異世界行ったら人外と友達になった

小梅カリカリ

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新米竜騎士ドーン

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 瑠璃たちが帰った後、エルフ竜騎士団団長達と竜族代表達との話し合いが始まった。
「まず、その場にいたアレクから説明させます。訂正点や指摘点があれば、燕殿補足をお願いします。」

 緊張した面持ちのアレクが礼をすると話し出す。隣には燕が並ぶ。
「竜騎士のアレクです。よろしくお願いします。
 友人のカールから異世界人の瑠璃様が、竜を見たい、竜に乗ってみたいと言っていて、竜に乗るのは無理だろうけど会う事は出来るかと聞かれました。燕さんに聞いてみたら、会ってもらえるという事で、私と燕さんで瑠璃様達を出迎えました。
 そして今朝、友人のエルフ族カールと骸骨族のレオ様とマリー様に異世界人の瑠璃様が私に会いに来ました。

 瑠璃様はとても喜んでいらして燕さんを見るなり褒めまくっていました。すると燕さんが乗せてあげると言い瑠璃様を背中に乗せたんです。瑠璃様はそれはもう大喜びしてはしゃいでました。
 竜舎を一回りして降りて皆で話していたところ、海君が一直線に走ってきて瑠璃様を頭から首の部分まで丸呑みしました。すぐに燕さんが引き離し地面に押さえつけて謝罪させました。燕さんが海君を抑え込んでいたので安全を確保したと判断して、私は急いで団長達に知らせに行きました。以上です。」
 燕も頷いてアレクの話に同意した。
「特に補足することはありません。」

 団長が手を上げて質問した。
「個人的な興味になるかもしれないが、燕殿に質問があります。
普通竜族の方は、あまり他種族を乗せたりしませんよね。瑠璃様に乗りたいと言われたから乗せたんですか?」
「いえ、乗りたいと言われた所で、竜族は誇り高いので乗せません。そんな失礼なことを言ったら蹴っ飛ばして踏みつけてこちらが相手に乗ってやります。
 乗せるのは自分が納得した相手、好意を持った相手、友人や家族等の親しい相手です。

 瑠璃さんの事はアレクさんから聞いて知っていましたし、乗りたいと言っていたのも聞いていました。実際に会ってみると聞いていたように明るく優しい女性で、1人で家族や友人とも離れてとても辛い思いをしているでしょうに、その事を出さずに前向きに頑張っている。何か彼女が喜ぶことをしたいと思ったんです。
 それに、キラキラした目で美しいと褒めてくれて、とてもいい子だなと思いました。」
「(褒められて瑠璃様の事が気に入ったからか乗せたという事だな。)
 なるほど、ありがとうございました。皆様何か質問はございますか。無いようですね。アレク、燕殿ありがとうございました。」
 団長は皆に聞こえない様に副団長に呟いた後、アレク達にお礼を言って話を進める。話し終えたアレクと燕は一礼して後ろに下がった。

「では次は、海殿がこちらに来る前の状態をエルフ竜騎士の竜舎管理長ローンと【ツリー】の竜族管理者コン殿に説明してもらいます。
 コン殿。【ツリー】に帰ってきた時の海殿の状態と瑠璃様の所に行くまでを教えてください。」
「はい、竜族の管理をしているコンです。よろしくお願いします。

 海が【ツリー】の竜舎の入口についた時、息は乱れ涎が垂れて戦闘時のように目が細く鋭くなっていました。
 話しかけても、返事も出来ず唸り声のような声が聞こえるだけ、一緒にいるはずの竜騎士ドーンはいませんでした。

 皆で集まって海の様子を見て毒か何かと思った時に、海のお腹からグルグル音がしたので、もしや空腹から来る飢餓状態ではないかと思いました。すぐに水と食べ物を用意させるため、1人に水を1人に食堂から食べ物を取りに行くように指示しました。
 残った2人で海を抑えていたのですが、いきなり凄い力で我々を振り払い瑠璃様に向かって走り出しました。私達もすぐ後を追いアレクさん達に注意を知らせましたが、一瞬で瑠璃様の頭を丸呑みしました。
 その後は、先程アレクさんがおっしゃた通りです。」

「ありがとうございます。コン殿。 では次にローンお願いします。」
「はい、ローンです。よろしくお願いします。

 今回ドーンと海君は非常時の連絡員として【ラト】を出発して【ロウキ】に到着後一度休憩を取って食事と飲み物を取り最後【ツリー】まで一気に駆け抜けていくという訓練を行っていました。
 【ロウキ】のエルフにドーンと海君の休憩と【ロウキ】での様子について確認したところ、ドーンは用意してあった飲み水と食料を与えずに出発していたことが判明しました。
 ドーンと海君のペアは通常より少し時間がかかっていた為、遅れを取り戻そうとしたドーンが無理に海君を走らせたとの事です。
 偶々それを見ていた竜が2人を止めようとしたが失敗した為、パートナーのエルフと一緒に携帯食料を持って後を追ってきていました。」
「そうか、ローンさん説明ありがとうございました。」

 話を聞いていた竜族が、一斉にドーンを睨んで殺気をおくる。耐え切れずにドーンは失神した。海は人の頭を丸呑みしてしまったショックからまだ立ち直れておらず、ずっとうつむいている。

 ドーンが気絶したので2人の話は最後にして、対応策を話すことにする。

「今回の件は、ドーンの責任です。竜族の方、海殿には本当に申し訳ございません。」
 エルフが全員立ち上がって謝罪する。怒りで言葉が出ないのか無言の竜族。

 炎が気持ちを抑えるように深く深呼吸をした。
「今回の事は今迄の竜族とエルフの関係を壊すかもしれない程の事だと思います。
 この後どうなるかは、上の者達の協議しだいでしょうね。エルフ竜騎士団が続くと仮定して、今回の件に対する対応策を検討しましょう。
 それから瑠璃様の件は竜族との問題ですので、エルフ竜騎士団は係り合いにはならないように。良いですね。」

 エルフ達を見ると、全員頷いて同意したのを確認した炎。
「では今回の対応策に関して話し合いましょうか。
 訓練全般の見直し、管理体制、管理者、エルフと竜族の互いの理解を確認するための講習も必要でしょう。他にも提案があればどんどん出していって下さい。
 このような事を起こさない為、本音で話し合っていきましょう。」
 その時炎と一緒に来ていた円が手を上げ話し出した。
「その前に瑠璃様の事に関して重大な問題があります。瑠璃様は最近来たばかりの異世界人です。危険に巻き込まれる可能性が非常に高いと思われます。ご本人はお望みではないかもしれませんが、我々も警護をするべきかと思います。側にはエルフのカール様やレオ様とマリー様がいらっしゃいますので、我々は万が一に備えて遠くから見守る護衛をおいた方が良いのではないでしょうか。」
 それを聞いて拍手をする竜達。炎はエルフに確認する。
「エルフの方達は、そうですか断られたと。では、我々が遠くから見守り危険なものが近づいたら、瑠璃様が巻き込まれる前に排除しましょう。円、頼んだぞ。瑠璃様との信頼回復に努めるのだ。」
「はい、お任せください。」
 そういうと、円は出て行った。その音でドーンが目を覚ます。
「目覚めたか、ドーン。では最後にお前と海の話を聞こう。」

 ドーンと海が話し出す。
「私は、【ラト】から【ロウキ】へドーンを乗せて走っていました。その際ドーンの指示した道が私には走りにくい沼地や森の中だった為に思ったより時間がかかったんです。
 ドーンは焦っていました。水を一杯飲んで10分位休憩した時、すぐ出発すると言いだしたんです。私はまだ疲労が回復していないし、体力回復の為にも食事もしたいから無理だと言ったのです。
 だが、ドーンにこれはその状態でも走れるようになるための訓練だからと言われ、パートナーだったドーンを信じた私は【ツリー】まで走り続けました。
 後半からは気力のみで走っていたのかよく覚えていません。気がついたら瑠璃様の頭を丸呑みし慌てて放そうと思った時には燕さんに地面に押さえつけられていました。
 本当に申し訳ありません。燕さん間に入って下さってありがとうございました。」
「思っていたより時間がかかっていた事で焦ってしまって、とにかく時間を取り戻したい。海を走らせればいいとしか思っていませんでした。」

「そうか、ドーン。先程今回の件についてお前への通達が来た。
今回の責任はすべてドーンにある。海殿には責任は一切ない。よってお前は竜騎士団を首になり、この件は【ツリー】から【ラト】【ロウキ】に村、集落全てに通知する。お前がこの先どうなろうとも、【ツリー】もエルフも関与しない。」
 そういってエルフの団長は通達書をドーンに手渡した。ドーンの荷物を渡す。
「このまま、【ツリー】を出て行け。【ツリー】の街中を歩けば、お前のした事をエルフの民がどう思っているのかよく分かるだろう。」
「お前は海を飢餓状態にまで追い込み、竜族の誇りと信頼を失墜させた。竜に会うたびに、お前はその事を思い知るだろうな。」
 炎がそういうと、ドーンは卑屈な表情をすると、皆を睨みながら出て行った。

 荷物をもってドーンが街を歩くと、今回の事を知ったエルフ達が出てきて、怒りの表情でドーンを睨みドーンを責める言葉を叫びだす。皆の声に恐怖を感じたのか真っ青な顔になったドーン。ドーンの顔のすぐそばで火が燃え上がり髪の毛が燃えると、ついに泣きだし喚きながら走って【ツリー】を出て行った。

 その状況を見ていた選民思想者達。
「ドーンが街を出て行きました。これから勧誘します。」
「ああ、行くところもない。自分の非も認められず逆恨みする奴だ。簡単にやって来るさ。」
「エルフの戦力は良いですからね。我々の為にせいぜい働いてもらいましょう。」
 選民思想者達はドーンを勧誘し拠点へと連れて行った。

 その状況を見ていた監視者達。
「ドーンが差別主義者達の組織に加わりました。狙い通りですね。拠点の1つを確認したので、近くの村の潜入員に監視させます。」
「慎重にな、我々の顔は知られていないが。しかし、ドーンは元々選民意識があったんだろうな。自意識も高かったし、そうでなければ、種族が違っても相棒をこき使うなどできないよな。」
「そうですね。今回の事が無くてもいずれ何か問題を起こしていたかもしれませんね。
 問題と言えば、来週からの私の休暇届まだ受理されてないようですが、大丈夫ですよね。」
「大丈夫だとも、安心して私に任せてくれ。では、後は頼んだぞ。」
「本当ですね、休めなかったら・・・・・・。 」

 ドーンは竜騎士団を首になり家族友人からも縁を切られたが、新しく差別主義者達の仲間が出来た。
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