女三人 何でも屋始める

小梅カリカリ

文字の大きさ
6 / 24

初依頼は不法侵入事件 ①

しおりを挟む
 香が見に行くと、木田さんの奥様ともう1人お婆さんかいる。
「はーい、今開けますね。どうかなさったんですか。」
 店舗のドアを開けて尋ねる香。花が休憩室から出て香の側にやってきた。
 2人は中に入ると木田さんの奥様がもう1人の女性を紹介する。
「突然、ごめんなさいね。この方、田中葉月さんていうの。私のお友達で皆さんに依頼の相談をしたいのよ。」
「わかりました、ではこちらへどうぞ。先に弊社のシステムを説明させていただきます。」

 そう言って椅子を進めると2人の対面に座った香。花は、相手を安心させるような柔らかい笑顔になると香の隣に座った。雪が奥から皆にお茶を運んでくる。皆にお茶を配って木田さん達に勧めると、雪は木田さん達の後ろに座り、香達と対面になるようにした。

 まさかの初日からの依頼に驚き少し興奮しているのか、頬が赤くなっている3人。3人で依頼なんて殆んど来ないだろうから、皆で探偵好き仲間のサークルのように、ここで楽しく過ごそうと話していたのだ。
 だがそこは皆30代。今までの経験を活かし、頬が赤くなった以外には表情は変わらなかった。
落ち着いた態度と親しみやすい空気感を出している3人に、木田さんの奥様は嬉しそうに微笑んでいる。

 何も言わない香と花を見て、雪は最初は説明と口パクでサポートする。思わぬ初日からの依頼に焦っているのか考えているのか、笑顔のまま何も言わない香。
 花も最初は驚いていたようだが、笑顔で黙っている香を見て逆に落ち着きを取り戻したようだ。ここは私に任せてくださいとばかりに香に頷くと、2人に説明を始めた。

 花は、守秘義務や【何でも屋】の依頼引き受け条件などが書かれたものを二人に見せる。
「まず田中様のご依頼を私共が受ける事が出来るかどうか確認させて頂く為に、依頼の内容を聞かせて頂いてから返答させて頂く事になります。
 引き受けられるか分からないのなら話せないという事もあると思います。その場合は当方では申し訳ないのですが辞退させていただきます。
 もしお話して頂く場合には、守秘義務は守りますしこちらの誓約書に署名をします。守秘義務に関する説明を読んで頂いて田中様が納得なさった後で、ご依頼内容をお話し下さい。
 依頼内容を伺って私共が依頼を受ける事を決定した場合、料金や日数等を書いた契約書を作成して契約となります。」

 花の話を聞き、条件や守秘義務に関する資料も読んだ2人。田中さんが頷く。
「分かりました。では、依頼をお願いしたいので何があったのか説明します。
 私はこの町内にある一軒家で暮らしています。子供がいなくて夫も他界してしまったので、今は1人暮らしなんです。1週間ほど前に、自宅に誰かが侵入したんです。」
 一瞬言葉に詰まった田中さんだか、木田さんが励ますように手を握って背中をさする。木田さんを見て頷くと話を再開した。
「いつものように家で夕飯の準備をしていたんです。大体18時位かしら。
 家は庭付きで縁側もある家なんですけれど、縁側に接している部屋が居間なんです。隣の台所で夕食を作り終えて、居間の机に並べていたんです。
 そうしたらお友達から電話が来て30分位話した後、居間に戻ったら部屋の中が荒らされていたんです。机の上に並べた食べ物は下に落ちているし、端にあった洗濯物や棚にあった本や小物も落とされて部屋の中に散らばっていて、怖くてすぐ警察を呼んだんです。
 近所の道には防犯カメラが設置されているので、すぐに犯人も見つかると思っていたんです。でも防犯カメラには誰も映っていなかったし、居間や他の場所からも私やお友達以外の指紋は出なかったんです。警察は一応指紋の出たお友達の所在を確認しました。皆自宅にいて、住んでいる場所がここから1時間くらいかかるお友達なので犯行は不可能だろうという事になったんです。」
「カラオケ仲間なのよね。音楽サークルで知り合って時々集まってお茶会もしているんですって。」
 木田さんの説明に頷く田中さん。

「玄関の鍵はかけていましたけど、庭に面した居間の窓は開けっぱなしだったので多分窓から侵入したんだろうと言われました。現金など盗まれた物もなくて、結局警察も戸締りに気を付けるようにとだけ言って帰ってしまったんです。
 防犯カメラは家の前の道路も映しているので、誰かが玄関や庭に侵入したら映っているはずなんですけれど。何もわからなくて、今回こちらの探偵事務所の事を木田さんに教えてもらって相談に来たんです。」

 話を聞いて黙って考えこむ3人。雪は口パクで、私達には無理じゃないかといっている。それを見た香と花も軽く頷いて同意した。
 代表して香が依頼を断ろうとすると、木田さんが3人に言う。
「難しそうな依頼だと思うんだけれど、一度彼女の自宅を訪問して見てくれないかしら。」
 木田さんの言葉に、田中さんも頷いた。
「防犯カメラにも何も映ってないですし、警察も分からなかった事なので解決できなくても良いんです。ただ、別の視点から見て頂いて何か気づいた事でもあればと思って。このまま暮らすのも怖いですから庭にも防犯カメラを付けるつもりなんですけれど、他の方の意見も聞いてみたいんです。お願いします。」

 断ろうとした3人だったが、2人にそう言われると断りにくい。顔を見合わせると香が代表して話す。
「一度3人で相談してから返答をするという事でもよろしいでしょうか。
それでよろしければ、そうですね明日の12時にご連絡させて頂きます。こちらに連絡先のご記入をお願いします。連絡はメールと電話、どちらが宜しいですか。」
 ホッとした顔で答える田中さん。
「電話だと出られないかもしれないので、メールでお願いします。」
「分かりました。ではこちらが【何でも屋】のメールアドレスですので、登録をお願いします。」
「はい、聞いて頂いてありがとうございました。よろしくお願いします。」

 そう言うと、2人は立ち上がって出て行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

疑惑のタッセル

翠月 瑠々奈
恋愛
今、未婚の貴族の令嬢・令息の中で、王国の騎士たちにタッセルを渡すことが流行っていた。 目当ての相手に渡すタッセル。「房飾り」とも呼ばれ、糸や紐を束ねて作られた装飾品。様々な色やデザインで形作られている。 それは、騎士団炎の隊の隊長であるフリージアの剣にもついていた。 でもそれは──?

元恋人が届けた、断りたい縁談

待鳥園子
恋愛
シュトルム辺境伯の末娘ソフィに隣国の帝国第二皇子から届けられた『縁談』の使者は、なんと元恋人のジョサイアだった。 手紙ひとつで別れることになったソフィは、素直になれずジョサイアから逃げ回る。 「私に届けなければ、彼は帝国に帰ることが出来ない」 そう思いようやく書状を受け取ろうと決意したソフィに、ジョサイアは何かを言い掛けて!?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

処理中です...