思い付き短編集

神谷 絵馬

文字の大きさ
上 下
22 / 123
本編書いてる

明らかに、可笑しい。2

しおりを挟む
怒れる仕立て屋達の手によって、継ぎはぎだらけのボロいワンピースは全て一掃されました。
これ程にボロい布では雑巾にすらならないと、とっとと焼き捨てるようにと優しい執事に渡したのです。
そして、伯爵家の娘に相応しい程度に質の良い布地を使ったワンピースが、10着揃えられました。
これからきっと直ぐに成長するので、多少であれば大きくても構わないのに...私の採寸を隅から隅までキッチリとしてから、女性3人の手が凄い早さでどんどんと仕上げていくので、なんだか怖かったです。
今は、3人でレースはどうするだとかスカートは何段重ねるだとか...和気藹々とお喋りをしながら、明日のお茶会用の少し豪華なワンピースを制作し始めてます。
男性はデザイナーだったらしく、自分が描いた基本のデザインを3人のお喋りに合わせて幾通りかのデザインに描き直してます。
女性3人は、それを見てからまたあーでもないこーでもないと、手を動かしながらも議論してます。

あ、そうそう、バトルジャンキーラビットの名前は、さっき聞いた優しい執事の名前に似たものにしようと思います。
優しい執事は、名乗るのを忘れる程には私の扱われ方に衝撃を受けていたようで、私が仕立て屋におののいて優しい執事のことを優しい執事と呼んだことから、名乗っていないことを思い出したらしいです。
以外とうっかりさんな優しい執事はバルト・ロメールというのだそうで、敬称は付けずにバルトと呼ぶようにと半ば脅し?を受けました。
目が、笑ってませんでした...。

バルト曰くオスらしいウサギの名前の参考にしようと決めたのです。
うーん、アルト?ウサギ...ウルト?あ、嫌なのね?
分かったから、バルトをケリケリしないの。
あまりにも安易過ぎるのは嫌なんでしょ?
うー......あ!ロジャーは?
うんうん、バルトにケリケリしなくなったし、ロジャーという名前を気に入ってくれたみたいです。

『お嬢様、そちらのバトルジャンキーラビットがお茶会に参加するためには、こちらの首輪から選んで首に着けてくださいませね?
あら、ロジャーと名付けましたの?
とても格好よい名前ですわね。』

ロジャーとバルトと戯れていたら、高速に手を動かし続けていた3人の内の1人が、ふと思い出したように幾つかの、可愛らしいものや厳ついものまで...多種多様な首輪を持ってきてくれました。
名前を誉められたロジャーは嬉しかったらしく、キュウキュウ言いながらもっふりのお手々でお姉さんの頬を一度だけ撫でました。
撫でられたお姉さんは嬉しそうにロジャーにお礼を言って、首輪を置いて作業に戻っていきました。

うーん、悩むなぁー...。
オスらしいし、可愛いものは嫌だろうからなぁ...これらは候補から外して、うーん、難しい。
ん?ロジャーは、それが良いの?
渋めの鶯色で材質は革っぽいけど、装飾は可愛らしいリボンだよ?
あー、さっきお姉さん達が、私のボロいワンピースを全て焼き捨てるようにと言っちゃったので、私の採寸中から直ぐに着れるようにと1着のワンピースを急ぎで作ってくれたのです。
そして、採寸が終わって直ぐに私はそのワンピースを着せてもらったのです。
その服と同じような色で装飾も同じリボンだから、これが良いのね?
まぁ、ロジャーが気に入ったのならこれにしよっか!

『おぉ、実に可愛らしいな...うーむ、ロジャー君、君の主にも同じブレスレットを作るよ。
主従で同じものを付けるなんて、きっと可愛いに違いないからね。』

私ではロジャーの首に届かないので、バルトが代わりに首輪を着けてくれました。
どこにも継ぎ目が無いので、頭から被せようとしたバルトが首輪を首に近付けたら、勝手に大きさが変わっていつの間にか装着されてるなんて驚きです。
ロジャーも、驚いて首輪を見つめながら恐々触ってました。
首輪を着けたロジャーを眺めていたおじさんが、懐から同じ革を出してきて加工し始めました。
ロジャーの首輪とお揃いのものを作ってくれるらしくって、とっても嬉しいから何も言いません。
勿論、お礼はちゃんと言いますよ?





*
しおりを挟む

処理中です...