俺の召喚スキル、完全にバグってるんだが

FAT殿下

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第四章 無能と王太子とメガネ先輩

第74話 裏切りはメガネの名前を知っている

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 初日の会談を終えてあてがわれた部屋へと戻ってきた俺たちは、トイレ休憩をはさんだ後、今度は内部で話し合うこととした。

「さて………どこから話すか」

 ヴァネッサの表情からは疲れが見て取れた。それも当然のこと、正面からブサ面のニヤニヤフェイスを受け止めていたのだ。トイレで嘔吐してもおかしくない。

「ふむ。では同盟の交換条件についてからだ。1つ目はどう思った?」

 紅魔族領で行方不明の召喚者を保護した場合は所有権を譲渡せよ、だったか。思ったことを素直に答える。

「ピンポイントと言いますか、第一の要求にしてはかなり状況が絞られる内容かと思います。そこから導き出されるのは、紅魔族領は既に行方不明の召喚者を保護している…………と推察ができるかと」

 ヴァネッサの顔色を窺う。すると小さく頷いた。やったぜ。

「私もそう思う。十中八九間違いないだろう。そして行方不明の召喚者はただ一人——————ミタライ・ユウタだ」

 草食メガネか。まさかこんなところで再び会う機会があるとは思わなかった。アズマ・トレノと同様に、重要人物と誤認させて最初の方で死ぬキャラかと思いきや、なかなかどうしてしぶといではないか。個人的には良い印象がゼロなので、生きてようが死んでようがどうでもよかった。

「貴様に伝えたかは忘れたが、以前にウィンター王から情報がもたらされた。ミタライは黒魔族領で一通り暴れた後、紅魔族領へ逃げ込んだと。つまりはその後に、紅魔族の王家に保護されたということだろう」

「私のスキルを確認しなかったのも、既に御手洗の火魔法で召喚者の実力を把握していたからかもしれませんね」

 すべてが繋がる。"行方不明"の召喚者と条件を絞ったことも、召喚者である俺に全く興味を持たなかったことも、全部が草食メガネの存在を示唆していた。

「それで、どうされるおつもりですか。莫大な魔力を費やして召喚した御手洗の所有権を譲りますか?」

「うん。どう思う?」

 また聞かれた。今日は俺の意見に耳を傾けるなぁと思いつつ答える。

「私は、そうですね、同盟を結ぶ対価となるならば譲ってもいいかと思います。そもそも、散々逃げ回った奴を今更仲間に引き入れるのもおかしいですし、同盟相手の戦力になるならば魔族軍全体の質は変わりません」

「そうか。私も同意見だ。1度裏切ったものは何度でも裏切る。たとえそれが不可抗力だとしてもだ。あえて黒魔族領の中で毒を抱えることもあるまい」

 1度裏切ったら、か。不倫や麻薬と同様の枠組みかもしれない。1度でも味を知ってしまったら抜け出せない負のスパイラル。一瞬の利益や快楽を得るために大事な人を不幸にしてしまう人生の汚点。

 ヴァネッサだけは裏切らないようにしよう。彼女に見捨てられたら終わる。

「ただし、トレノ殺害容疑についてはハッキリさせる必要がある」

「そうですね。結局未解決でしたもんね」

 探偵ごっこをしていた頃が懐かしい。思い返すと当時はヴァネッサもかなり冷たかった。初対面で殺すぞって言われたし。

 こんなにも関係が長く続くとは思わなかった。そして出来得るならば、この先も続いてほしいものだ。

「ミタライは紅魔族に預けるとして。第二の要求は、私の貸与だったか。たしか3年ほど。どう思った?」

 きた。本日のメインテーマというべき議題だ。

 ヴァネッサを要求した時の気色が悪いニヤニヤ顔、あれが忘れられない。隣に護衛がいなければぶん殴っているところだった。

 いや殴りはしなかったかもしれないが、一歩前には出ていた。そのくらいはしたはずだ。俺だってやるときはやる。

「率直に申し上げます。同盟は結ばずに帰りましょう。ヴァネッサさんを要求するなど話になりませんよ」

「そう考えるか。私は逆だ。1人……ミタライを含めると2人だが。2人を対価に同盟を結べるなら安いモノだと思う」

「んな」

 なんてことを言い出すんだ。自分よりも国を優先するなんぞ軍人気質が強すぎる。筋肉バカではなく軍人バカかよ。

「待ってください。王太子の真意が分からないとでも言うのですか?」

「そんなことはない。元師団長としての私と、女性としての私を欲しているのだろう」

 分かっているじゃないか。鈍すぎて気づかないと思っていた。

「ならば、王太子に身体を預けるおつもりですか」

「フリはするが、触らせはしない。そもそも同盟の条文に具体的な記載が無ければ従う必要もない。実質的には軍事力のみの提供となる」

「うーん」

 訝し気な視線を向けざるを得ない。

 彼女はああ言ったが、意外とうっかり屋さんなのだ。薬を盛られていつの間にか、という事態も考えられる。

 というか俺が嫌だ。離れたくない。彼女がいなくなったら、実質異世界で一人ぼっちになってしまう。

「王太子は女癖がとても悪いことで有名だ。妾の多さでは魔族随一と聞く。それに以前開かれた式典で直接声をかけられたこともあった。ゆえに何らかの要求をされることは想定済みだ。何も心配することはない」

 そう口にするヴァネッサの表情はいつもと変わらない。本気で問題ないと思っているようだ。

「…………………」

 しかし俺は知っている。こういうクール系美女は得てしてブサ面王太子の毒牙に掛かってしまうのだ。そういうゲームやったことあるし。

 とはいえヴァネッサの意志は固い。説得は骨が折れそうだ。

 ならば。

 こんな時こそ搦手で勝負するしかない。チーム池田を緊急出動させよう。

 合言葉は1つ。

 ヴァネッサの貞操を守れ。
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