婚約・婚姻関連の短編集

神谷 絵馬

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妹の方が良いと婚約を破棄されました。え、本当に?!

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「機密に抵触しないように気を付ければ、父や使用人である貴女達が私に説明することも出来ましたし、母がお手紙を送ることも出来ましたわよね?
お手紙に関しましては検閲がありますけれど、機密について書かなければ送っても大丈夫なのでしょう?
自分は生きているから心配ないと、離れていても娘のことを忘れてはいないのだと、そういうことを知らせる努力すらしなかったのに...お仕事を終えて母が帰ってきたから、直ぐに10年前に戻れるようにしろというのは難しいわ。
5歳からの10年という月日を、甘く見ないでくださいませ。」

母が生きているのだと知っていれば、お仕事で仕方なく離れているのだと説明されていれば、このような複雑な想いを抱くことはありませんでしたわ。

「私は、お母様はもう亡くなられているのだと、もう会うことは二度と出来ないのだと、葬儀に参加させてもらえなかったことも含めて、お母様に関することは全て諦めてきましたの。
お母様の形見も私は持っていないしお墓の場所も教えてもらえていないけれど、きっと私は父に愛されていないのだから仕方ないのだろうと、そう諦めたのよ!
それなのに、突然母が生きていたのだと知って、お仕事を終えて帰ってきたと言われても、直ぐに前のようには戻れないわ。」

「歩み寄ろうとしない限り、このままですから!
つまらない意地を張らずに、歩み寄ろうと努力してください!」

「ハァー、もういいわ。
貴女はクビよ...主人の言葉に従えないのだもの、紹介状もいらないわね。
早く荷物を纏めて、今日中に出て行ってちょうだい。」

「な、何を言っているのですか?!」

「聞こえなかったの?
貴女はクビだと言ったのよ。
文句を言う暇があるのなら、直ぐに出て行く準備をしなさい。」

「そんな横暴、通る訳がありません!!」

「あら、お忘れなのかもしれませんけれど、私が10歳になってから、女主人のいなかったこの家の家政を回してきたのは私です。
まだ母に引き継いではおりませんので、使用人の人事権も私にありますのよ。」

「え、そ、そんな!」

あら、私が10歳になってからは、私の采配で回してきたでしょう?
貴女は、その頃にはもういたわよね?
このことを、知らなかったとは言わせないわ。

「母が帰ってきたとは言え、この家から10年も離れていたというのに...女主人としての権限が、直ぐに母に戻る訳がありませんでしょう?」

当たり前の事を説明させないでほしいわ。
私は説明不足だと言われたくありませんので、きちんと説明させていただきますけれど。

「妊娠・出産もございましたので、まだ引き継ぎは終えておりませんのよ?
ですから、まだ私が采配しておりますの。」

「......」

「あぁ、クビになったからと我が家のことを口外いたしましたら、それ相応の処置を取らせていただきますので、ご注意なさいませね?」

「...はぃ。」

やっと理解なされたようね...良かったわ。
使用人が、主に対して苦言を呈することが悪い訳ではないけれど、私のことを聞き分けのない小娘のように言われるのは納得いきませんわ。
母のお茶のお誘いを全て断っている訳では無いのに、どうして文句を言われなければならないの?
前々から決まっている予定があるのに、突然誘ってきた母を優先させろとでも?
そのようなことをすれば、約束の守れないご令嬢というレッテルを貼られてしまいますわ。

そもそも、使用人に、
『歩み寄ろうと努力しろ!』
などと言われる筋合いもございませんわよね。
はぁー、勘違いしないでいただきたいわ。
私は歩み寄ろうとしていないのではなく、直ぐに打ち解けることが出来ていないだけよ。
もう亡くなられていると諦めていたのだもの、戸惑うのは当たり前のことでしょう?
父にも、嫌われているのだと思っておりましたのよ?
直ぐに元の関係に戻ることは無理なのだと、父にも母にも諦めてほしいわ。

「では、ユリシス様のお茶会に行ってまいりますわ。」

「はい、お気を付けて...。」

ハァー、今日も母について根掘り葉掘り聞かれるのでしょうね...気が重いわ。
偉大な魔女である母と繋がろうとして、娘である私に群がられるのは面倒くさいだけですわ。
出産からまだ僅かしか経っておりませんから、母をお茶会に招待することが出来ませんものね...それは理解しておりますのよ?
けれど、皆様は私自身には興味がないのですもの...母や産まれたばかりの妹のことばかり聞かれて、辟易してしまいますわ。

あら?もしかして、父と母との間に産まれたのが妹だけだと思われているのかしら?
先程、元婚約者の方も仰っていたわよね?
『君の妹君は、かの有名な魔女マグナレーダ殿の娘だろう?
君は前妻の子、我が家に利益をもたらすのは妹君の方だ。』
と。
ウフフ、そう考えると少し愉快になってきたわ。
今日のお茶会で、私の母も妹の母も同じ人...マグナレーダなのですよと、お話してみましょう。
あら?皆様の勘違いは私のせいかしら?
私の母はきっと亡くなられたのだと、母のことを聞かれるたびに言っておりましたものね...あ、いいえ、私がそう言ったとしても、父の妻が魔女であるマグナレーダだということは皆様ご存知の筈よね?
知っていて訂正なさらなかったのは皆様の方...私にも責が少しはございますけれど、私だけの責任ではないということですわね。
憂鬱でしかなかったけれど、楽しみが増えましたわ。





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