アリス倶楽部

いなかぼっこ

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第14話 突然の転機 地元TV出演

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 8月上旬、奈緒達は地元の高知県のテレビ局に来ていた。7月のテスト期間も終わりいざ夏休みと行きたかったが、周りの環境がそれを許してはくれなかったのだ。なぜこうなったかの説明の話は中間テストが終わった7月下旬へと遡る。

 奈緒「テスト終わったね。夏休みはクジラでも釣りに行こうかな」
 まゆみ「クジラ?マッコウクジラですか?是非御供に連れて行ってください」
 友子「そんなわけないでしょ、また奈緒先輩のお得意のジョーズよジョーズ」
 ささもっちゃん「それを言うならジョークです。後、マッコウクジラ釣れないですよってツッコミやらさないで。うぇ~ん」
 沙也香「はいはい。あんた等しっかりして。明日香から話があるってよ」
 明日香「……。」
 奈緒「どうした明日香困り事か?週刊誌に載ったのか?女帝明日香大王イカを喰らうって記事で」
 明日香「はぁ~あんたは。相手にするのもしんどいわ。でも週刊誌は凄く近い話なのよ」
 まゆみ「週刊誌?取材ってことですか?やだどうしよう。もじもじ」
 沙也香「何でも前に撮ったPVの動画が5000万回の再生回数になったとかで、民放各局のテレビ局や週刊誌、新聞社などから取材のオファーが殺到してるって話だよ」
 友子「友子いきなり全国区!」
 明日香「そういう訳にも行かないのよ。それぞれの生活もあるしね。後、大手芸能事務所が複数社お話をしたいそうよ。特に奈緒さんにね」
 奈緒「やっば~い。お腹が出てきちゃったぞ。これは想像妊娠だ急いで帰らなきゃ!」
 明日香「想像だったら別に問題ないでしょ。困っているのよ実際は」
 奈緒「……。まぁそうね。いきなりだもんね」

 その話はPVをアップロードした後から徐々に多くなり始めたのだった。メンバーは嬉しさよりもこの事によって自分の平和な日常が脅かされるのではと危惧していた。特に注目を浴び過ぎている奈緒はアリスの女の子ということもあり影響力が全国区になるのではと冷や冷やしていたが、徐々に自分の運命から逃げれないという事を知り、自分が芸能界に飛び込むことも本気で視野に入れようと考え始めていた。

 奈緒「あのさぁ、明日香。思うんだけど段階的に知られる方がいいと思うの?いきなり全国区でって行って潰れたバンドやアイドルもいるしさ。まずは地方局や地方の情報誌、新聞社からにしない。順を追って行こうよ」
 明日香「そうね。私も今の生活は守りたいし、大きすぎる権力に立ち向かうには力が無さすぎるわね」
 沙也香「何事も地道にってことか」
 ささもっちゃん「ですね」
 友子「あたし、ハリウッドスターに会いたいの~」
 まゆみ「友子、空気読んで」

 こうして話は戻って地方局にやって来た6人はテレビ局のプロデューサーを探していた。何でも今日は夕方の地元のローカル番組に出演するらしい。

 友子「あの人じゃな~い?」
 プロデューサー「やぁ、君たちがピンキーダイナマイトっていうアイドルの子達だね。可愛いなぁ」
 ささもっちゃん「でもほんとにプロデューサーかな?セーターとか羽織ってないけどなぁ~」
 プロデューサー「セーターとか羽織ってる人なんて今いないよ。昔は居たみたいだけどね」
 沙也香「今日は私達をゲストに招いて下さって有難う御座います」
 プロデューサー「いやいや、全国区の放送局を蹴ってこっちに来てくれるなんてなんて君たちは地元思いなんだって思ってね。まぁ立ち話もなんなんで奥へどうぞ」

 笹井というプロデューサーは40歳前後で髭を生やしたやり手に見える男だった。笹井は簡単な自己紹介の後、今日の出演の仕方を教えてくれた。

 笹井「まず、番組が始まったら今日のトピックスを紹介するからね。その時、一瞬ゲストの君達を抜くから笑顔で手を振ってね。その後地元の紹介Vが10分流れて、その後に君たちを呼ぶからね元気でトークしてくれればいいから」

 笹井はそう告げると自分の居場所に帰って行った。

 まゆみ「緊張するよ~。お腹痛いよぉ~」
 友子「まゆみちゃん、大丈夫?笑顔で手を振るんだよ」
 奈緒「所謂台本なんてないからアドリブ合戦だね。まずは地方局のスタッフを爆笑させるぞ」
 ささもっちゃん「おぉぉ!私もやってみます。頑張りますぅ~」
 沙也香「何を聞かれるんだろう?視界がグルグルしてきた」
 明日香「しっかりして。始まるわよ」

 次の瞬間、ADの掛け声で番組は始まった。

 磯部アナ「いや~今日も始まりました。カツオTV。司会の磯部です」
 橋本アナ「同じく司会の橋本です。そして、コメンテーターのこの方」
 カツオ君「カツオ君だよ。よろしくね」
 磯部アナ「いや今日はねぇ、色々あるんですよねぇ」
 橋本アナ「そうですね。フレッシュな方達も来て下さってますし」

 その言葉の後、カメラが一斉に6人を捉えた。6人は満面の笑みで手を振ってそれに答えた。

 カツオ君「可愛いなぁ~べっぴんさんぞろいやな」
 橋本アナ「そうですね。私もあの子たちの時代に帰りたいなぁ~」
 磯部アナ「それは無理ですよ。僕も早くお話を聞きたいですね」

 そうして、番組は始まり、10分ほどが経過した頃だった。ADが6人を迎えにやって来た。

 AD矢内「それでは、ピンキーダイナマイトの皆さん入られま~す。お願いします」
 メンバー「よろしくお願いしま~す」

 磯部アナ「今日はフレッシュなゲストが来て下さってます。紹介しましょう」
 橋本アナ「はい。現役高校生にしてセルフプロデュースでアイドル活動をされているピンキーダイナマイトの6人でぇ~す」
 カツオ君「うぉぉぉぉぉ!!可愛いちや」

 カメラが明日香から端の友子までパーンした後、おもむろにメンバーが喋り始めた。

 メンバー「私達はピンキーダイナマイトで~す。今日は宜しくお願いします」
 磯部アナ「皆さんは現役の高校生という事ですが、私立のT女子高校に通われているんですねぇ」
 橋本アナ「そうなんです。その高校生の皆さんの中の明日香さん。あっ、貴方ですよね?」
 明日香「はい、そうです。明日香で~す」
 橋本アナ「明日香さんが中心となって高校内で結成したのがこのグループ何ですか?」
 明日香「そうですね。私は余り大人に頼らずに自分たちの力でこのグループをやってみたかったんですけど、最近まではよかったんですが、やはり大人の方にも知られ出してしまいまして、それならお世話になっている地元にまずは顔を知ってもらうのが先じゃないかと思いまして、出演させていただきました」
 磯部アナ「そうですか。自力でアイドルを志ざし、まず地元から広めようというのは非常に高知県人にとってはありがたい話です。」
 橋本アナ「そうですね。それにピンキーダイナマイトの皆さんはME TUBEでもPV動画を投稿しており、その再生回数はなんと5000万回にも上るそうですが」
 友子「全部友子がやりました」
 まゆみ「嘘は駄目だよ、友子」
 ささもっちゃん「私はもっとフェチにしたかったですけどね。へへへ」
 奈緒「駄目だよささもっちゃん。フェチじゃなくてHって言わないと……」
 明日香「Hは駄目。分かった?」
 橋本アナ「仲がいいんですね。その勢い若さ眩しいなぁ~」
 カツオ君「でも5000万回といえばこの国の3人に1人は見ている訳で、特にね調べましたら奈緒さんの事がよく書かれてあったんですよ。奈緒ちゃん、君はなんか人を引き付けるよね。なんか楽しいエピソードなんかあるぅ~」
 奈緒「カツオ君、貴方は鋭い観察眼をお持ちですね。とっても偉いですよぉ~。そうですねエピソードと言えばキハダマグロを1人で釣りに行った時の事とかですかね」
 磯部アナ「キハダマグロを1人で釣ったんですか?何故またどうやってですか?」
 奈緒「そもそもは漁港でお手伝いをしていた時に急にマグロが死ぬほど食べたくなってですねぇ、でもお金もないとなった時に聞いたんですよ。マグロ死ぬほど食べたいけど漁港に上がるかと。そしたら、漁港の漁師のおじさんが言うにはキハダマグロが上がるよとの事だったんでじゃあ自力で釣ってみようと思いまして漁船に乗せて貰ったんです」
 橋本アナ「それは凄いですねぇ。皆さんは知ってましたか?」
 5人「いや、初めて聞きました」
 カツオ君「どうでした、マグロは釣れましたか」
 奈緒「そうですね。釣り方を教わったので50匹ほど釣り上げました。イーアールサーンという感じですね。50匹はお寿司にして頂きました。御馳走さんです」
 橋本アナ「そんなに食べたんですか。凄~い」
 カツオ君「それにそんなんで釣れるの?イーアールサーン言うて釣るの?ホント?」
 奈緒「疑っているなぁ~磯部アナ逮捕してください。海上保安庁呼んでください」
 磯部アナ「そうですね」
 カツオ君「何で捕まるのよ」
 明日香「奈緒さん失礼でしょ」
 まゆみ「ふふ」
 友子「友子マグロの大トロ食べたい」
 沙也香「凄い話だなぁ~」
 ささもっちゃん「ささもっちゃんDHC好き」

 こうしてメンバーはトークをした後、控室に帰ってきた。

 明日香「なんなのよ奈緒さんのあのふざけたトークは?」
 奈緒「真面目だなぁ~明日香は」
 沙也香「私ちょっとしか喋れなかったよ。緊張した」
 友子「帰りお寿司屋さん行きません?、奈緒先輩抜きで」
 奈緒「人をわさび扱いすんな、グリグリ」
 友子「ゴメンなさ~い。だって奈緒先輩ばかり振られるからいいなと思って」
 まゆみ「しょうがないよ。私達地味だもん」
 ささもっちゃん「もっとトーク力を磨かなければ」

 そこにプロデューサーの笹井がやって来た。泣きながら喜んで、メンバー達を称賛していたのだった。この出来事がきっかけとなり、他にも来ていた地元雑誌や新聞社の取材も受けることになった。徐々にメンバー達は大きな時代の流れに飲み込まれようとしていた。


































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