ぼくたちのついた嘘

チタン

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本当の気持ち

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 ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。

扉を開けるとあなたが立っていた。


「ただいま」

「ええ、おかえりなさい」


 話したいのに上手く話せない。言いたいことはたくさんあるのに。


「少し歩こう」


  ♢♢


 日の沈んだ薄暗い道をあなたと並んで歩いた。
しばらくはどちらも口を開かなかった。

 人のいない田舎道、まだ灯ってない街灯の下で彼は立ち止まった。


「今日は君に謝りにきたんだ」


 こちらを向いて彼が言った。暗くて表情はよく見えなかった。


「ずっと、寂しい思いをさせて、ごめん。……ぼくは勝手に君のことをすごく強い人だと思ってた。けど、君だってふつうの女の子なんだ。そんな当たり前のことを君に言われてやっと気付いたんだ」


 静かな声だった。わたしは何か言いたくて口を開こうとしたけど、とっさに言葉が出てこなかった。
 そんなわたしを見て、彼の口元が少し微笑んだように見えた。彼は言葉を続けた。


「こんなことを言う資格は、ぼくにはもう無いのかもしれないけど、それでも、ぼくの本当の気持ちを君に伝えたいんだ。……ナオ、ぼくは君と一緒にいたい。あのとき言えなかったけど、……君と離れたくないんだ」


「そんな……、わたしが悪かったの。あなたに気持ちを隠して、平気なフリをして。もっと早く、あなたに本当の気持ちを伝えるべきだった」


 わたしはやっと言葉を口に出せた。ずっと言いたくて、でも言えなかった言葉を。
 彼は「ううん」と首を振った。


「もう遅いのかもしれないけど、ぼくを許してくれないか? もう君に寂しい思いはさせないから」


 わたしの目にはいつの間にか涙が溢れていた。声が出なくって、わたしは彼の言葉に頷いた。


 そのときパッと電灯が灯った。
わたしは彼に泣き顔を見られたくなくて、手で顔を覆った。


 けど、やっぱり思い直して、笑顔で涙を浮かべながら、もう一度彼の顔を真っ直ぐ見つめた。
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