昔話 みんなが主役!

菅田刈乃

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もしも「桃太郎」だったら

もしも黄くんが「桃太郎」だったら

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「まさか僕一人で鬼退治に行けと?」

 黄太郎きたろうは驚愕しました。ただでさえ孤独に耐えられない性格なのに、たった一人で鬼を倒しに行ってこいと育ての親は言うのです。

「家を出る時は一人かもしれない。だが道中仲間を見つければ良いではないか」

 海賊王じゃあるまいし、無理だと言うと、

「大丈夫。お前ならできる。子供の頃からお前には自然と人が集まってきたではないか。それに負けずぎら‥‥努力家で、出来ないことなど無かったではないか」

「そ‥‥そうかな?」

 黄太郎はおじいさんに褒められて満更でもなさそうです。

 さらにおじいさんはもうひと押しました。

「村のみんなが黄太郎にと刀や鎧を揃えてくれたんじゃよ」

 立派な新品の鎧を目の前に置かれ、黄太郎は断れなくなってしまいました。

 翌朝、黄太郎はおじいさんおばあさんや村民に見送られ出発しました。

「やっぱり不安だなぁ。だって病気になったらどうしよう。誰も看病してくれる人がいないし‥‥」

 しばらく歩くと犬猿雉が行き倒れていました。

「大変だ!どうしたの?」

「腹が減って動けないんです」

 黄太郎は慌てふためきました。

「ど、どうすればいい?何が食べたい?」

 鼻をひくひくさせながら、犬がこう言いました。

「さっきからきび団子の匂いがする。きび団子食べたい」

 黄太郎はおばあさんに渡されたきび団子を思い出しました。

「あ、これ?よければどうぞ」

 きび団子を差し出すと、犬猿雉は一心不乱に食べ始めました。

 黄太郎はいいことをしたなぁと思いました。

「立派な鎧ですね。戦でもあるのですか」

 雉が尋ねました。

「いや、鬼ヶ島へ鬼退治に行くんだ」

「ええっ?まさかお一人で?」

 三匹とも大層驚きました。

「一人でなんて無理ですよ。僕らにお供させてください」

 三匹とも申し出ました。

 しかし黄太郎は悩みました。

「実はね、僕、鬼と戦いたくないんだ」

 突然、世界平和を唱え始めました。

「鬼にも何かしら事情があって悪さをしてるんだと思う。だから理由を聞いて今後鬼が悪さをしなくてすむように、話し合いをしたいんだ。」

 犬猿雉は(こいつの名前タンジロウか?)と思いました。

「そして鬼に合う仕事を与えれば、村民と問題を起こさず生活できると思うんだ」

 ハローワーク誕生の瞬間でした。
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