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二章 エルフの森

6話

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いた!

少女が狼に襲われている。

間に合わない!
とっさに脇差を狼へ投擲する。

「ギャウッ」

死角からの投擲は喉仏へと食い込み、狼は倒れ苦しそうにのたうち回っている。

「あぁぁっ」

少女は目の前で起きたことが理解できないのか怯えている。

「怪我はないか」

少女に駆け寄り、無事を確認する。



「ガウー!!」
背後の声に振り返ると狼が、うめき声を上げながら臨戦態勢に入っている。
今にも襲ってきそうだ。


脇差は倒れた狼に刺さったまま。相対する狼との中間にある。少女を置いて取りに行くのは危険だ。

水筒の栓を引き抜き、狼へと投げる。
そして、敵への命中を確認する前に少女を抱え、先程いた小川へと走り出す。

「キャウ!」
背後で小さく吠える声が聞こえる。
少しでも時間稼ぎになるといいが。

小川を突っ切り、向こう岸に少女を置いて、川の中程へと戻る。

「そこを決して動いていけない」
後ろ向きで少女に声をかけるが反応はない。

間もなくして、狼が藪から姿を見せた。

俺は右手を目の前に突き出し、狼を待ち構える。

狼はジワジワと数歩近づいたあと、走り出し、俺をめがけ、牙をあわらにし襲いかかってきた。

俺は狼の口へと手を突っ込み下を掴む。そして、そのまま狼の頭を水の中へ差し込んだ。

「バウッ、バウゥ」

狼は苦しそうに声を上げ、足をバタバタさせようと必死だ。

悪いが離せない。

完全に狼の動きが止まるまで、俺は手を緩めなかった。

狼に耳を当て、心音で絶命を確認したあと、俺は少女の元へ向かった。

「もう心配ない」

「ああぁっ」

まだ少し混乱しているようだ。

だか、落ち着いてはいられない。
他の獣が近づいてくる可能性も高い。
ここを離れなくては。

少女を抱えあげて、道へ戻るために川へと入る

「きゃっ!」

「何もしない、ここを離れるだけだ」

申し訳ないが説明する暇はない。

ザッ

小さな物音が前方から聞こえた。

グサッ

それと同時に右肩に矢が刺さった。




一瞬よろけたが、なんとか踏みとどまり、右側を振り返る。
藪の後ろに身を隠した2~3人の男を確認する。

少女を抱え込むようにして体で盾を作り、大声を放つ。

「山賊か!!」

右肩がかなり痛む。明らかな劣勢だが、それを悟られるわけには行かない。

「その娘を離せ」

男の一人が姿をあらわす。
弓を引いた状態で、標準は俺の首元をしっかり捉えている。強い殺気を感じる。

「お兄ちゃん!!」
男を見て、少女が叫ぶ。
良かった。身内だ。

「その娘を離せ」
男は殺気を緩めない。

「離せば、水流に流される。そちら側に行くからしばし待ってくれ」

男からの応答はない。

再び歩き始めた。



グサッ

男の放った矢が右ひざに命中した

想定してなかった攻撃に倒れ込む。
少女を手放してしまった。

水に体が浸かると予想以上に流れが早いことがわかる。
。目の前にあった少女の手をとっさに掴み、四つん這いの態勢で必死に水流に抗う。

しかし、力が入らない。痺れ薬でも塗られたのだろうか。意識も朦朧とする。

バシャバシャと男たちが近づく音が聞こえる。

薄れゆく意識の中で、男が少女を抱えあげるのを確認し、俺は力尽きた。
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