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超草食系男子
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それは何日目の朝であっただろうか。その日から数えると、ちょうど一年と三日になるだろうか。僕は今でもうだつの上がらない人生を送っていた。朝は良くも悪くもない目覚めを朝食とともに流し込み、学校へ向かう。家から数えて二つ目の下り坂に差し掛かると、周りの景色は蒼色から灰色へと移り変わってゆく。そこから十五分ほどペダルを踏むと、中途半端なコンクリートジャングルの中にポツンと立ち尽くす桜が見えてくる。その根本では将来を大いに語らう若者達がいるわけもなく、ただ、たんぽぽにも満たない雑草が桜を慕うように生えているだけである。下足を下駄箱にしまい、期待と憂鬱を孕んだ一日がまた始まった。
教室に入るといつも通り彼女はいた。ここにくるまでに体から発せられた汗をタオルで拭っていた時、彼女が話しかけてきた。
「御早う。」
「あっ、おはよう。」
会話はそれっきりだった。軽い社交辞令だったのだろう。彼女は前を向き直すと再び本を読み始めた。別に仲良しでもなければ、仲が悪いわけでもないそんな二人のコミュニケーションといえばこんな何気ないあいさつにとどまるだろうし、彼女からしたらコミュニケーションですらないのかもしれなかった。ともかく、彼女にとってではなくとも僕にとっては必要なワンシーンであり、貴重な瞬間だった。今日こそはと意気込んではいた。しかし、その一歩は重かった。そんな一瞬を僕と彼女はかれこれ一年と三日も続けている。
教室に入るといつも通り彼女はいた。ここにくるまでに体から発せられた汗をタオルで拭っていた時、彼女が話しかけてきた。
「御早う。」
「あっ、おはよう。」
会話はそれっきりだった。軽い社交辞令だったのだろう。彼女は前を向き直すと再び本を読み始めた。別に仲良しでもなければ、仲が悪いわけでもないそんな二人のコミュニケーションといえばこんな何気ないあいさつにとどまるだろうし、彼女からしたらコミュニケーションですらないのかもしれなかった。ともかく、彼女にとってではなくとも僕にとっては必要なワンシーンであり、貴重な瞬間だった。今日こそはと意気込んではいた。しかし、その一歩は重かった。そんな一瞬を僕と彼女はかれこれ一年と三日も続けている。
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