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3章:追憶の雷雨
26日目.雷雨
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町の方まで降りてくると、辺りは騒然としていた。店はシャッターを締めて、出歩く人々も建物へと避難していた。
この地域では雷が少ないため、慣れていないのだ。元気っ子の那緒でさえも恐怖するレベルと考えると、分かり易いだろう。
ひとまず、俺は咲淋に電話をかけた。
「到着したよ。そっちはどう?」
『今のところ変化はないね……。ただ、しばらくは続きそう。』
「……俺を下側で待機させた理由を聞いてもいい?」
『恒夢前線の及ぼす影響を調べられるチャンスだから。私が観測を行っている場所は生活圏より高度が高い。山の方が荒れやすいからね。』
この雷雨に迫ることは、恒夢前線の解明に繋がる。恐らく彼女は色々な角度から様子を観察したいのだろう。
そうなると、実経験のある俺は比較が出来るため調査効率が上がるという訳だ。
それにまだ不確定ではあるものの、恒夢前線と花は関連しているはず。霧の一件もあったため、事故だけでなく自然現象も該当していることが見て取れる。
もしかしたら、また一輪回収できるかもしれないので、俺はそれを探しつつ暗雲にも目を向けていた。
あれから十五分。雷は連発されており、明らかに天候が荒れてきていた。
「そっちは大丈夫か?」
それに付け加えて、突風に豪雨と身動きが取れなくなってきたため、俺は近くの公園の端で座り込み、咲淋に連絡を試みた。
『今のところはね……。他の雲が紛れ込んできたのが原因のようね。』
「他の雲……?」
何層にも重なった性質の違う雲がそれぞれ作用しているのが、恒夢前線の構造であり正体であることは以前に聞いた。
『ええ。お察しの通り、恒夢前線は他の雲を上書きしてしまうほど強力。だけど、層によって影響の強いものと弱いものがあるように感じるの。例えば、微量の雨を降らしている空を見上げた時に見える表面層は弱い。でも、二層目は上の影響を抑えられるほど強いってイメージかな。』
「それぞれ雲の動きは均一じゃない。だから、普段悪さできない雲が偶然悪さできる位置になった……という解釈で間違いないか?」
『大体はそんな感じ。』
何層分あってどの雲がどんな役割を持っているかなどは今の時点では全く調べられていない。
地理的条件に当てはめても、気温などの関係であの雲が出来上がっている感じはしていない。改めて、不可解なものだ。
そうこう思考を巡らせながら風雨に耐え、空を見上げていると、先程とは比べものにならないくらい巨大な閃光が走った。
光が見えて僅か数秒後、落雷の音が耳に入った。音のした方向を見ると、火柱が目に入った。
「……咲淋、どこに落ちた。」
しかし、すぐには返事が無かった。
「咲淋!」
『私は大丈夫。ちょっとネットワークの調子が……』
「分かった。手短に話して。」
『山の中のちょっとした道路のところ。幸い車とかは走ってなかったみたい。』
「……分かった。」
そう言って、俺は電話を切った。別に落雷が落ちたところに行く……なんて事をする訳ではない。そもそも行ったところで何も調べることはない。雷自体は特有のものでないからだ。
ただ、燃え広がってくると住宅地に延焼する恐れがあるので早めに通報した方が良いと思っただけだ。
雷雨の調査は咲淋が順調に進めているそうだ。ならば俺は“幻聴・幻覚作用”についての調査を優先したい。
花の存在したあの空間こそ、それと同一のものだと俺は思っている。肝心なのは入る方法だ。
今までは知らず知らずのうちに引き込まれていたが、何もトリガーがないとは考えにくい。
「適当歩き回る他無いな……」
あまりに情報が揃っていないため、こうするしかない。荒れた天気の中での散歩は少々リスキーだが、立ち止まっていても始まらないため公園から出て足を動かした。
雨も、風も、雷も徐々に勢いを増しており、夜と勘違いしてしまいそうなくらい辺りは暗くなっていた。
こんな天気の中じゃ人の気配などあるはずがない。一つおかしいことがあるとするならば……。
「何故、こんなにも無機質なんだ……人の営みが一切感じられない……。」
生活音は一切無く、雨が地面で弾ける音と落雷の音しか聴こえない。道の横に並ぶお店や家々の窓はシャッターが閉められており、光が漏れてこない。
あり得ない状況ではない。それでも、違和感しか感じられない。
段々と気味が悪くなってきたため、俺はスマホを確認した。
「電波が届いていない……。今回も気付けなかった。一体どういう経緯で……!……後でいい。今日は時間制限付きだ。」
どうやら気づかぬ間にあの空間に迷い込んでしまったようだ。これは呪いによるものなのか、恒夢前線によるものなのか。どちらにせよ、俺との関係性は深い。
夕方からの予定も入っているため長居は出来ない。早急に花を見つけるために俺は歩き出した。
一方、雷雨のピークが終わり強い雨程度に落ち着いたため観測を終えた咲淋は、不穏な様子で電話を切った蓮斗の安否が気になって電話をかけた。
「だめ…繋がらない……。」
しかし、その電話は繋がらなかった。位置情報の取得に失敗したようだ。
「……ううん、彼ならきっと大丈夫。何処で何をしているかは分からないけど、本気になった蓮斗なら、どんな状況も覆してしまうだろうから……。」
そんな暗示をかけて、咲淋は荷物をまとめて町に降りる準備を始めた。
この地域では雷が少ないため、慣れていないのだ。元気っ子の那緒でさえも恐怖するレベルと考えると、分かり易いだろう。
ひとまず、俺は咲淋に電話をかけた。
「到着したよ。そっちはどう?」
『今のところ変化はないね……。ただ、しばらくは続きそう。』
「……俺を下側で待機させた理由を聞いてもいい?」
『恒夢前線の及ぼす影響を調べられるチャンスだから。私が観測を行っている場所は生活圏より高度が高い。山の方が荒れやすいからね。』
この雷雨に迫ることは、恒夢前線の解明に繋がる。恐らく彼女は色々な角度から様子を観察したいのだろう。
そうなると、実経験のある俺は比較が出来るため調査効率が上がるという訳だ。
それにまだ不確定ではあるものの、恒夢前線と花は関連しているはず。霧の一件もあったため、事故だけでなく自然現象も該当していることが見て取れる。
もしかしたら、また一輪回収できるかもしれないので、俺はそれを探しつつ暗雲にも目を向けていた。
あれから十五分。雷は連発されており、明らかに天候が荒れてきていた。
「そっちは大丈夫か?」
それに付け加えて、突風に豪雨と身動きが取れなくなってきたため、俺は近くの公園の端で座り込み、咲淋に連絡を試みた。
『今のところはね……。他の雲が紛れ込んできたのが原因のようね。』
「他の雲……?」
何層にも重なった性質の違う雲がそれぞれ作用しているのが、恒夢前線の構造であり正体であることは以前に聞いた。
『ええ。お察しの通り、恒夢前線は他の雲を上書きしてしまうほど強力。だけど、層によって影響の強いものと弱いものがあるように感じるの。例えば、微量の雨を降らしている空を見上げた時に見える表面層は弱い。でも、二層目は上の影響を抑えられるほど強いってイメージかな。』
「それぞれ雲の動きは均一じゃない。だから、普段悪さできない雲が偶然悪さできる位置になった……という解釈で間違いないか?」
『大体はそんな感じ。』
何層分あってどの雲がどんな役割を持っているかなどは今の時点では全く調べられていない。
地理的条件に当てはめても、気温などの関係であの雲が出来上がっている感じはしていない。改めて、不可解なものだ。
そうこう思考を巡らせながら風雨に耐え、空を見上げていると、先程とは比べものにならないくらい巨大な閃光が走った。
光が見えて僅か数秒後、落雷の音が耳に入った。音のした方向を見ると、火柱が目に入った。
「……咲淋、どこに落ちた。」
しかし、すぐには返事が無かった。
「咲淋!」
『私は大丈夫。ちょっとネットワークの調子が……』
「分かった。手短に話して。」
『山の中のちょっとした道路のところ。幸い車とかは走ってなかったみたい。』
「……分かった。」
そう言って、俺は電話を切った。別に落雷が落ちたところに行く……なんて事をする訳ではない。そもそも行ったところで何も調べることはない。雷自体は特有のものでないからだ。
ただ、燃え広がってくると住宅地に延焼する恐れがあるので早めに通報した方が良いと思っただけだ。
雷雨の調査は咲淋が順調に進めているそうだ。ならば俺は“幻聴・幻覚作用”についての調査を優先したい。
花の存在したあの空間こそ、それと同一のものだと俺は思っている。肝心なのは入る方法だ。
今までは知らず知らずのうちに引き込まれていたが、何もトリガーがないとは考えにくい。
「適当歩き回る他無いな……」
あまりに情報が揃っていないため、こうするしかない。荒れた天気の中での散歩は少々リスキーだが、立ち止まっていても始まらないため公園から出て足を動かした。
雨も、風も、雷も徐々に勢いを増しており、夜と勘違いしてしまいそうなくらい辺りは暗くなっていた。
こんな天気の中じゃ人の気配などあるはずがない。一つおかしいことがあるとするならば……。
「何故、こんなにも無機質なんだ……人の営みが一切感じられない……。」
生活音は一切無く、雨が地面で弾ける音と落雷の音しか聴こえない。道の横に並ぶお店や家々の窓はシャッターが閉められており、光が漏れてこない。
あり得ない状況ではない。それでも、違和感しか感じられない。
段々と気味が悪くなってきたため、俺はスマホを確認した。
「電波が届いていない……。今回も気付けなかった。一体どういう経緯で……!……後でいい。今日は時間制限付きだ。」
どうやら気づかぬ間にあの空間に迷い込んでしまったようだ。これは呪いによるものなのか、恒夢前線によるものなのか。どちらにせよ、俺との関係性は深い。
夕方からの予定も入っているため長居は出来ない。早急に花を見つけるために俺は歩き出した。
一方、雷雨のピークが終わり強い雨程度に落ち着いたため観測を終えた咲淋は、不穏な様子で電話を切った蓮斗の安否が気になって電話をかけた。
「だめ…繋がらない……。」
しかし、その電話は繋がらなかった。位置情報の取得に失敗したようだ。
「……ううん、彼ならきっと大丈夫。何処で何をしているかは分からないけど、本気になった蓮斗なら、どんな状況も覆してしまうだろうから……。」
そんな暗示をかけて、咲淋は荷物をまとめて町に降りる準備を始めた。
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