Existence

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第二十話 私怨

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 ぞくりとするような声が聞こえて振り返ると、白色の世界の中に、血の色が飛び込んできた。

 円形の深紅の帽子を被り、同じく深紅の長い外套を着込んだ男が慧牙達のすぐ後ろに立っている。手を伸ばせば届きそうなほどの至近距離、これほど近くにいるのに気づかなかった。恐怖を覚えて慧牙は顔を引きつらせた。

 不穏な笑みを浮かべながら、その男は首をゆっくりと傾げてみせる。振り返ったままの姿勢で僅かの間、思考が停止した。横にいたターヴィやセヴェリも同じように息を詰まらせていた。視覚に強烈な色を投げてくる男。明らかにフレア族の人間ではない。男の目つきが変わった、その瞬間、黒い血で汚れた背中が映り込む。

 ターヴィが慧牙の前方に入り込むまでの時間は一瞬だった。セヴェリもまた、慧牙の横で剣を抜いていた。彼らの行動で、この場は紛れもなく危険な状態に陥ったことを慧牙は悟った。深紅の服装は全身に血を浴びたようにみえる。これまで殺してきた人間の血が呪いのように染み付いてるのかもしれなかった。まだここへ連れてこられてから日は浅いが、フレア族の住むズメウの駐屯地内での兵士の服装に見慣れていた慧牙から見れば、その色はあまりに下品な色に見えた。

「よくもぬけぬけとここに姿を現せたものだな。お前のかわいい犬どもはみんな殺されたぞ。貴様も早く尻尾を巻いて逃げればいいものを、まさか自分から檻の中に入ってくるとはな」

 威勢よくターヴィが剣先を真っ直ぐに向けながら、聖騎士団と思われる人物に言い放った。茂みの中に隠れていた他の兵士達も次々と立ち上がると、赤い外套を着た聖騎士団に剣を向ける。

「こいつ、見たことがある。海で襲ってきた奴か?」

 リリー島からここズメウへ向う途中、襲ってきた聖騎士団の者となんとなく風貌が似ているように思えた。だがあの時はかなり離れた所から見ただけであったので、確信は持てない。ただ手に持っている大きな長い金色の杖は、海上で襲ってきた敵と同じように見えたのだった。四方をフレア族に囲まれた聖騎士団の一人は、圧倒的に不利な立場だ。フレア族の兵士達はみな剣の切っ先をその者に向けて、今にも切りかかりそうな勢いである。

「ヴァリオだ。この前、レイヴィルさんに倒されたはずなのに。生きていたなんて」
「やっぱりこいつがあの時襲ってきた奴なのか?」
「うん。でも、死んだと思っていた。あの冷たい海に落ちたはずなのに」

 殺気だった兵士達の中で、セヴェリがヴァリオの方を向いたまま、僅かに震える声で慧牙の質問に答えた。

 彼の口元がはきつく閉じられて、瞬きをしないまま今突然現れた敵を凝視している。自然と彼の恐怖が伝わってきたような気がして、唾を飲み込んだ。その音が異常に大きく感じて、慧牙はこの時になっていいようのない恐怖をおぼえた。

「こいつがヴァリオか。リーダーを相手に戦って、死んでいないという事は、一応それなりに強いのかな。それともただ運がいいだけの奴か」

 レイヴィルに返り討ちにされたヴァリオだと聞くと、ターヴィはいかにも馬鹿にしたような顔つきをして、目の前にいるヴァリオに挑発するような言葉を投げかけた。

「ふん、この前は少しばかり手加減してやっただけだ。魔物と大差ない人間崩れみたいな奴から、そんなことを言われるとはな。俺も馬鹿にされたものだ」

 円形の帽子の鍔を手で触りながら、ヴァリオが呆れたように右足で雪を軽く踏み鳴らす。こうして間近でこの男を見るのは初めてであったが、彼の様子からしてレイヴィルにやられた傷はもう癒えたように見受けられた。

「おい、こいつの相手は俺一人で充分だ。お前達は下がっていろ」
「ですがっ」
「いいから俺の言う事を聞け。それに、他にも聖騎士団の奴らはいるだろう。ここで全員で束になってかかる必要はない。セヴェリ、お前達はケイガを連れてここから離れろ」

 余程自分の力に自信があるのか、ターヴィは周りの兵士達にそう告げた。そしてセヴェリに慧牙を連れてこの場を離れろと促す。その言葉に慧牙は怪訝そうな顔つきになった。

 生きるか死ぬかの戦い、なんていうものは生まれてから一度もしたことはない。けれど、一見弱そうに見える相手でも不意をつかれて劣勢になる時もある。こちらが不利だと思っても、実際喧嘩をしてみると勝てる時もあった。しかしどんな時であっても、それは一対一の時の話である。複数の相手がいる時はよっぽどこちらが強くなければ、確実に負けは見えていた。

 今こうして、味方が大勢で敵が一人だけなら、安全に勝つことができるだろうと、慧牙は思った。なのにターヴィは他の兵士を気遣ってなのか、それとも本当に相手を見下しているのか、一対一の戦いを望んでいる。

 慧牙からしてみれば、危ない賭けのように思えた。

 今ここで全員が一斉に攻撃すればいいじゃないのか?

 心の中でそんな言葉が浮かぶ。でも慧牙はそれを声に出せないでいた。

「だけど、一人で相手にするなんて。今全員で攻撃すれば勝てるはずです」

 慧牙の気持ちをセヴェリが代弁するかのように言った。

「セヴェリ、いいから俺の言う事を聞け。他の者達も下がれ、ここは俺に任せろ」

 しかしセヴェリの提案は受け入れられることはなかった。今だ躊躇する仲間の兵士達にそう告げた直後、ターヴィは手にしていた剣を大きく振り上げながら、ヴァリオに向って突進していった。ターヴィの動きに連動して、セヴェリは慧牙の手を引っ張った。けれど慧牙はこの場を離れまいと、逆方向に力を込める。ここでターヴィ一人を残して逃げるということは考えられなかった。

「馬鹿め、お前なんかに私の相手が務まるとでも思うのか?」

 ターヴィの振り上げた剣に一瞬にして炎が纏わりつく。それが彼の能力なのか、炎を纏った剣がヴァリオの身体を切り裂こうとした時だった。猛然と仕掛けていくターヴィの攻撃を避ける素振りすら見せず、ヴァリオは相変わらず不敵な笑みを浮かべたまま首を右に傾げた。炎の剣がヴァリオの肩から腹にかけて斜めに振り下ろされる。その時不可解なことがおこった。ヴァリオは一歩も動く素振りを見せずにいたはずなのに、ターヴィの攻撃はあっさりと交されたのであった。

「なっ!?」

 今起った状況が掴めず、慧牙は瞬きを数度繰り返した。確かにヴァリオは動いていなかったはずだ。ただ、斬られる直前に首を傾げただけである。それなのにターヴィの攻撃は当たらなかった。最初の一撃を外したターヴィはキッと相手を睨みつけると、再び剣を振りかざし、ヴァリオに向って切りかかる。けれども二度目の攻撃もまた交された。最初は気づかなかったが、二度目はそのままの状態でヴァリオは右方向へとズレたように見えた。不思議な光景だった。何度ターヴィがヴァリオに切りかかっても、一向に攻撃は敵に当たらない。剣を覆っている炎の先端すらもヴァリオのどこにも触れることは出来ないでいた。ヴァリオはただ面白そうに自分の周りで一人、剣を振り回しているターヴィを見ている。ついにターヴィは怒ったように自身の周囲にある茂みだけを炎の剣で焼き払った。完全にターヴィはヴァリオに遊ばれていた。

「こんな茂みの中で、よくそんなにかわせるものだと思ったら、貴様……」
「私はあなた方みたいな下等な人種と違って、優秀なんです。でも、私の能力はあなたも知っていたはずでしょう? それなのにそのことをすぐに気がつかないなんて、これだから下等な生き物は嫌いなんですよ。学習能力というものがない」

 ヴァリオはユーリャ族の一部の人間だけが使いこなせる浮遊する能力を使って、ターヴィの攻撃を交していた。その事にすぐ気づかなかったターヴィは唾を吐き捨てると、更に眼光を強めて柄を持ち直し、剣の角度を僅かに変えると再び切りかかった。

「ケイガ、今のうちにここを離れましょう!」
「だけどあいつはどうするんだ、このまま残して俺達だけ逃げていいのか!?」

 慧牙の腕を掴んだまま、同じようにターヴィの戦いを見守っていたセヴェリは思い出したかのように声を上げた。けれどもこの場から一刻も早く離れようとするセヴェリを制止して慧牙は反論する。仲間の為に一人で戦っているターヴィをこのまま残して、自分だけ危険な場所から離れるわけにはいかないと感じたからだった。この場に留まっても、慧牙は何一つ役には立たない。だからといって、すんなりとここから逃げ出すことも納得できなかった。

「何を言っているんですかっ、このままここに居てもターヴィの邪魔になるだけです。さぁ早く!」

 これまでにない強引なセヴェリに対して慧牙は少しばかり動揺した。いつも弱そうな実際兵士の中ではかなり弱いらしいセヴェリが、いつになく緊張を孕んだ声で慧牙を無理矢理にでも引っ張って行こうとしている。それでも慧牙は今、目の前で繰り広げられている戦いから離れることができずにいた。

 その時、突然慧牙の視界に無数の黒い粒が映りこんだ。驚いた慧牙は自分の目がおかしくなったのかと思い、片手で目を強く擦る。けれどもその黒い粒は視界から消えず、逆に増えていった。

「これは……、ケイガ! 絶対に虫には触らないで!」
「この黒いのは虫なのか!?」

 気がつけば慧牙とセヴェリは無数の黒い虫達に取り囲まれ逃げ場を失っていた。それはヴァリオが呼び出した虫達で、その虫は嫌な羽音を撒き散らしながら、慧牙達の周囲を円を描くように物凄い速さで飛び回っている。攻撃をする様子はなく、周囲を激しく飛び回り、まるで慧牙達を逃さないようにしているようであった。

「多分僕達を逃さない為にあいつがこの虫を出したんだ。どうしようっ、早く逃げなかったからこんなことに!」
「ただの虫だろ? ならすぐに逃げられるだろ」
「ただの虫じゃありません! この羽虫は小さいけれど、鋭い棘が全身についていておまけに人を食べるんだ。こんなにも早く飛び回っている羽虫達の中に飛び込めば、あっという間に身体中血まみれになってしまう!」
「なんとかならないのかよ!」
「無理ですよ! あぁ、どうしよう! まずいことになった!」

 周囲を無数の虫で囲まれたセヴェリは頭を抱えながら、完全なパニックに陥っていた。慧牙達の様子に気がついたのかターヴィは一瞬だけこちらを見ると、口元を歪めて口惜しそうな表情を浮かべる。

「お前も魔力っていうのを使えるんだろう? それでなんとかならないのか!?」

 聖騎士団からの奇襲攻撃を受けた直後、小屋の中から出られなくなったところをセヴェリとヨハンに助けてもらったことを思い出して、慧牙は早口で尋ねた。あの時はセヴェリが実際に魔力を使ったところを見る事はできなかったが、今この状況を打開できる力があるのかもしれない。

「僕の魔力なんかじゃ駄目なんです。凍らせても凍らせても羽虫は無数に湧き出てきて、倒すことはできないんだ!」
「そんなのやってみないと分からないだろ!? このままじゃ他の奴らもみんなこの虫にやられてしまうだろ!」
「駄目です、僕なんかが敵う相手じゃない。あぁ、本当にどうしよう!」

 セヴェリは自分では絶対に歯が立たないと思い込んでしまっているよようだった。どんなに慧牙が魔力を使ってここから脱出できないか頼んでみても、頑なにその言葉は受け入れず、ただ一人で頭を抱えたままひどく混乱している。

 慧牙は羽虫達の合間から見えるターヴィとヴァリオの戦いと、すぐ隣でしゃがみこんでいるセヴェリを交互に見ながら、このどうにもならない状況に歯ぎしりすることしかできなかった。周囲に残っていた兵士達も動揺し、羽虫の大群から身を守るように剣をむやみやたらに振り回したり、バラバラに逃げ惑っていた。

 一方ターヴィはヴァリオに今だ遊ばれているようだった。何度切りかかっても、その攻撃はするりと交されてしまう。深紅の衣服を纏ったヴァリオは意地の悪い笑みを浮かべながら、宙を虚しく切り裂くだけのターヴィを見て楽しんでいる。周囲からは兵士達の混乱に満ちた声が上がり、羽虫を避けながらも一人で戦っているターヴィに加勢しようとする兵士もいたが、それらは全てヴァリオの生み出した羽虫達によって遮られていた。先ほどまでの静寂が嘘のように今、この丘の上はたった一人の敵の出現で混乱と焦りと恐怖で満ち溢れていた。

「……くそっ!」

 気がつけば、鬱蒼と茂っていた背の高い草茂みはターヴィの炎を纏わせた剣によって至るところから煙があがっていた。戦っている場所だけがターヴィによって焼き払われて、白い地面が顔を出している。

 火が燻り、煙が立ち込める中、ターヴィは一向に当たらない剣を未だ構えたまま、大声で相手を罵倒していた。向こうからは一切攻撃をしかけてこず、ただ交されるだけの戦いに耐えかねたようであった。

「下等なフレア族の中でも、少しはマシだといわれている魔力を持つ兵士が、まさかこの程度だとはな。こんなにも弱いのなら、もっと早くここを攻めるべきだったか」
「なんだと!?」
「弱い、弱すぎる。お前達の中で唯一、対等にユーリャ族と戦えるのはレイヴィルぐらいか。それ以外は、ゴミに等しいな」
「貴様ぁ!」

 ターヴィの魔力によって生み出される赤い炎が一段と燃え上がった。既に手にしているのは剣ではなく、長く伸びた炎の柱のようになっていた。その炎が怒りによって更に大きさを増し、これまで何度も交された攻撃を再び繰り出した。

 振りかざした炎は一段と空に向って伸び上がり、大きな火柱となってヴァリオの頭上目掛けて振り落とされた。その火柱がヴァリオの頭に直撃する寸前、光が周囲に激しく交錯する。あまりの眩しさに慧牙や周囲にいた兵士達は一斉に目を瞑った。

 数秒のち、一人の兵士が両目を保護していた腕をそっと降ろして愕然としていた。茂みの中でゆらりと立っている赤い衣服を身に纏ったヴァリオの姿はあったが、もう一人の人物の姿が見当たらなかった。

「おい、セヴェリ! ターヴィがやられたっ、あいつを助けないと! セヴェリ!」

 黒い無数の羽虫に逃げ場を奪われていた慧牙は大声でしゃがみ込んでいるセヴェリに怒鳴りつける。ターヴィの一際強い攻撃はヴァリオに当たる事はなかった。

 火柱がヴァリオの命を奪う直前、ヴァリオの手から新たに生み出された無数の虫達が一斉に火柱目掛けて飛び掛った。炎に触れた瞬間死滅する羽虫、けれども羽虫は慧牙達を取り囲んでいる数よりもずっと多く、次から次へと生み出される羽虫達は密集し、黒く巨大なうねりとなり、火柱を押し返していた。

 焦りを感じて弱まったターヴィの攻撃を見逃さず、その瞬間ターヴィの目の前まで移動してきたヴァリオは上部と下部の甲冑の隙間を狙って、隠し持ってい短剣を突き刺していた。ターヴィが負けて、周りにいた兵士達は火がついたように一斉にヴァリオに向って突進していく。ヴァリオはそんなフレア族の兵士達を虫けらでも見るかのような目つきで一瞥すると、更に多くの羽虫達を出した。

 ここで始めてヴァリオは慧牙の姿を目に止めた。口元から歯を見せて、歪んだ笑い顔のまま手にしていた杖を軽く上へと上げる。するとそれまで攻撃をしかけてこなかった羽虫達が、意志を持った弾丸のように兵士達に襲いはじめた。

 眼や口、耳を狙われた兵士達は途端に持っていた剣を次々と落とした。羽虫を振り払おうとその場でもがき苦しんでいるのだ。だが慧牙とセヴェリの周りにいる羽虫の大群は他の羽虫とは違い襲ってくる様子はなく、ただ周囲を激しく飛び回っているだけであった。その数は次第に増し、今や周りは黒い無数の点で視界を封じられ、周りの状況は目を凝らさないと見えないような状態だ。

「セヴェリっ、このままじゃみんなやられちまう。お前も魔力を使えるんだろう、なんとかしてあいつを止めないと!」
「僕は駄目なんです、僕は弱くて、僕なんかじゃとても役に立たない」

 こんな状況に陥ってもまだ蹲ったまま怯え続けるセヴェリに怒りを感じた。慧牙はその怒りのままにセヴェリを無理矢理顔を上げさせると強く頬を叩く。

「なら俺にその剣をよこせ、俺が戦う!」

 そう言って、セヴェリの剣を強引に抜き取ると慧牙はセヴェリを突き放した。

「駄目です、そんなことしちゃ駄目です! あなたは神の子なんでしょう!? 神の子である方にそんなことはさせられない!」
「俺は普通の人間だっ、……て今はそんな話してる場合じゃない、早くなんとかしないとみんなやられる! ほら、見ろよ!」

 まだ地面に膝をつけているセヴェリの顔を羽虫達の近くへと強引に寄せてやる。そして今まさに起こっている光景をセヴェリに見せ付けた。瞬間、セヴェリの肩が揺れる。慧牙は早くセヴェリの今の状況を知ってもらい、なんとか自分の力で立ち上がってもらいたかった。

 羽虫から発せられる身の毛もよだつ音の中、セヴェリは無数の黒い点に視界を遮られながらも、奥で同胞が次々と襲われていく様をただ黙って見つめていた。同じように慧牙も今まさに繰り広げられている光景に目を奪われた。

 黒い羽虫の群れが兵士に群がり、皆が一様に両手で必死になって虫を振り払おうと暴れている。無我夢中で暴れる兵士達は皮膚が露出している部分を攻撃されて、虫一匹の攻撃自体はほんの小さなものであるが、何百、何千といる虫が一斉に攻撃を加えれば、兵士の受ける傷はかなりひどいものであった。

 ヴァリオはただ一人、その状況を宙に浮いたままの状態で薄ら笑いを浮かべている。ヴァリオのすぐ近くには、白い地面に血だらけで倒れているターヴィの姿があった。

 慧牙は少しだけの間、セヴェリの反応を待っていた。この光景を見て、仲間がやられている姿を見て、セヴェリが立ち上がってくれることを願っていた。けれどもセヴェリに反応はなく、ただ震えながら声も出せずただ呆然としている様子だった。慧牙の中で焦りと不安がさらに高まる。

「もういい、お前が戦わないなら、俺が戦う」

 もう待っていられなかった。これ以上待つことなどできない。自分の力ではどうにもできないだろうけど、ただここでジッとフレア族がやられていく姿を見ることなどできなかった。

 慧牙はセヴェリを掴んでいた手を離すと、剣を両手で構えて深呼吸をした。セヴェリの剣、見た目は細身で軽そうに思えたが、実際に持ってみるとかなりの重量があった。今までこんな剣など手にしたこともなければ、実際に見たこともない。初めて触れたその剣、使い方など知るよしもない。だけど慧牙はこの剣を聖騎士団であるヴァリオに振り下ろさずにはいられなかった。覚悟を決めて、真っ直ぐに前方を見据えると慧牙は羽虫の壁の中へと入ろうとした。

「待って! 無謀なことはしないで!」
「じゃあどうすればいいんだ!」

 寸でのところで、セヴェリに止められる。剣を持ち、正に今、羽虫の群れの中へと飛び込もうとしていた慧牙に気がついたセヴェリはそこで初めて正気を取り戻したかのようであった。必死に上着の裾を掴み、慧牙の動きを阻む。

「僕の後ろに来て。僕だって兵士なんだ、フレア族の兵士で、ドラゴンファングの一員だ。みんなを助けないと……」

 慧牙のあまりにも無謀な行動で我に返ったセヴェリは、押し殺した声でそう言うとゆっくりと立ち上がった。両手を前につき出して、掌を羽虫の方へと向ける。途端にセヴェリの掌から青白い光が浮かび上がり、それは真っ直ぐと前へと伸びていった。羽虫の群れに青白い光が当たった瞬間、それは一気に広がり周囲を取り囲んでいた虫は一瞬にして凍りつく。唖然とする慧牙をよそに、セヴェリは剣を取ると、勢いよくその剣を凍った虫の壁に叩きつけた。

「すげ……」
「今のうちに早く逃げて!」

 それまで出るに出られなかった閉鎖された場所が一気に開放されて、地面に大量の氷漬けになった虫の塊の中でセヴェリは慧牙に逃げるように叫んだ。

「でも、それじゃお前はどうするだ!」
「ケイガはどんなことをしても守らないと、僕達のことはいいから早く!」

 羽虫で作った囲いを壊された事に気がついたヴァリオは右手を顔の前まで持っていき、再び羽虫を発生させようとしている。セヴェリは横目でヴァリオの様子を確認しながら、慧牙に逃げるように大声で叫んだ。

「いいから早く逃げて! あとは僕がなんとかするから。お願いだ、僕達の為にも逃げて!」

 必死に逃げるよう叫ぶセヴェリを見て、慧牙は困っていた。ここで言われるがまま逃げていいのだろうか、でもここに残ったとしてもあんな人間とは思えない能力を持った敵とどうやって戦えばいいのかも全く検討がつかなかった。

 今こうして正気を取り戻したセヴェリであれば、この状況を変えることができるかもしれないとも思った、だけどそれは確信を持てない予測でしかない。慧牙がここに残っていることで、逆にセヴェリ達の状況が悪くなることも考えられた。切羽詰まった状況の中で、どういう行動が一番良い方法なのか判断できず、困惑した表情を浮かべたままだった。

「うわっ!」
「セヴェリ!」

 驚きと後悔が重なり、その大きな感情は突然、慧牙の心を鷲掴みにした。どうすれば一番良い方法なのか迷っている間に、気がつけばタイムリミットは切れていた。ヴァリオの放った羽虫の群れがセヴェリの周囲になだれ込み、慧牙の目の前でセヴェリは黒い羽虫達に覆われてしまった。全身を羽虫が襲い、セヴェリは痛みと恐怖で絶叫を上げる。だけどセヴェリの姿は羽虫に囲まれて見ることはできず、慧牙はその叫び声を聞くことしかできなかった。その時、慧牙の背すじに冷たいものが走った。

「さぁ、私と一緒に行こうか」
「!?」

 いつの間にか背後にまわっていたヴァリオは耳元で嬉しそうにそう囁く。咄嗟に振り返ろうとするが、強く抱き寄せられ、足が地面から離れた。

 こいつ、いつの間に!?

 細面の顔からは想像つかないほどのがっしりとした腕に掴まれている。慧牙は必死にヴァリオから離れようともがいた。虚しく宙に浮いた足をバタつかせて暴れる。兵士達の悲鳴や怒りに満ちた声が広がり、そこら中で羽虫達に襲われて苦しみもがいていた。その中に既に動かなくなったターヴィの姿と、まだ羽虫達に囲まれて叫び続けているセヴェリの声が激しく鼓膜を刺激する。

「お前、なんでこんなことを! 今すぐに虫どもを消せ!」
「なんでと言われても困るなぁ、私は忠実に命令に従っているまでのこと。それに、あなたみたいなどこの馬の骨とも分らないような奴に、指示される覚えはない」
「だったら俺のことなんかどうでもいいじゃねぇか! 早く虫を消して、とっとと自分の国に帰れ!」
「そうはいきませんよ。私にとって、あなたはそこら辺にいる蛮族と対して変わらないですが、上の者達はそのように認識していないようですからね」
「上の者達ってなんだよ、だったらそいつらに言えよ。俺はただの人間だってな、神の子でもなんでもない! ほんと普通の人間なんだよ!」
「――神の子? ……そういうことでしたか。……そういうことだったんですね、あなたが……。それなら私も納得しましたよ。なんせあいつらといったら、理由は一切説明せずにただあなたを捕らえろとしか言いませんでしたから。どうして私達聖騎士団がこんな極寒の辺境の地にまでやってきて、このような手間をかけなければならないのか。皆目検討もつきませんでしたけど、神の子を捕らえるということでしたら、納得できる。あなたの話が本当ならね」

 ヴァリオは暴れる慧牙をよそに独り言のように呟いた。そしてプライドの高そうな顔を夜空に向けると、慧牙はヴァリオと共に一段と空高く舞い上がっていった。

「降ろせ!」
「駄目ですよ、これから私達と一緒にハシマに帰るんですから」
「クソが! なら虫達をなんとかしろ! 俺を捕まえたんならそれで目的は達成されたんだろ!? それならもうあいつらを襲う必要なんかないだろ! 早くあの虫どもを消せよ!」
「それはできません。これを機に長年に渡って蝿のように鬱陶しかった蛮族どもを一気に殺せる。私のかわいい羽虫達はこのままにしておきます」

 歪んだ笑顔が赤い月に照らされた。慧牙は自分の無力さを感じながらも、それでもこの残酷なヴァリオに一撃を加えようと試みる。がっしり胴体を掴んで離さないヴァリオの腕に渾身の力で叩き、宙に浮いている足でヴァリオの足を蹴ろうと盛大に暴れ始めた。そんなことをして万が一ヴァリオが手を離せば、慧牙の体は地面に叩きつけられるであろう。下は雪が降り積もってはいるが、背の高い木と同じ位の高さまで浮いている場所から落ちれば怪我は免れない。だけど今、慧牙の中ではそんなことを考える暇などなかった。とにかくセヴェリやターヴィ、他の兵士達をなんとか助けられないのか、そのことしか考えられなかった。

 下方に広がる黒い羽虫達、その中を絶叫を上げながらのた打ち回る兵士達。その光景が次第に遠ざかってゆく。悔しさと怒りと、激しい動揺が慧牙を襲った。このままフレア族の地を離れ、次はどこへ連れて行かれるのか。兵士達はこのまま聖騎士団に殺されてしまうのか、セヴェリやターヴィ、やさしくしてくれたイノアやヨハンの顔が次々と浮かぶ。そして会うたびに腹が立って仕方なかったレイヴィルの事を考える。

 あいつはどうしてるんだ? 駐屯地にいた魔物どもと戦っているんだろうか。ターヴィがやられたんだ、セヴェリも! みんな危険な状況なんだよ、レイヴィル!

 ヴァリオは慧牙を連れたまま高度を上げて、ズメウの駐屯地からだんだんと離れていく。下の悲惨な戦いとは逆に、澄んだ空気の中でキラキラと星々が煌めいていた。

「ちっ……」

 突然ヴァリオは小さく舌打を打つと、その場で止まった。駐屯地とは反対方向の空から猛然とこちらに突進してくる一つの黒い塊がいた。それは慧牙のすぐ傍までやってくると、その場で羽ばたきながら鋭く響く声でヴァリオの行く手を阻む。

「蝿の親玉、どこへ行く気だ? 自分で出した蝿どもをおいて、まさか逃げる気ではないだろうな」

 大きな黒鳥の背に見慣れた人物の姿があった。黒く長い髪が風になびき、金色の瞳が暗闇の中で異様な光を放っている。

「レイヴィルか、この間はよくもやってくれたな。だが、今日はこの前のように上手くはいかないぞ」
「おい、貴様の醜い心がそのまま顔に出ているぞ。鏡を見たほうがいい、とてもじゃないがひどい顔をしている」
「なっ!?」
「それにお前の魔力は汚く小うるさい虫ケラばかり作り出す。まるで貴様自身そのものだな」
「くっ……、邪神の民が生意気な口を! こうしてくれる!」

 前回の屈辱を晴らすかのように、ヴァリオはそれまでの落ち着いた口調を一転させると、声を荒げるて杖を頭上高く上げた。そして杖を一気にレイヴィルの方へと突き出した。すると手の平から羽虫の群れが生み出されて、羽虫達は渦を巻きながら真っ直ぐとレイヴィルへと襲いかかる。

 攻撃を阻止しようと、慧牙はすぐにヴァリオの右腕を掴み、思い切り外側へと押しやった。

「邪魔をするな!」

 羽虫を出し終えたヴァリオは外へと押し出された杖で強く慧牙の頭を殴りつけた。そして立て続けに慧牙の頭や顔を殴り続ける。横から殴ってくる杖をかわそうにも、抱きかかえられているせいで、何度もくらっていた。そして、最後にくらった杖が慧牙のコメカミを直撃する。その瞬間、慧牙の意識がぐらりと揺らいだ。

 レイヴィルは羽虫に襲い掛かられて、黒鳥を空高く舞い上がらせた。そして羽虫達に追いつかれないようにと空中を右へ左へと逃げていく。

「前回のようにはいかないぞ! 今回はこいつがいるんだからな、私を攻撃しようにもこいつがいては出来まい!」

 高笑いをしながらヴァリオは羽虫達から逃げ続けるレイヴィルの姿を見て勝ち誇ったような声を上げる。腕の中でぐったりとしている慧牙を他所に、ヴァリオはこれから徐々に食い殺されるであろうレイヴィルを喜々とした表情を浮かべて鑑賞していた。

 だが、その表情は突然にして曇らせることとなった。レイヴィルがまさに羽虫達に追いつかれて食い殺されそうになった瞬間、羽虫達は一斉に地上へと堕ちていったのである。黒い虫達が落ちていく様を慧牙は朦朧としながらも見つめていた。

「嘘だ!? 貴様一体何をした!」

 ヴァリオが愕然としながら、今起こった状況を把握することができず、思ったままの言葉が口をついてでた。ヴァリオの脳裏にこれまでレイヴィルと対峙した時の事が過ぎった。昔、初めてレイヴィルと戦った時、途中で羽虫達が追うことのできない池の中へと逃げ込まれた。二度目の時はリリー島から逃げるレイヴィル達を追って今と同じように空中での戦いであった。

 あの時は羽虫の攻撃を今のように交されて、あっという間に追いつかれたレイヴィルに直接攻撃を受けてしまった。そして三度目、今回は池もなく、慧牙がいる為ヴァリオに直接攻撃もできないはずだった。永遠と追い続ける羽虫から逃れ続けることなど不可能に近かったはずなのに、レイヴィルの体にあと少しで触れるという寸前、羽虫達は一斉に地面へと落ちていったのだった。

 あり得ないことだった、ヴァリオにとって絶対にあり得ないことが起っていた。自身の放つ羽虫はヴァリオが合図を送らない限り、対象を追い続ける。途中で止まったり、追うのやめることなどこれまで一度もなかったことだった。歯軋りをしながらヴァリオは再び杖を振りかざした。再び無数の羽虫達が宙に現れて、それらは一斉にレイヴィル目掛けて襲い掛かる。

 またしても同じ現象が起った。今度はレイヴィルは逃げることなくその場に立ち止まったままの状態で、羽虫達が近づいてくるのを待っていた。そして、羽虫がレイヴィルに触れる直前、同じ現象が起った。

「貴様どんな力を使った!? なんで私の虫達がみんな落ちていくんだ!」
「頭の悪いお前には分かるまい、分かったとしても理解できないだろう。それよりもそのガキを攫いにきたらしいが、生憎それは俺のだ。返してもらおうか」
「なんだと!? 蛮族のくせに生意気な口を!」
「どうやらやはり、死なないとダメなようだな」

 羽虫を使えなくなったヴァリオは他に攻撃する手段を持っていなかった。威勢のいい声を上げたもののその場で立ち往生し、ヴァリオは自分の仲間が近くにいないかひどく忙しく視線を泳がせる。

 けれどもヴァリオは単独行動に出ていた為か、すぐ助けにきてくれる仲間の姿を見つける事はできなかった。このままではやられると感じて、ヴァリオは再び前方にいるレイヴィルに視線を戻して固まった。弓を構えた彼の姿があった。

「……おい、やめろ。そんなものを使ってこいつに当たったらどうするんだ。こいつは神の子なんだろう? もしも神の子に当たれば地獄に堕ちるだけでは済まされないぞ。お前の家族もみな地獄に堕ちて未来永劫苦しみ続けることになる」
「余計なお世話だ。お前一人の命で殺された兵士達の魂が浮かばれるとは思わんが、少しは弔いになるだろう」

 空を切り裂く弓矢がレイヴィルから放たれた。その瞬間、慧牙の体がヴァリオから離れる。額の中央を射抜いた弓矢を見るかのように、ヴァリオの瞳がグルンと上を向いた。手に持っていた杖が落ちる。そしてヴァリオと慧牙は地上へと堕ち始めた。

 ◇

「……あいつは?」

 ようやく意識がはっきりとし始めた。気がつけば黒鳥の背に乗せられている。後ろから回された左腕がしっかりと慧牙を押さえていた。動いた瞬間、頭に激痛が走り、慧牙は手で頭を抑えた。ヌルッとした感触に手を放すと自身の血がベッタリとついていた。

「死んだ。死んで当然の奴だったからな、俺の仲間を殺した報いだ」
「……そうだ、ターヴィが大変なんだ! それにセヴェリや他の兵士達はどうなった!?」

 気が気ではなかった。刺されたターヴィの事や、羽虫達に襲われたセヴェリ、兵士達の事を考えれば今すぐにでもあの場所に戻って無事を確かめたかった。思えばあそこまで状況が悪化したのは自身の優柔不断さが招いた結果かもしれないと慧牙は思っていた。だから余計に早くあの場所へ戻りたかった。

「あいつは死んだから虫達は消えたはずだ。他の聖騎士団の奴らも全て片付けてある。これからすぐに戻って、傷ついた仲間を助けなければならない」

 やけに感情のない口調だった。レイヴィルもまた仲間の身を案じているだろう。しかし言葉とは裏腹に、レイヴィルの口調はとても冷たいものだった。

「じゃあ早く戻ろう!」
「言われなくても分かっている。それよりも本当にドラゴンは、我々の神ではなく悪魔だな」
「どういう、意味だ」

 慧牙はレイヴィルが自分達の神であるドラゴンを憎んでいると言ったことを思い出す。戦いを起こしたのは人間であって、それを神のせいにするというのは責任転嫁のようにも感じられた。ユーリャ族がドラゴンの住処を奪ったのが発端となっているらしいが……。実際にドラゴンである神は、フレア族に島を取り返すよう指示したのだろうか。

 それよりもどうして、神であるドラゴンの住処を人間が奪えたのかも不思議だった。

「ドラゴンは我々に幸福をもたらすものではない。痛みと苦しみしか与えない」

 レイヴィルの独白にも似た言葉に、慧牙はただ聞いていることしかできないでいた。

「俺は殺してやりたいと思うほど程、憎んでいる」

 支えている手が一層強く慧牙の腹を締め付ける。いまだ流れ出る血がポタリと左足に落ちた。
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