたのはあなたのお陰です。ありがとう』
ウールは彼の背中を見ながら言った。
『そりゃこっちのセリフだぜ。ありがとう、達者でな』
フープティの言葉を聞き終えると、ウールは振り返って歩き始めた。
フープティは振り向いてウールの後ろ姿を見つめた。
『あばよ、相棒』
そう小さく呟くと、また主人の方に向き直ってその場に座り込んだ。
♢♢
ウールはついに一人になった。
ミラの家はもうすぐだ。
再開が近づくにつれて、ウールは少し不安な気持ちになった。
もし自分のことなど忘れて今の生活を送っていたら、自分は邪魔になるのではないか。ミラの両親が心配したように、ミラにとって良くないのではないか。
そう考え始めると止まらなかった。
けど、そのときふとフープティの言葉を思い出した。
『主人を信じなくってどうするんだ!』
彼の顔を思い出すと、自然と勇気が湧いてきた。ウールにとって初めての友人、そして、初めて信頼した仲間……。
考えながら歩き続けていると、見慣れた景色が見えてきた。ミラの家はもうすぐそこだ。
ミラのことを信じよう。
どれだけ苦難があっても、自分はミラのためにできることをしよう。そして彼女をずっとそばで守ろう。
友人の言葉通りに……。
ウールは最後の角を曲がった。
すると、ミラの家の前に懐かしい人影を見つけた。
見間違えるはずもない。
ウールは彼女へゆっくり近づいていった。
すると彼女はこちらに気付いて、ぱぁっと笑った。
そして、彼女が駆け寄ってきた。
ウールも駆け出していた。
たった一人の主人のもとへ。
ICタグで管理された荷物のデータは「配送中」から「配送済み」に自動で書き換えられた。
運搬ロボットがそそくさとトラックへ戻ると、トラックは再び走り出した。この後も配達する荷物が沢山あるのだろう。
周りに人の気配がないのを確認すると、ウールは箱から這い出した。胴体の羊毛の上にはフープティの部品が乗っかっている。
『急げ、人がいない今の内だ』
頭だけのフープティが言った。
『ええ』
ウールは小声で返事をすると静かに倉庫を出た。
フープティは移動するウールの上で自分の体を組み立て始めた。
ウールは出来るだけ人気のない道を選んで歩いた。自らを組み立てるロボットとそのロボットを乗せて歩く羊など目立って仕方がない。
『さっきの倉庫はどこの倉庫だったんです?』
『ああ、俺の主人の知り合いの店さ。あそこの店の倉庫に人がいないことも、廃棄場からジャンクパーツを買ってることも知ってたんだ』
『なるほど、けどあなたの主人もロボット工務店をやっているのでは? そこに届けてもらってもよかったんじゃ……』
ウールは疑問を口にした。フープティは少し押し黙って、そのあとゆっくり口を開いた。
『いや、もう店はやってないんだ』
『?……そうなんですか』
『ウール、そこを右に曲がってくれ。俺の目的地はもうすぐそこなんだ』
ウールは言われた通りの道を進んだ。
『よっと、ありがとよ、運んでくれて。もう大丈夫だ』
フープティはウールから降りると自分で歩き始めた。ウールはフープティの後に続いて歩いた。
しばらくすると、少し開けたところに出た。
ここは公園? いや、違う、ここは。
『霊園……?』
『ああ』
フープティは霊園に入っていくと、中を歩き回った。そうして、しばらく歩くと一つの墓碑の前で立ち止まった。
『ここが俺の目的地さ』
フープティはじっと墓碑を見つめた。
『じゃあ、あなたの主人は……』
『ああ、作業中の事故でな。目を離した少しの間のことだったよ。俺は近くいたのに助けられなかった……。だから……そのことをずっと謝りたかったんだ』
『……』
『ウール、俺からの最後の忠告だ。お前は主人から離れちゃダメだ、片時もな。ずっと後悔することになる』
『……はい』
『俺はもうしばらくここにいるよ。なんせ久しぶりの再開だからな。ここでお別れだ』
フープティは前を向いたまま言った。
『ええ、ここまで来れたのはあなたのお陰です。ありがとう』
ウールは彼の背中を見ながら言った。
『そりゃこっちのセリフだぜ。ありがとう、達者でな』
フープティの言葉を聞き終えると、ウールは振り返って歩き始めた。
フープティは振り向いてウールの後ろ姿を見つめた。
『あばよ、相棒』
そう小さく呟くと、また主人の方に向き直ってその場に座り込んだ。
♢♢
ウールはついに一人になった。
ミラの家はもうすぐだ。
再開が近づくにつれて、ウールは少し不安な気持ちになった。
もし自分のことなど忘れて今の生活を送っていたら、自分は邪魔になるのではないか。ミラの両親が心配したように、ミラにとって良くないのではないか。
そう考え始めると止まらなかった。
けど、そのときふとフープティの言葉を思い出した。
『主人を信じなくってどうするんだ!』
彼の顔を思い出すと、自然と勇気が湧いてきた。ウールにとって初めての友人、そして、初めて信頼した仲間……。
考えながら歩き続けていると、見慣れた景色が見えてきた。ミラの家はもうすぐそこだ。
ミラのことを信じよう。
どれだけ苦難があっても、自分はミラのためにできることをしよう。そして彼女をずっとそばで守ろう。
友人の言葉通りに……。
ウールは最後の角を曲がった。
すると、ミラの家の前に懐かしい人影を見つけた。
見間違えるはずもない。
ウールは彼女へゆっくり近づいていった。
すると彼女はこちらに気付いて、ぱぁっと笑った。
そして、彼女が駆け寄ってきた。
ウールも駆け出していた。
たった一人の主人のもとへ。
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