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エピローグ
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クリスから衝撃の言葉を聞いた後、エマはよろよろと立ち上がると、洋服を着てクリスの家を出た。
無表情がデフォルトだと言われるエマでも、暗い道を一人のろのろと歩きながら少しばかり泣いた。
どうしてクリスは、初めから童貞じゃないと教えてくれなかったのか。
おかげですごく無駄な日々をすごしてしまった。
可愛い後輩だと思っていたのに、もしかして嫌われていたのかもしれない。
でもクリスはエマのことを可愛いと言っていた。
答えの出ない問題を、グスグスと鼻をすすりながら一人考える。
そうしてあと少しで自宅に到着するというとき、そういえば初めに研究の協力を頼んだときに、童貞じゃないときちんとクリスは言っていたなと、エマは思い出した。
一度こうだと思ったら、それしか見えない。視野が狭くなる。エマの悪いところだった。
家に帰りお風呂に入って、身になじんだ自分のベッドに潜る。そうして落ち着いてくると、エマは自分のしたことを後悔するようになった。
魔術を使用した覗きに、欲しくもない物品を無理やり押し付ける。さらに断っているのに何度も研究の協力を頼み、果ては6歳も年上の地味な女に奉仕させた。
きっと、クリスは相当嫌だったのだろう。
本当に申し訳ないことをしてしまった。
もしかしたらクリスは、経験済みなのに私にしつこく頼まれ困って、諦めてもらうためにあんなことをしたのかもしれない。
それならすべてのことに説明がつく。
明日、きちんとクリスに謝ろう。
エマはベッドの中で目を瞑りながら、心に誓った。
◇◆◇◆◇◆
翌日、エマが出勤すると、クリスの方からエマに会いにきた。
「エマ先輩。昨日はすみませんでした。」
金色のふわふわした髪から覗くつむじを見ながら、エマは口を開いた。
「クリスが誤る必要はないわ。私こそ、迷惑をかけてごめんなさい。」
いや、むしろ、エマの方こそ謝らなければならない。
エマもクリスに向かって、深々と頭を下げる。
「研究のためとはいえ、クリスに随分とひどいことをしていたと思うわ。本当にごめんなさい。」
「そんな。謝らないでください。僕もお酒に酔っていたとはいえ、かなり調子にのってしまいました。」
「クリスは悪くないわ。私が頼んだことだもの。」
「でも、それじゃあ僕と、仲直りしてくれますか?」
クリスがにこりと微笑む。
エマはぶんぶんと、首を縦に振った。
つまり、クリスはエマのことを許してくれるということか。
エマは、目に涙を貯めて感動した。
やはりクリスは天使である。
ちょっと悪い天使っぽいなと思っていた自分を、エマは猛省した。
「仲直りの証に、先輩にプレゼントを用意したんです。受け取ってください。」
そう言ってクリスが出したのは、金色に輝くブレスレットと灰色の小さな箱だった。
「ごめんなさい。私は何も用意していないの。」
「僕が好きで用意したので、気にしないでください。」
クリスはそう言って、エマの手の上に2つの品物を乗せた。
この灰色の箱はなんだろうか?
エマが右手に箱を持つと、クリスがにこりと微笑みながら告げる。
「オリバー先輩の精子です。僕がもらってきました。」
「え?でもオリバー・ウィギンスは、経験済みだって…」
「嘘だと思います。調べてみてください。」
エマは急いで自分の研究室へ行くと、器具を使って箱の中の精子を検査する。
その精子は真っ新な、少しも混じり気のない研究材料としては申し分ないものだった。
「すごい!すごいわ、クリス!これでやっと、研究を進めることができる!」
「よかったですね。エマ先輩。」
エマはずっと考えていた構想を実現するため、机に向かった。
食事をするのも忘れ、長い時間研究室に一人で籠る。
やっと一段落ついたと思ったときに窓の外をふと見ると、いつものようにクリスが鳥にエサを与えているところだった。
色とりどりの鳥たちに混ざって肌色の鳥が二羽、一生懸命にクリスを追いかけている光景がなんだか可愛い。
「そういえば、クリスにお礼も伝えていないわ。」
また夢中になって、周りが見えていなかった。反省しなければ。
エマは伸びをすると、クリスに声をかけるために窓を開けた。
クリスのふわふわとした金髪と二羽の鳥たちにつけられた金色の足環が、太陽の光を受けてキラキラと輝いていた。
無表情がデフォルトだと言われるエマでも、暗い道を一人のろのろと歩きながら少しばかり泣いた。
どうしてクリスは、初めから童貞じゃないと教えてくれなかったのか。
おかげですごく無駄な日々をすごしてしまった。
可愛い後輩だと思っていたのに、もしかして嫌われていたのかもしれない。
でもクリスはエマのことを可愛いと言っていた。
答えの出ない問題を、グスグスと鼻をすすりながら一人考える。
そうしてあと少しで自宅に到着するというとき、そういえば初めに研究の協力を頼んだときに、童貞じゃないときちんとクリスは言っていたなと、エマは思い出した。
一度こうだと思ったら、それしか見えない。視野が狭くなる。エマの悪いところだった。
家に帰りお風呂に入って、身になじんだ自分のベッドに潜る。そうして落ち着いてくると、エマは自分のしたことを後悔するようになった。
魔術を使用した覗きに、欲しくもない物品を無理やり押し付ける。さらに断っているのに何度も研究の協力を頼み、果ては6歳も年上の地味な女に奉仕させた。
きっと、クリスは相当嫌だったのだろう。
本当に申し訳ないことをしてしまった。
もしかしたらクリスは、経験済みなのに私にしつこく頼まれ困って、諦めてもらうためにあんなことをしたのかもしれない。
それならすべてのことに説明がつく。
明日、きちんとクリスに謝ろう。
エマはベッドの中で目を瞑りながら、心に誓った。
◇◆◇◆◇◆
翌日、エマが出勤すると、クリスの方からエマに会いにきた。
「エマ先輩。昨日はすみませんでした。」
金色のふわふわした髪から覗くつむじを見ながら、エマは口を開いた。
「クリスが誤る必要はないわ。私こそ、迷惑をかけてごめんなさい。」
いや、むしろ、エマの方こそ謝らなければならない。
エマもクリスに向かって、深々と頭を下げる。
「研究のためとはいえ、クリスに随分とひどいことをしていたと思うわ。本当にごめんなさい。」
「そんな。謝らないでください。僕もお酒に酔っていたとはいえ、かなり調子にのってしまいました。」
「クリスは悪くないわ。私が頼んだことだもの。」
「でも、それじゃあ僕と、仲直りしてくれますか?」
クリスがにこりと微笑む。
エマはぶんぶんと、首を縦に振った。
つまり、クリスはエマのことを許してくれるということか。
エマは、目に涙を貯めて感動した。
やはりクリスは天使である。
ちょっと悪い天使っぽいなと思っていた自分を、エマは猛省した。
「仲直りの証に、先輩にプレゼントを用意したんです。受け取ってください。」
そう言ってクリスが出したのは、金色に輝くブレスレットと灰色の小さな箱だった。
「ごめんなさい。私は何も用意していないの。」
「僕が好きで用意したので、気にしないでください。」
クリスはそう言って、エマの手の上に2つの品物を乗せた。
この灰色の箱はなんだろうか?
エマが右手に箱を持つと、クリスがにこりと微笑みながら告げる。
「オリバー先輩の精子です。僕がもらってきました。」
「え?でもオリバー・ウィギンスは、経験済みだって…」
「嘘だと思います。調べてみてください。」
エマは急いで自分の研究室へ行くと、器具を使って箱の中の精子を検査する。
その精子は真っ新な、少しも混じり気のない研究材料としては申し分ないものだった。
「すごい!すごいわ、クリス!これでやっと、研究を進めることができる!」
「よかったですね。エマ先輩。」
エマはずっと考えていた構想を実現するため、机に向かった。
食事をするのも忘れ、長い時間研究室に一人で籠る。
やっと一段落ついたと思ったときに窓の外をふと見ると、いつものようにクリスが鳥にエサを与えているところだった。
色とりどりの鳥たちに混ざって肌色の鳥が二羽、一生懸命にクリスを追いかけている光景がなんだか可愛い。
「そういえば、クリスにお礼も伝えていないわ。」
また夢中になって、周りが見えていなかった。反省しなければ。
エマは伸びをすると、クリスに声をかけるために窓を開けた。
クリスのふわふわとした金髪と二羽の鳥たちにつけられた金色の足環が、太陽の光を受けてキラキラと輝いていた。
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