未来

やんすけ

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未来

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 8時ちょうどに目が覚める。目覚ましなど必要ない、目が覚めることに男の意志は存在しない。全て決まっていることだ。
 男はベッドから立ち上がり周りを見回した。
 「シャワーでも浴びようか」
 男はシャワー室まで何だか懐かしいようなフワフワした気持ちで向かい服のままシャワーゲートに入ると洗いから乾燥まで全て自動で行われた。
 「腹が減った」
 男はテーブルに座るとテーブルの真ん中が開きそこから皿に乗ったオートミールとスプーンが上がってくる。男は目の前に運ばれたそれを口いっぱいに頬張った。まるで肉に飢えた獣のようにテーブルを散らかしながら、気付いた時には手を使って食べていた。
 男は外出することにした。外は希望に満ちていた。空飛ぶ車に変テコな服を着た人々、そこには昔見た未来予想図がまんま広がっていた。食べ物もすごかった。イチゴ味やぶどう味のオートミールからステーキ味や生姜焼き味のオートミールまで様々な食べ物が並んでいた。まるで宝箱のようだと男は思った。
 「1日ってこんなに短かったか?」
 気づけばもう日が暮れかけていた。男は急いで家に帰るとすぐにシャワーゲートに入り汚れを落とすとオートミールを食べながら、外で食べるべきだったと後悔する。
 時間は20時に差し掛かろうとしていた。すると急激な睡魔に襲われた。男は急いでベッドに潜ると目を瞑り、1日を振り返った。
 「しまった、歯磨きするの忘れてた」   
 男は、そのまま深い眠りに落ちた。
 次に目が覚めたときはいつもの景色だった。お疲れ様です、いかがでしたか、2100年は?と問われ、満面の笑みで頷いた。
 「とてもよかったよ、食事もシャワーも外の世界も、1日がとても短く感じたよ。ただ、歯磨きし忘れたことだけが心残りだね。
だって、2250年には全てできないことだから。」



 
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