【完結】旦那さまは、へたれん坊。

百崎千鶴

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 じっと、じーっと、あっくんを眺める。

 黒くてサラサラの髪の毛。
 ちょっと、白い肌。
 少し垂れた目尻に、綺麗な黒い瞳。
 座っていても、高い背。


(私がちっちゃいだけかな?)


 私は155センチで、あっくんは175センチ。
 20センチの差はけっこう大きい。……私の身長は小さいけど。


(なんちゃって) 


 小さく笑って、あっくんの観察続行。

 太すぎず細すぎず、ほどよく筋肉のついた腕。
 綺麗で長くて、でもところどころ切り傷のある指。
 最近幸せ太りしてきたってなげいてた、お腹。
 くすぐるとすぐにひっくり返っちゃう足。

 全部全部、大好き。


(大好き) 


 大好きオーラを全開にして、あっくんの目をじっと見つめた。


「…………みーちゃん、」
「なあに?」


 テレビゲームに悪戦苦闘して、液晶画面に釘付けになっていたあっくん。が、耐えきれなくなったみたいな声を出す。 


「あんまり、じっと見られると……やりづらいよ……」
「なによ。私に見られるのが嫌って言うの?」


 わざとらしく、何かのドラマを真似て芝居がかった口調で言ってみた。
 途端に、あっくんはおろおろし始める。


「違うよ! 嫌じゃない!」
「じゃあなんなのよー」


 あぐらを組んでいたあっくんの足の上に座り、首に腕を回して挑発的な笑みを向けた。 

 真っ赤になるあっくんの顔と、ざばざば泳ぐ目線。


「……は、恥ずかしい……」


 私の背後で、ゲームオーバーを知らせる残念な音が聞こえた。
 ごめんね? そっちはわざとじゃないよ?


(照れるあっくんも、可愛い)


 思わず、にまにま。 


「みーちゃんの意地悪……」


 もうすぐクリアできたのに……と、あっくんはしょげてしまう。


「うん、意地悪だよ。嫌いになった?」
「そんなわけない!」


 あっくんならそう言うと思った。
 真剣な顔で強く否定した彼が愛しい。


「うん、知ってるよ」


 すり、と胸に顔を押しつけた。 


「でも、ゲームばっかりしないで」
「あ、ご、ごめん……」
「私のことも見て」


 コントローラーを置き、私を抱きしめて「ごめんね?」と、あっくん。

 私も、ごめんね。
 そう呟けば、あっくんは小さく笑って「みーちゃん、向日葵ひまわりみたい」と言った。


「俺も、みーちゃんの向日葵になりたいな」
「……ばか」
「えっ?! ご、ごめんね?」


 向日葵の花言葉――……あなただけを見つめる、あなたは素晴らしい、あなたを幸せにします。
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