女竜騎士が暴れます?

神谷 絵馬

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本編

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母竜の埋葬が終わって、シリウスが過ごしやすいようにと整えておりましたら、シリウスの慌てた声がして、スポンっと子竜達が孵りましたの。
どうしてスポンっという音がしたのかは疑問だけれど、無事にピャウピャウと鳴いているし大丈夫よね。
あら、この子達は片手に乗る大きさで可愛らしいわね。
孵ったばかりのシリウスはもう少し大きかったわ。

「シリウス、この子達のことはどうしたら良いのかしらね?」

〈ギュルルルル!〉
-うーん、分かんない。-

「そうよね...竜騎士団長に相談してみるわ。」

卵から無事に孵ったのは良いものの、子竜達のことをどうするのかを考えてませんでしたわ。
孵って直ぐに見た私のことを親だと思っているみたいで、少しでも離れようとすると爪を立てて抵抗されるのよね...温めて孵したシリウスのことを親だと思ってくれると考えていたから、今の状況はかなり問題よね。
まだ私が片手でも抱ける程に小さいから部屋に入れても問題ないけれど、半年程経てば人が乗れる大きさになってしまうわ。
竜舎は、まだ建て始めてすらいないらしいし...そもそも、建てる予定の土地すら教えてもらえていないのよね...敷地の大きさを知りたいのだけれど、まだ分からないのよ。
...まさかだけれど、私の騎竜であるシリウスを、ずっとその辺の洞窟で寝起きさせるつもりなのかしら?
そう言えば、こちらからお伝えしていた筈の食事の用意も満足にしてくださっておりませんでしたわ。
竜騎士団は国王陛下肝いりの部隊ですのに、騎竜の扱いが悪すぎるわよね?

「こんなに早く孵るとは思ってなかったのよね...あ、あの阿呆に契約の説明からした方が良いかしら?」

面倒なことは早めに片付けた方が良いわよね?
ハァー、お父上がお一人で説明してくださってもよろしいのに、どうして私の同席が必要なのかしら?
あぁ、私が説明すると言ってしまったのだったわ...自分でしたこととは言え、面倒くさいわね。

「取り敢えず、あの阿呆旦那になった人に契約内容の説明に行ってくるわ。
シリウス、この子達の面倒を暫くお願い出来るかしら?
そうだわ!貴方の竜舎のこともその時に聞いてくるわね。」

〈ギャゥルル!〉
-うん、分かった!-

子竜達はシリウスを兄弟だと思っているのか、ピャウピャウと鳴きながら戯れ付く様子が可愛らしいわ。 

「子竜達?私は少し離れるけれど、ご飯を探してくるからシリウスと待っていてね?
安心して?ちゃんと戻ってくるわ。」

〈〈ピュギャ?ピャウー!〉〉

〈ギャゥ!ギュルルルル!〉
-大丈夫、この子達のことは僕に任せてよ!-

「えぇ、お願いね。
じゃ、早く帰って来られるように急いで行ってくるわ!
果物があると良いのだけれど、あるかしらね?」

説明に行く前に、厨房に行って果物を分けて貰えるか確認してみましょう。
無理なら街まで買いに行かなければならないわね...この際、あの阿呆への説明は後でも構わないわよね?
この国では竜を保護することは誉れとなるのですもの...子竜達の方を優先すべきよね!





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