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母子の気持ちと個性的な父親 ③
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17時過ぎに来た小西さんに説明し契約をする。水曜日の調査結果は小西さんの仕事が終わる18時頃に電話をする事になった。
「すみません。最近新商品の開発で、スマホ類は持ち込みめる場所が限定されているんです。従業員がスマホでレシピを写して持ち出して他の商店に売っちゃったんです。それ以来チェックが厳しくて。
出来ればメールでお願いします。確認次第ご連絡します。水曜日は、娘はいつも7時半頃に家を出ます。」
小西さんは皆にスマホで娘の写真を見せる。
「優しそうで可愛らしいお嬢さんですね。」
「ありがとうございます。でも最近は反抗期なのか全然ですけれど。」
そういって小西さんは苦笑いをしていた。皆で写真を確認する。
「では、水曜日の18時頃にご連絡いたします。」
よろしくお願いしますと言うと小西さんは帰っていった。
その後、木田さんの奥様が【何でも屋】にやってきた。
「こんばんは、木田さん。見守り隊の件ありがとうございました。」
「こんばんは、いいのよ、そんな。私の方こそ小西さんの依頼を引き受けてくれてありがとうございます。無事に何かわかると良いんだけど。
それでね、見守り隊を参加するついでにアジを探すというお話をだったけれど、逆の方が良いんじゃないかって思ったんです。見守り隊の参加をついでにして、アジを探しに来ている事にしたら、急に持ち場を離れて移動しても不審に思う人はいないんじゃないかしら。」
「そうですね、そうさせて貰います。木田さん、良いアイディアありがとうございました。」
「ううん、お役に立てたなら嬉しいです。後、アジ用のご飯を持ってきたんです。これ、アジ用ダイエットキャットフードなんです。
薄めの味で猫はあまり好きじゃないと思うんだけど、アジは大好きで、あげるとお礼を言って食べるんです。野良猫時代の食事に苦労したせいだろうと思うと、可哀想でついお刺身も一緒に上げちゃうんですよ。」
一瞬黙った3人は頷き合った。そうですか、気持ちは分かりますと言いながらアジのご飯を受け取った。
木田さんが帰るのを見送った3人。
「絶対アジに騙されていると思います。」
「アジ、なかなかの策士ね。ま、木田さん達もアジも幸せそうだしね。」
「そうだね、そこがまた凄いよね。アジ。」
3人は、アジにあげたので鯛が消えたカルパッチョを見つめるとくすりと笑いながら、食事の支度をする。
エビチリやおこわ等のご飯と一緒にお酒を少し飲みながら、調査に関しての話し合いをした。
「じゃあ、水曜日は7時待ち合わせという事で。スマホだけあればいいかな。」
「そうですね、7時なら余裕でしょう。スマホとスポドリがいると思います。」
「私はいけないけど、2人とも頑張ってね。一応気を付けてね、人も多いし危なくはないとは思うけれど。
私も職場のせいで勤務終わるまでスマホ見れないのよ。終わり次第すぐに連絡するから。」
「分かった。仕事頑張ってね。じゃあ今日はそろそろ解散しよう。」
3人は【何でも屋】を閉じると帰っていく。皆で小西さんのお嬢さんの悩みの原因が見つかる事を願いながら。
水曜日、朝の7時頃から見守り隊に参加するためにやってきた雪と花。木田さんや、見守り隊の人達に挨拶をして回る。
「おはようございます。鈴木とこちらは菊池です。今日はよろしくお願いします。」
結構人がいるので、適当に色々な人に挨拶をしておく2人。初対面の人が多いので、怪しくないですよアピールをしながら、アジの事を心配そうに話すのも忘れない。
そろそろ登校してくる子供達が来るという事で、皆が移動していく。2人も前もって決めていた待機場所へと向かっていった。脇道は短い距離なのに3本もあったので、その前に待機することにしたのだ。
花は小西家から学校へ向かう初めの脇道付近に立っていた。雪は華とは反対側の道で3本目の脇道の前で学校の近くの方に立っている。2本目の脇道の前には木田さんに立ってもらっていた。
3人とも少し緊張しながら、周辺を見渡している。周りの人達は猫を探していると思っているので、早く見つかると良いですね等と温かい励ましの言葉をかけてくれる。
お礼を言いながら子供達に挨拶をしたり観察をしている。近くにいるのは見守り隊の人だけで、皆さん身元のはっきりとしている人達だった。暫くすると、ターゲットの小西さんのお嬢さんがやってきた。下を向いて早歩き、焦っているような感じだ。
彼女と周囲を警戒して見渡しつつ、明るく笑顔で子供達に挨拶をしている雪と花。
まず、花が近くの脇道から人が出て来るのに気が付いた。普段着姿の普通の30代くらいの男性だ。だが彼は歩きながらも、ちらちらと小西さんのお嬢さんを見ている。
花はすぐに雪のスマホを鳴らして周囲の人達から少し離れると、男性の外見と彼がいる位置を伝え、男性の視線の確認をするように言って電話を切った。
2人とも男の写真をスマホに収めると、周囲への観察は続けつつも男性の事も観察する。男性は小西さんのお嬢さんが学校へ入ると、少し戻って雪が立っているわき道に入った。花はすぐに雪のもとへたどり着くと、通学路の方は木田さんに任せて自分達は男性の後を追うことにした。
2人は一緒に、少し前の方にいる男の後ろをついていく。ゆっくりと歩きつつ男との距離を保つ。念の為すぐに通報できるように、2人ともスマホは持ったままだ。男が角を曲がったので、2人も角を曲がろうとした。
すると、先に曲がった雪が慌てて花を掴んで後ろに戻った。2人がそーっと角からのぞくと、男がマンホールの蓋を持ち上げて下に降りようとしていた。とっさに雪は持っていたスマホで写真を撮った。余りにも吃驚した2人は取りあえず見守り隊へ戻り、時間になったからと言ってアジのご飯を木田さんに返して、皆に挨拶をして戻っていった。
2人は用事がすんだら、【何でも屋】に集合することにした。
雪は香が仕事終わりにすぐにみれるように、【何でも屋】集合する事と晩御飯あるよとメールする。
夕方、先に【何でも屋】で合流した雪と花は興奮しながら話していた。
「凄いですよ、推理小説か刑事のドラマみたいです。怪しい男がマンホールの蓋を開けて逃げていくなんて。
マンホールの蓋って確か持ち上がらないんじゃないんでしたっけ。重くして簡単に持ち上がらない様になってると思っていたんですけれど。でもテレビか本の情報だから違ったのかな。
あの人、軽く片手で持ってましたよね。マンホールの蓋に何か細工をしたのか、物凄い力持ちなのかどっちかです。マンホールの蓋を改造とかまでしてるって、物凄くやばい奴じゃないですか。この話、下手したらそのまま警察行きの話ですよ。」
「そうだよね、小西さんに男を確認してもらったらそのまま一緒に警察に行ってお嬢さんを保護してもらわないといけないかもよ。あの男、娘さんの事チラチラとみてたでしょ、見た?」
「見ました。気持ち悪い顔でしたよ。マンホール男ですからね、普通の変態だってそんなことしませんよ。多分。ある意味凄い個性ですよね。新聞に載るんですよ、マンホールの変態、逮捕ってね。」
「そうだね、いい命名だと思うよ。でもあのマンホール男、最初はどこから入ってきてるんだろう。逃走経路も確保しているなんて知能犯だね。ゾッとするよ。」
あ、ねえ今気が付いたんだけど、私達お嬢さんの名前知らなくない。」
「・・・・・・。 そういえば、依頼の内容の重さですっかり忘れていましたよ。
小西さんが娘さんの名前を呼ぶのを待つしかないですね。」
そういうと興奮している2人は、ラスクをバリバリ勢いよく食べる。商店街のパン屋さんで買ってきたのだ。暫く食べると落ち着いて香の事を思いだした雪が、自分達からラスクを守るためと美味しさを保つ為にジップロックに入れる。
スマホで男の写真見て唸っている花。
「それにしても誰なんでしょうね、この男。顔写真が取れて良かったです。」
「うん、まさか本当に怪しい男が現れるとは思わなかった。娘さんはこの男を知っているのかな。
お母さんに言いにくいのかもしれないけれど、知っているなら話してもらった方が良いと思うんだよね。危ない奴かもしれないし。」
「そうですよね、この先は親子で話し合ってもらえれば良いのかなって思います。
でも、この男毎日見に来ているわけじゃないんですよね。さすがに毎日見に来ていたら誰かが気が付きそうじゃないですか。中学生の通学路で成人男性が1人って目立ちそうですけれど、そうでもないんでしょうか。」
「どうなんだろう。見ている人はいても平凡で目立つ容貌じゃないし、記憶に残っていないのかもしれないね。」
「なるほど、見た目も普通で服装もスーツじゃないから、近所の人が移動しているくらいにしか思わないかもしれません。同じ時間帯というのも逆に、毎日、ここを通って行く用事がある人なんだと思って、気にしなくなっているというのもありそうですね。」
「この男の場合、小西さんの娘さんの行く時間帯に現れているけど、立っているんじゃなくて歩いているから注目されないのかも。
よく言うじゃない。明らかに怪しい人より一般人に紛れ込んでいる危険な人間を見つけるのは難しいって。そういう感じだよね。」
「そうですね、私も娘さんを見ている事に気が付いていない状態なら、別に普通の人かなって思います。」
「怖いよねえ。今回の依頼がまさかこんな結果になるなんて思わなかった。」
「はい、あの男がストーカーだったら怖いですね。」
「そろそろ、小西との約束の時間だね。メールしておくね。
緊急だし、留守電に伝言も残しておこう。男の写真も添付して確認してもらわないと。まだ仕事中かな。心配だから早めに見て貰えると良いんだけど。」
雪はメールに心配だからメールを見たら連絡が欲しい事も書いておく。そして2人は、ご飯を食べながら香が来るのを待っていた。
夜8時過ぎに香が【何でも屋】に到着した。
「ごめんねー、お待たせしました。今日は2人ともお疲れ様でした。」
「香の方こそ、お疲れ様。会社帰りの疲れている所に来てくれてありがとう。」
「お疲れ様でした。香さん、まずはご飯をどうぞ。」
そういうと、温め直したご飯を机の上に並べていく。
「ありがとう、お腹すいちゃった。今日2人どうだったかなって、職場でも気になっちゃった。」
「香仕事中だったから内容は知らせなかったんだ。説明すると長くなりそうだしね。」
「うん、そうよね。それで結果はどうだったの。」
雪はスマホで撮った男の写真を見せると、今日あった事の説明を始めた。
男が現れるまで説明すると、今度は花が最後のマンホールの部分を話す。
「私と雪さんが見ていると、その男が小西さんのお嬢さんの事をチラチラ見ながら、後を付けて歩いて行ったんです。娘さんが学校に入ると男は私のいた脇道に入っていったので、私たち二人で距離を開けて男の後をつけました。男は角を曲がるとマンホールの蓋を片手で持ち上げて、マンホールの中に降りて行ったんです。」
雪がそこでマンホールの蓋を片手に持って体は殆どマンホールの中にある男の写真を見せた。
さっきの2人と同様に興奮する香。
「凄い、マンホールの蓋を片手で持っているじゃないの。あんなの普通持ち上げる事だって出来ないはずよ。この男一体どうなっているのかしら。」
花も大きくうなずいた。
「そうでしょう、私もそう思います。片手で持つなんて普通無理です。
もしかしたら、マンホールの蓋が偽物とすり替わっているとかじゃないですか。重さを軽くしたものと。それなら片手で持ち上げられたのは納得ですよ。」
「確かにね、それしか思い浮かばないわ。そこまでするって事は頭は良いんだろうけれど、そんなことに頭を使ってって感じよね」
「うん。小西さんからまだ返信が来ないけれど忙しいのかな。2時間位たっているんだよね。なんだか心配になってきた。
小西さん明日の学校は娘さん休ませて警察に行くと思うんだよね。そうなったら、私達も警察に呼ばれるかもしれないね。最初に私が行ってくるよ。男の写真私のスマホに入っているし、マンホールの蓋の所もね。木田さんも警察に話を聞きたいって言われそうだから誘ってみるかな。花達は呼ばれてからでも大丈夫だと思う。」
「そうね、一気にゾロゾロ言っても待たされるだけであまり意味なさそう。証言とかはどうなんだろ。私達は証拠品の写真を提出するだけなのかな。
小西さんから連絡がないのが気になるわね、大丈夫かしら。仕事で見れてないだけなのかもしれないけれど、連絡が来ないとなんだか不安になっちゃうわね。」
「そうですよね、どうしたんでしょうか。木田さんの奥様に行って一緒に小西さんの家を訪ねてみますか。」
ご飯も食べ終わった香。机の上を片付けながら頷いた。
「そうしましょう、何もなければそのまま今日はもう帰ればいいわ。」
3人揃って木田さんの家のブザーを推す。木田さんの奥様が出てきた。
「はーい、こんばんは。今日の朝はお疲れ様でした。」
「こんばんは。遅くにすみません。
私達今朝の報告を小西さんにメールで連絡したんですけれど、返信が来なくて心配しているんです。夕方の6時頃にメールをしたんですけれど。何かあったのかもしれないと思ったら心配になってしまって。ご自宅に様子を見に行こうと思っているんです。」
「まあ、そうだったの。それなら私達も一緒に行きますよ。何かあったら危険ですからね。3人だけだと私達も心配になってしまうから。」
「ありがとうございます。確か管理人が常駐しているマンションでしたよね。」
「ええ、一応知らない人間は入れない様になっていると聞いているわ。取りあえず行ってみましょう。」
木田さんの旦那さんも出てきて、皆でマンションへ足早に歩いていく。皆険しい表情をしている。その時通りの向こうから、木田さんの名前を呼びながら走ってくる女性がいた。
「暗くてよく見えないわね。誰かしら。」
皆で立ち止まって待っていると、心配していた小西さんだった。
「すみません。最近新商品の開発で、スマホ類は持ち込みめる場所が限定されているんです。従業員がスマホでレシピを写して持ち出して他の商店に売っちゃったんです。それ以来チェックが厳しくて。
出来ればメールでお願いします。確認次第ご連絡します。水曜日は、娘はいつも7時半頃に家を出ます。」
小西さんは皆にスマホで娘の写真を見せる。
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「ありがとうございます。でも最近は反抗期なのか全然ですけれど。」
そういって小西さんは苦笑いをしていた。皆で写真を確認する。
「では、水曜日の18時頃にご連絡いたします。」
よろしくお願いしますと言うと小西さんは帰っていった。
その後、木田さんの奥様が【何でも屋】にやってきた。
「こんばんは、木田さん。見守り隊の件ありがとうございました。」
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それでね、見守り隊を参加するついでにアジを探すというお話をだったけれど、逆の方が良いんじゃないかって思ったんです。見守り隊の参加をついでにして、アジを探しに来ている事にしたら、急に持ち場を離れて移動しても不審に思う人はいないんじゃないかしら。」
「そうですね、そうさせて貰います。木田さん、良いアイディアありがとうございました。」
「ううん、お役に立てたなら嬉しいです。後、アジ用のご飯を持ってきたんです。これ、アジ用ダイエットキャットフードなんです。
薄めの味で猫はあまり好きじゃないと思うんだけど、アジは大好きで、あげるとお礼を言って食べるんです。野良猫時代の食事に苦労したせいだろうと思うと、可哀想でついお刺身も一緒に上げちゃうんですよ。」
一瞬黙った3人は頷き合った。そうですか、気持ちは分かりますと言いながらアジのご飯を受け取った。
木田さんが帰るのを見送った3人。
「絶対アジに騙されていると思います。」
「アジ、なかなかの策士ね。ま、木田さん達もアジも幸せそうだしね。」
「そうだね、そこがまた凄いよね。アジ。」
3人は、アジにあげたので鯛が消えたカルパッチョを見つめるとくすりと笑いながら、食事の支度をする。
エビチリやおこわ等のご飯と一緒にお酒を少し飲みながら、調査に関しての話し合いをした。
「じゃあ、水曜日は7時待ち合わせという事で。スマホだけあればいいかな。」
「そうですね、7時なら余裕でしょう。スマホとスポドリがいると思います。」
「私はいけないけど、2人とも頑張ってね。一応気を付けてね、人も多いし危なくはないとは思うけれど。
私も職場のせいで勤務終わるまでスマホ見れないのよ。終わり次第すぐに連絡するから。」
「分かった。仕事頑張ってね。じゃあ今日はそろそろ解散しよう。」
3人は【何でも屋】を閉じると帰っていく。皆で小西さんのお嬢さんの悩みの原因が見つかる事を願いながら。
水曜日、朝の7時頃から見守り隊に参加するためにやってきた雪と花。木田さんや、見守り隊の人達に挨拶をして回る。
「おはようございます。鈴木とこちらは菊池です。今日はよろしくお願いします。」
結構人がいるので、適当に色々な人に挨拶をしておく2人。初対面の人が多いので、怪しくないですよアピールをしながら、アジの事を心配そうに話すのも忘れない。
そろそろ登校してくる子供達が来るという事で、皆が移動していく。2人も前もって決めていた待機場所へと向かっていった。脇道は短い距離なのに3本もあったので、その前に待機することにしたのだ。
花は小西家から学校へ向かう初めの脇道付近に立っていた。雪は華とは反対側の道で3本目の脇道の前で学校の近くの方に立っている。2本目の脇道の前には木田さんに立ってもらっていた。
3人とも少し緊張しながら、周辺を見渡している。周りの人達は猫を探していると思っているので、早く見つかると良いですね等と温かい励ましの言葉をかけてくれる。
お礼を言いながら子供達に挨拶をしたり観察をしている。近くにいるのは見守り隊の人だけで、皆さん身元のはっきりとしている人達だった。暫くすると、ターゲットの小西さんのお嬢さんがやってきた。下を向いて早歩き、焦っているような感じだ。
彼女と周囲を警戒して見渡しつつ、明るく笑顔で子供達に挨拶をしている雪と花。
まず、花が近くの脇道から人が出て来るのに気が付いた。普段着姿の普通の30代くらいの男性だ。だが彼は歩きながらも、ちらちらと小西さんのお嬢さんを見ている。
花はすぐに雪のスマホを鳴らして周囲の人達から少し離れると、男性の外見と彼がいる位置を伝え、男性の視線の確認をするように言って電話を切った。
2人とも男の写真をスマホに収めると、周囲への観察は続けつつも男性の事も観察する。男性は小西さんのお嬢さんが学校へ入ると、少し戻って雪が立っているわき道に入った。花はすぐに雪のもとへたどり着くと、通学路の方は木田さんに任せて自分達は男性の後を追うことにした。
2人は一緒に、少し前の方にいる男の後ろをついていく。ゆっくりと歩きつつ男との距離を保つ。念の為すぐに通報できるように、2人ともスマホは持ったままだ。男が角を曲がったので、2人も角を曲がろうとした。
すると、先に曲がった雪が慌てて花を掴んで後ろに戻った。2人がそーっと角からのぞくと、男がマンホールの蓋を持ち上げて下に降りようとしていた。とっさに雪は持っていたスマホで写真を撮った。余りにも吃驚した2人は取りあえず見守り隊へ戻り、時間になったからと言ってアジのご飯を木田さんに返して、皆に挨拶をして戻っていった。
2人は用事がすんだら、【何でも屋】に集合することにした。
雪は香が仕事終わりにすぐにみれるように、【何でも屋】集合する事と晩御飯あるよとメールする。
夕方、先に【何でも屋】で合流した雪と花は興奮しながら話していた。
「凄いですよ、推理小説か刑事のドラマみたいです。怪しい男がマンホールの蓋を開けて逃げていくなんて。
マンホールの蓋って確か持ち上がらないんじゃないんでしたっけ。重くして簡単に持ち上がらない様になってると思っていたんですけれど。でもテレビか本の情報だから違ったのかな。
あの人、軽く片手で持ってましたよね。マンホールの蓋に何か細工をしたのか、物凄い力持ちなのかどっちかです。マンホールの蓋を改造とかまでしてるって、物凄くやばい奴じゃないですか。この話、下手したらそのまま警察行きの話ですよ。」
「そうだよね、小西さんに男を確認してもらったらそのまま一緒に警察に行ってお嬢さんを保護してもらわないといけないかもよ。あの男、娘さんの事チラチラとみてたでしょ、見た?」
「見ました。気持ち悪い顔でしたよ。マンホール男ですからね、普通の変態だってそんなことしませんよ。多分。ある意味凄い個性ですよね。新聞に載るんですよ、マンホールの変態、逮捕ってね。」
「そうだね、いい命名だと思うよ。でもあのマンホール男、最初はどこから入ってきてるんだろう。逃走経路も確保しているなんて知能犯だね。ゾッとするよ。」
あ、ねえ今気が付いたんだけど、私達お嬢さんの名前知らなくない。」
「・・・・・・。 そういえば、依頼の内容の重さですっかり忘れていましたよ。
小西さんが娘さんの名前を呼ぶのを待つしかないですね。」
そういうと興奮している2人は、ラスクをバリバリ勢いよく食べる。商店街のパン屋さんで買ってきたのだ。暫く食べると落ち着いて香の事を思いだした雪が、自分達からラスクを守るためと美味しさを保つ為にジップロックに入れる。
スマホで男の写真見て唸っている花。
「それにしても誰なんでしょうね、この男。顔写真が取れて良かったです。」
「うん、まさか本当に怪しい男が現れるとは思わなかった。娘さんはこの男を知っているのかな。
お母さんに言いにくいのかもしれないけれど、知っているなら話してもらった方が良いと思うんだよね。危ない奴かもしれないし。」
「そうですよね、この先は親子で話し合ってもらえれば良いのかなって思います。
でも、この男毎日見に来ているわけじゃないんですよね。さすがに毎日見に来ていたら誰かが気が付きそうじゃないですか。中学生の通学路で成人男性が1人って目立ちそうですけれど、そうでもないんでしょうか。」
「どうなんだろう。見ている人はいても平凡で目立つ容貌じゃないし、記憶に残っていないのかもしれないね。」
「なるほど、見た目も普通で服装もスーツじゃないから、近所の人が移動しているくらいにしか思わないかもしれません。同じ時間帯というのも逆に、毎日、ここを通って行く用事がある人なんだと思って、気にしなくなっているというのもありそうですね。」
「この男の場合、小西さんの娘さんの行く時間帯に現れているけど、立っているんじゃなくて歩いているから注目されないのかも。
よく言うじゃない。明らかに怪しい人より一般人に紛れ込んでいる危険な人間を見つけるのは難しいって。そういう感じだよね。」
「そうですね、私も娘さんを見ている事に気が付いていない状態なら、別に普通の人かなって思います。」
「怖いよねえ。今回の依頼がまさかこんな結果になるなんて思わなかった。」
「はい、あの男がストーカーだったら怖いですね。」
「そろそろ、小西との約束の時間だね。メールしておくね。
緊急だし、留守電に伝言も残しておこう。男の写真も添付して確認してもらわないと。まだ仕事中かな。心配だから早めに見て貰えると良いんだけど。」
雪はメールに心配だからメールを見たら連絡が欲しい事も書いておく。そして2人は、ご飯を食べながら香が来るのを待っていた。
夜8時過ぎに香が【何でも屋】に到着した。
「ごめんねー、お待たせしました。今日は2人ともお疲れ様でした。」
「香の方こそ、お疲れ様。会社帰りの疲れている所に来てくれてありがとう。」
「お疲れ様でした。香さん、まずはご飯をどうぞ。」
そういうと、温め直したご飯を机の上に並べていく。
「ありがとう、お腹すいちゃった。今日2人どうだったかなって、職場でも気になっちゃった。」
「香仕事中だったから内容は知らせなかったんだ。説明すると長くなりそうだしね。」
「うん、そうよね。それで結果はどうだったの。」
雪はスマホで撮った男の写真を見せると、今日あった事の説明を始めた。
男が現れるまで説明すると、今度は花が最後のマンホールの部分を話す。
「私と雪さんが見ていると、その男が小西さんのお嬢さんの事をチラチラ見ながら、後を付けて歩いて行ったんです。娘さんが学校に入ると男は私のいた脇道に入っていったので、私たち二人で距離を開けて男の後をつけました。男は角を曲がるとマンホールの蓋を片手で持ち上げて、マンホールの中に降りて行ったんです。」
雪がそこでマンホールの蓋を片手に持って体は殆どマンホールの中にある男の写真を見せた。
さっきの2人と同様に興奮する香。
「凄い、マンホールの蓋を片手で持っているじゃないの。あんなの普通持ち上げる事だって出来ないはずよ。この男一体どうなっているのかしら。」
花も大きくうなずいた。
「そうでしょう、私もそう思います。片手で持つなんて普通無理です。
もしかしたら、マンホールの蓋が偽物とすり替わっているとかじゃないですか。重さを軽くしたものと。それなら片手で持ち上げられたのは納得ですよ。」
「確かにね、それしか思い浮かばないわ。そこまでするって事は頭は良いんだろうけれど、そんなことに頭を使ってって感じよね」
「うん。小西さんからまだ返信が来ないけれど忙しいのかな。2時間位たっているんだよね。なんだか心配になってきた。
小西さん明日の学校は娘さん休ませて警察に行くと思うんだよね。そうなったら、私達も警察に呼ばれるかもしれないね。最初に私が行ってくるよ。男の写真私のスマホに入っているし、マンホールの蓋の所もね。木田さんも警察に話を聞きたいって言われそうだから誘ってみるかな。花達は呼ばれてからでも大丈夫だと思う。」
「そうね、一気にゾロゾロ言っても待たされるだけであまり意味なさそう。証言とかはどうなんだろ。私達は証拠品の写真を提出するだけなのかな。
小西さんから連絡がないのが気になるわね、大丈夫かしら。仕事で見れてないだけなのかもしれないけれど、連絡が来ないとなんだか不安になっちゃうわね。」
「そうですよね、どうしたんでしょうか。木田さんの奥様に行って一緒に小西さんの家を訪ねてみますか。」
ご飯も食べ終わった香。机の上を片付けながら頷いた。
「そうしましょう、何もなければそのまま今日はもう帰ればいいわ。」
3人揃って木田さんの家のブザーを推す。木田さんの奥様が出てきた。
「はーい、こんばんは。今日の朝はお疲れ様でした。」
「こんばんは。遅くにすみません。
私達今朝の報告を小西さんにメールで連絡したんですけれど、返信が来なくて心配しているんです。夕方の6時頃にメールをしたんですけれど。何かあったのかもしれないと思ったら心配になってしまって。ご自宅に様子を見に行こうと思っているんです。」
「まあ、そうだったの。それなら私達も一緒に行きますよ。何かあったら危険ですからね。3人だけだと私達も心配になってしまうから。」
「ありがとうございます。確か管理人が常駐しているマンションでしたよね。」
「ええ、一応知らない人間は入れない様になっていると聞いているわ。取りあえず行ってみましょう。」
木田さんの旦那さんも出てきて、皆でマンションへ足早に歩いていく。皆険しい表情をしている。その時通りの向こうから、木田さんの名前を呼びながら走ってくる女性がいた。
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