桜色のネコ

猫人鳥

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心配事

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*圭視点です。

 警察もなんとか解決出来たし、ハルさんが嘘を嫌いな理由も聞くことが出来た。
 嘘嫌いの理由については、多分全部を話してくれた訳ではないだろう……
 少し悲しそうな顔をしていたし、嘘に対しての嫌な思い出があるのかもしれない。
 ハルさんが嫌な事はしたくないので、僕はもう二度と嘘をつかないと誓った。

 とりあえず、ハルさんを抱えて部屋まで戻って来た。
 ハルさんは今、黒猫状態なので怪我がない。
 玄関の棚に飛び乗った事で傷口が開いたりして、怪我が悪化していないかが心配だ。

「ハルさん、一旦人の姿に戻って下さい」
「え? どうかしたんですか?」
「足の容態を見ておきたくて。さっき飛び乗ってましたし……奥の部屋は、外から見えるかも知れないのでこっちで」

 ハルさんに洗面所で人の姿に戻ってもらった。
 洗面所なら外から見えたりする心配はない。
 ハルさんが人に戻る時は少し部屋が明るくなるけど、それもここなら気にする必要はないだろう。

 足の包帯を外して怪我の様子を見たけど、出血とかは無く、悪化しているようにも見えなかった。
 確か、自然治癒力が高いみたいな事を言ってたっけ?

 怪我は順調に治っているみたいで安心した。
 でもだからといって、強く足をついたりしたら痛いだろうし、さっきの飛び乗りは痛かったと思う。

「悪化はしていないみたいですけど、もうあんな危ないことをしたらダメですよ。痛みは大丈夫なんですか?」
「全然大丈夫です。そんなにこの足を軸にしてないですし……」

 ハルさんは感情が顔に出やすいのですぐに分かる。
 本当は痛いと思ってるんだろう。
 それでも嘘をつかないんだから、"大丈夫"だというのも嘘ではないという事になってしまう。
 だったら聞き方を変えればいい。

「ハルさん、嘘はダメなんですよね? 本当に痛くないんですか?」
「……多少、痛いです」
「なら、もう無茶はしないで下さいね」
「はい……」

 そもそもこんな怪我、普通はしない。
 やっぱり危ない事とかをしているんだろうか?
 本当は刑事さんが言っていたように、危ない事は全部止めてほしいけど、それは僕が踏み込んではいけない事だと思うので言えない。
 そうやって悩んでるだけで、言いたいことも言えない僕は本当に情けない……

「圭君? どうかしましたか? 大丈夫ですか?」
「あ、いえ……すみません。少し考え事をしていて……えっと、包帯巻き直しておきますね」
「ありがとうございます」

 ハルさんに心配されてしまった……
 僕は無表情とか、感情が無いとか、何を考えているのか分からないとかをよく言われるから、考え事をしていてもいつもなら気にされない。
 でもハルさんが心配してくれたって事は、余程変な顔でもしていたんだろうか?
 僕が心配しているのはハルさんの事なのに……

 あまり考えていてもまたハルさんに心配されてしまうし、何か他の事を考えよう。
 顔を上げると、洗面所の洗う予定で溜めてあった衣服が目に入った。

「そういえば、洗濯……じゃなくて浄化、ありがとうございました」
「いえいえ、これくらいの事しか出来ませんからね。他にも私にやれる事があったら、何でも言って下さいね」

 洗濯じゃなく浄化だからだろうか?
 お店に並んでいる新品の服より綺麗になっているように思う。
 まるでゲームとかで宝物を見つけた時に出る、キラキラしたエフェクトがついているみたいだ。

 ん? 何故か一着だけたたんでおいてあるな。
 コンビニの制服だ。
 これも浄化してくれたのか……
 捨てようと思って除けておいた奴なんだけど。
 
「あっ、それは……」
「何でこれだけたたんであるんですか?」
「えっ、そこですか? ん~、他の衣服の中に下着とかがあったら、私に触られるの嫌かな~って思ったので、他はたたみませんでした」
「それは……僕の配慮が足りず、申し訳ございませんでした」
「いえいえ、圭君が気にしないなら全然いいんです。明日からは全部たたんでおきましょうか?」
「さすがにちょっと恥ずかしいので、たたまなくて大丈夫です」

 特に何も考えずに浄化をお願いしてしまったけど、よく考えたら女性に対して失礼な事をさせてしまっていた。
 今日は反省する事が多い日だ……

「ハルさんはもうお風呂入りました?」
「いえ、私は自分を浄化しているのでお風呂も必要ありません」

 自分も浄化できるのか。
 でもお風呂は汚れを落とすだけじゃなく、疲れをとるためにも入った方がいいと思うんだけど……
 あの怪我のこともあるし、僕が入った方がいいとか言うのも失礼だと思うし……
 色々と難しい……

「僕は帰って来たらお風呂に入って寝る生活をしているので、必要であれば先に入って下さいね?」
「えっ? 圭君は帰ってからご飯を食べないんですか?」
「あ、すみません……ご飯作りますね。いつもこの時間は作らないので忘れていました」
「いえ、私は特にお腹が空いているわけではないので大丈夫ですが、圭君はいつも1日2食生活なんですか? お仕事がお休みの時も?」
「そうですね。バイトの有無で習慣を変えるのもどうかと思いますし、寝る直前に食べるのは体に良くないと思うので、いつも食べないんですよ」
「それも体に良くない気がしますが……」

 僕はいつも、昼に起きた時と夜の出かける前の2回しかご飯は食べない。
 でもハルさんも昨日から僕と同じタイミングで食べているので、今食べてもらっておいた方がいいか?

「ハルさんは僕に合わせなくていいので、お腹が空いたら好きに食べて下さいね。今、作っておきましょうか?」
「いえ、そもそも私は空腹になる事がないので、何日食べなくても基本的には大丈夫なんです」
「そうなんですか……」

 そういえば今までも、お腹空いてるかの確認もしないで作ってから、食べてもらっていた。
 ハルさんから"お腹が空いた"とは言われてはいない。
 もしかしてあまりご飯を食べないで生きてきたんだろうか?
 "何日食べなくても基本的には大丈夫"っていう発言も気になるし……

 本当は痛いのに大丈夫だと言ったり、食事を軽んじていたりする事から考えても、ハルさんはあまり自分を大切にしていないのかもしれない。
 危ない事を止めさせるのは無理でも、食事を食べてもらう事くらいは出来るはずだ。
 これからはご飯を先に作ってしまってから、食べてもらえるように誘導する事にしよう。
 
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