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二章 エルフの森
8話
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ガンッ
予想してなかったのだろう。
アルクの体は後ろに流され、壁に叩きつけられた。
ズキン
殴った反動で痛むが、怒りがそれを飛び越えている。
「何故射った?」
威圧的な声で俺はアルクに訪ねた。
アルクは尻餅をついたまま起き上がらずに答える。
「ルーを守るためだった」
「2射目もか?」
「あぁ。冷静な判断ではなかった。でもあのときはルーを守ろうと必死だった」
「死んでたぞ?」
俺はアルクを真っ直ぐに見つめて言葉を続ける。
「俺があの時手を話せば、ルーは死んでた。ヒューマンだろうとエルフだろうと子供が川の水流に巻き込まれれば流されるし、溺れる。水を飲み、息ができなくなれば苦しんで死ぬ。」
「違うか!?」
アルクは何も答えない。
「2射目は俺を傷つけるもためのものだった。ルーを守る矢ではなかった。お前はルーを危険に晒した」
アルクの握りこぶしが震えている。
「怒りの感情は力を生む。しかし、時に大切な人を傷つけることもある。当たり前のことだが、忘れるな。死は覆らない」
「わかった。その言葉忘れない」
アルクはすっきりとした表情で誓った。
「子供は宝だろ?」
「宝より大事だ」
アルクがそう言うと、俺とアリアは笑みを浮かべた。
はははっ
本当にその通りだ。
「仲直りは済んだかい?」
アリアが俺に尋ねる。
「あぁ、済んだよ。いきなり、殴ってすまなかった」
俺は2人に謝罪する。
「拳が言葉以上の意味を持つこともある。時には必要だ。そうだろ?」
アルクは立ち上がって頷く。
「さて、もう少し寝るといい。あと3時間もすれば、飯の時間だ。傷も完全に塞がるはず。歓迎と謝罪を兼ねて今日は宴としたい。酒は飲めるかい?」
「あぁ、大好きだ」
それを聞いたアリアはニカッと笑う。
美人だが、中性的な顔立ちをしたアリアは広角をしっかりと上げた笑みがとても似合う。
「酒を沢山用意しよう。幸い、食料よりも豊富だ。遠慮しなくていい」
「ありがたい。お言葉に甘えよう。出来れば、狼の肉も使ってくれ。みんなで食おう」
「狼はあんたが仕留めた獲物だ。良いのかい?」
「あぁ、敵対したとは言え、この世でともに生きた命だ。無駄にはしたくない。俺がいた世界では狼の肉は余さず食べた」
「エルフは内臓も脳も食べる。骨は薬や武具になる。皮は衣服や建築材に使う」
「すばらしい。使ってやってくれ」
「ありがたくいただこう。それと、名は何という?」
「武摂だ」
「たけせつか。いい名前だが珍しいね」
「呼びづらいか?」
「若干ね」
「じゃあ、セツでいい」
「いいのかい?大切な名だろう?」
「あぁ、大事な名だ。だが、幼い頃はそう呼ばれていた。好きな響きだ」
「わかった。セツ。お前はこの集落の大事な客人だ。いつまででもいてくれて良い。ようこそ、新たな世界へ」
武摂は主の武昌様から頂いた名だ。実の親である業正からもらった名は業摂。放火による火事で失った二人の兄の名にも業の文字があった。俺はセツと呼ばれて育った。
武摂にとって家族を示すものだった。
ただ、それは家族に返した。家族を忘れたかったわけではない。一人だけのうのうと生きた自分にその名を名乗る資格があると思えなかった。
武昌様はその想いを汲んでくれた。
元服までは武昌様にもセツと呼ばれて育った。
元服の時に、武昌様から一字を頂き、正式に武摂となった。
その武昌ももういない。
俺は武士ではなくなった。
武の字も返そう。
セツとして新たな世界を生きよう。
予想してなかったのだろう。
アルクの体は後ろに流され、壁に叩きつけられた。
ズキン
殴った反動で痛むが、怒りがそれを飛び越えている。
「何故射った?」
威圧的な声で俺はアルクに訪ねた。
アルクは尻餅をついたまま起き上がらずに答える。
「ルーを守るためだった」
「2射目もか?」
「あぁ。冷静な判断ではなかった。でもあのときはルーを守ろうと必死だった」
「死んでたぞ?」
俺はアルクを真っ直ぐに見つめて言葉を続ける。
「俺があの時手を話せば、ルーは死んでた。ヒューマンだろうとエルフだろうと子供が川の水流に巻き込まれれば流されるし、溺れる。水を飲み、息ができなくなれば苦しんで死ぬ。」
「違うか!?」
アルクは何も答えない。
「2射目は俺を傷つけるもためのものだった。ルーを守る矢ではなかった。お前はルーを危険に晒した」
アルクの握りこぶしが震えている。
「怒りの感情は力を生む。しかし、時に大切な人を傷つけることもある。当たり前のことだが、忘れるな。死は覆らない」
「わかった。その言葉忘れない」
アルクはすっきりとした表情で誓った。
「子供は宝だろ?」
「宝より大事だ」
アルクがそう言うと、俺とアリアは笑みを浮かべた。
はははっ
本当にその通りだ。
「仲直りは済んだかい?」
アリアが俺に尋ねる。
「あぁ、済んだよ。いきなり、殴ってすまなかった」
俺は2人に謝罪する。
「拳が言葉以上の意味を持つこともある。時には必要だ。そうだろ?」
アルクは立ち上がって頷く。
「さて、もう少し寝るといい。あと3時間もすれば、飯の時間だ。傷も完全に塞がるはず。歓迎と謝罪を兼ねて今日は宴としたい。酒は飲めるかい?」
「あぁ、大好きだ」
それを聞いたアリアはニカッと笑う。
美人だが、中性的な顔立ちをしたアリアは広角をしっかりと上げた笑みがとても似合う。
「酒を沢山用意しよう。幸い、食料よりも豊富だ。遠慮しなくていい」
「ありがたい。お言葉に甘えよう。出来れば、狼の肉も使ってくれ。みんなで食おう」
「狼はあんたが仕留めた獲物だ。良いのかい?」
「あぁ、敵対したとは言え、この世でともに生きた命だ。無駄にはしたくない。俺がいた世界では狼の肉は余さず食べた」
「エルフは内臓も脳も食べる。骨は薬や武具になる。皮は衣服や建築材に使う」
「すばらしい。使ってやってくれ」
「ありがたくいただこう。それと、名は何という?」
「武摂だ」
「たけせつか。いい名前だが珍しいね」
「呼びづらいか?」
「若干ね」
「じゃあ、セツでいい」
「いいのかい?大切な名だろう?」
「あぁ、大事な名だ。だが、幼い頃はそう呼ばれていた。好きな響きだ」
「わかった。セツ。お前はこの集落の大事な客人だ。いつまででもいてくれて良い。ようこそ、新たな世界へ」
武摂は主の武昌様から頂いた名だ。実の親である業正からもらった名は業摂。放火による火事で失った二人の兄の名にも業の文字があった。俺はセツと呼ばれて育った。
武摂にとって家族を示すものだった。
ただ、それは家族に返した。家族を忘れたかったわけではない。一人だけのうのうと生きた自分にその名を名乗る資格があると思えなかった。
武昌様はその想いを汲んでくれた。
元服までは武昌様にもセツと呼ばれて育った。
元服の時に、武昌様から一字を頂き、正式に武摂となった。
その武昌ももういない。
俺は武士ではなくなった。
武の字も返そう。
セツとして新たな世界を生きよう。
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