桜色のネコ

猫人鳥

文字の大きさ
2 / 13

猫を拾う

しおりを挟む
*瑞樹圭視点です。

 僕はコンビニの夜勤バイトをしている。
 この日もいつもと変わらず仕事をしていた。

「瑞樹君、ゴミ出しよろしく~」

 午前4時、店長にゴミ出しを頼まれコンビニの裏に向かった。
 街灯もないコンビニ裏は、この時間だとほぼ周りが見えないので、懐中電灯で照らしながら進み、ゴミを捨てに行く。

 ん? 地面に何かついてる?
 何かが垂れた跡で濡れているようで、この先の道に点々と続いていっているみたいだ。

 この辺りはあまり治安が良いとは言えない。
 放火犯が垂らしたガソリンの跡とかだったら大変だし、辿ってみるか……何か落ちてる?
 僕が照らした先には黒い塊が落ちていて、その周りにさっきの液体のような物が多く垂れているのが見えた。
 放火犯と鉢合わせという、最悪の状態ではないようで良かったと思う。

 懐中電灯を黒い塊に照らして見ると、それが黒猫だった事が分かった。
 ぐったりと倒れていて、よく見ると足を怪我している。
 さっきから垂れていたのは、この猫の血だったんだ……

「良かった、まだ息してる」

 慌てて駆け寄って確認すると、黒猫はまだ生きていた。
 結構な出血量だけど、怪我をしているのは足だけみたいだし、すぐに手当てをしてあげれば助けられるはずだ。
 
「あれ? 瑞樹君それは?」
「店長すみません、この猫怪我してて」
「猫? ダメだよ、いくら怪我してるからって拾ってきたら。それに野良猫なんてどんな病気を持ってるかも分からないんだよ? お店に入られたら困るよ……」
「あ、すみません……」

 僕が遅いからか、店長が様子を見に来てくれて、店内には入らないようにと少し怒られた。
 でも店長の言ってる事が正しいのも分かってる。
 突然の事で今の僕は冷静じゃなかったし、店内に入る前に止めてもらえて良かった。

「ちょっとここで待ってて」

 そう言って急いで店内に戻っていった店長は、息を切らしながら出てきて、

「……はぁ、とりあえずコレ! キャットフードとか、消毒薬とか入れといたから!」

と、僕の目の前に袋を突き出してくれた。

「人間用の消毒って、猫に使っても大丈夫なのか分からないけど……あと、瑞樹君の鞄ね。これは鞄の中に入れとくよ」
「ありがとうございます」
「今日はもう上がっていいから、早く手当てしてあげてね。こんな時間だから今は無理だろうけど、朝にでもちゃんと病院に連れて行ってあげるといいよ」
「はい、失礼します」

 黒猫を抱えている僕を気遣いながら、鞄を持つのも手伝ってくれて、先に上がらせてもらえる事になった。
 夜中のコンビニの客は少ないと言っても、店長は裏仕事もあるので結構忙しいはずだ。
 それなのにこうして帰らせてくれるし、やっぱり本当に優しい人だと思う。

 僕の家は、コンビニからそう遠くない小さなアパートだ。
 幸いな事にペット禁止じゃないからありがたい。
 少し苦戦しながらも鍵を開け、奥の部屋のベッドの上で、ふわふわのブランケットがクッションになるように猫を寝かせた。

 改めてちゃんと確認すると、足の大きい怪我だけでなく、体全体にかすり傷が多いようにみえる。
 すぐに手当てをしてあげたいんだけど、店長も気にしていた消毒薬って、人間用を猫に使っても大丈夫なのか?
 成分が強くて毒になってしまったりしないかな?

「……わっ!」

 消毒薬についてを調べようと携帯を取り出したとき、目の前が急に光った。
 停電や雷で光るのとは全然違う、白くキラキラとした光だったのは見えたけど、眩しくて目を閉じてしまった。

 でも光ったのは一瞬だったようで、すぐに目を開ける事が出来た。
 何が起きたのかと辺りを見回してみると、僕のベッドの上にはさっきまでいた猫が消えていて、知らない女の人が倒れていた。

 桜みたいな、淡いピンク色の髪の綺麗な女性……と、この人の事も気になるけど、それより猫だ。
 あの猫、どこに行っちゃったんだろう?

 まさかこの人の下敷きになってしまって……この人、足を怪我してる?
 どう見ても猫を下敷きにはしていないし、あの光の後に猫が消えて、この人が現れた……

 ……この人、猫?

 とりあえず怪我の手当てをしないと!
 猫には使っていいか分からなかったけど、人になら問題なく使えるはずなので、店長がくれた消毒や包帯で足の手当てをする。
 あの猫は結構全身にかすり傷が多かったけど、この人は今、服を着ているから分からない。
 流石に服を脱がせる訳にもいかないし、それは起きたら聞いてみるとしよう。
 猫の時の大きい怪我は足だけだったし、きっと大丈夫だ。

 あ、怪我は手当てできるにしても、大事な事を忘れていた。
 この人……キャットフード食べるかな?
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

雪の日に

藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。 親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。 大学卒業を控えた冬。 私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ―― ※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

白椿の咲く日~ひそかな恋、遠い日の思いは

紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに異母姉の稚子(わかこ)と会う。 真由子の母の雪江は、大学教授であり著名な歌人の水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。 婚約者の諒人(りょうと)のことなど、真由子は稚子と色々語り合ううち、庭の白椿の木は真由子がなついていた異母兄、靖之が植えたものだと知る。 白椿の木をめぐっての、ひそかな大人の恋物語です。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

処理中です...