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しおりを挟む「葵・・・」
もう一度呼ばれて正気にもどった。
「武。どうしたの?どうしてここが分かったの?」
まさか、また彼は私を・・・。
「ある人に教えてもらって。葵に話したいことがあるんだ。
ちょっと時間もらえるかな」
怖い怖い怖い怖い怖い。
私の中でぐるぐる回る感情。
足の先からしびれるような冷たくてこおりつくような感じがする。
返事も逃げることもできない。
私の様子に気づいてか、彼が近づいてきた。
「大丈夫?顔色悪いけど・・・・」
そういって私にさわろうとした瞬間。
「お前、なんでここにいるんだ!葵に近づくな!」
後ろから私をかばうように叫んだ。
ああ、リョウ来てくれたんだ。リョウの姿を見たら安心したのか気を失ってしまった。
夢を見ていた。
誰かに追いかけられる夢。
怖くて怖くて泣きながら逃げている自分。
誰かが私に言う。
「逃げても何も解決しないよ。辛いだろうけどちゃんと向き合うんだ」
その声は私に安心をもたらした。
そして立ち止まった。
リョウの顔が見える。
「葵、大丈夫?気がついた?」
「ここは?」
「あなたの会社の医務室。そこの女に案内してもらったのよ」
そういってもえを指した。
「そこの女って・・・。ちょっと、高田もえって名前があるんですけど」
なんだか、仲が悪い?
「喧嘩しないでね。二人とも大事な友達なんだから」
そう言いながら起き上がる。
起き上がると武の姿が見えた。
「あ・・・」
「ごめん、僕のせいだね」
とても申し訳なさそうに頭を下げて言った。
こんな表情する人だったっけ?
ううん、彼は人に謝ったことがなかった。
少なくとも私と付き合っていたときは。
「大体、なんであんたがこんなところにいるのよ。外国に行ってたんじゃないの?」
「アメリカの会社に無理やり入らされていた。
だけど、あんな状態で働けるわけないし。
しばらくしたら日本に帰ってきてたんだ。日本に帰ってきても何もすることなく、
ただただ君を追い求めていた。君を探していたんだ」
その言葉に再び恐怖がよみがえる。
「だけど、これじゃあだめだって、一年たってようやく分かって。
分かったものの自分が何をするべきか分からなくってそんなときに
君の夢の話を思い出したんだ」
私の夢?
もしかして・・・・。
「そう、呆然と君の夢の話を思い出してる時に海外派遣のポスターがあってね。
おれ、教職もとってたから教師としていってみることにした。
向こうではこっちの常識が通用しなくて。
最初は毎日が大変だった。
だけど、子供達と接してて楽しくなってさ。
なんていうのかな、純粋なんだ学ぶことに。
あの子達の目を見てるうちに自分がいかに間違ってたのか、
気がついて学んだんだ・・・・・」
そういいながら、武はまぶしい笑顔になった。
ああ、これが本当の笑顔なんだな。
なんだか、変ったと思ったのは内面から彼は変れたんだ。
武が変れたことがうれしくて涙がこぼれた。
「やっと日本に帰ってきて、でももう一度行きたくて今試験受けてるところなんだ。
でもその前に葵に謝りたかった。葵にやったことは謝っても許されないことだけど」
そういってまっすぐ私を見た。
「本当に、ごめん」
はっきりと男らしくもう一度私に頭をさげそう言った。
おもわず、頭を横に振った。
「そうだよな、許されることじゃないよな」
「ち、ちがうの・・・。謝るのは私の方なの」
そういって私は頭を下げた。
頭を下げても許されることじゃないけど。
今はこうすることしか出来なかった。
「あの時、私は自分のことしか考えてなかった。
あなたにぜんぜん思いやるとかしてなかった。
なのにあなたを追い詰めていってしまって。
もっと、ちゃんと話を聞けばあんなこと無かったと思う。
謝っても許されないことしてあなたのせいにしてしまった私が悪いの」
「葵・・・・」
そういって彼は私の肩を支えた。
「ほら、顔上げて。おれ、葵の笑顔が大好きなんだ。
お前の笑顔でたくさん助けてもらったんだ。なのに何も返せない自分が情けなくて、
でもそんな自分を認めたくなくて。子供だったんだ。
葵は何も悪くないよ。な。もう、泣かないでくれ。そんなに泣かれると・・・」
困った表情になった武を見上げた。
「俺、お前の彼氏に殺されるよ」
彼氏?
「あれ、彼氏だろ?一条家の御曹司」
な、なんであなたが知ってるの?
というより、彼氏じゃないですから。
私がびっくりした顔したせいか武が笑い出した。
「あ~。一応口止めされてたんだけどね。来たんだ、オレのとこに」
なんで武のこと知ってるの?
もしかして。
「ごめんなさい。私です」
素直にリョウが白状した。
「直様から連絡あってね。こいつの名前だけ教えてほしいって。彼のことだから
悪いことにはならないと思ってたんだけど・・・・。」
いつの間に連絡取り合ってたのか疑問だけど。
私の知らないところでいろんな人が繋がってみんなが心配してくれてるのをわからないほど鈍感ではない。
「一条はオレを探し出して、ちゃんと葵と向き合って謝れって。
じゃないと、オレも葵も前に進めないって説教してきたんだ。」
説教・・・・。なんで・・・・。
「葵には会って謝りたかったけど、会う勇気が無かった。
そんな俺にあいつは何度も何度も会いにきてさんざん、あいつに言われたよ。
おかげで葵に会う勇気が出たんだ」
もう、涙でぐしょぐしょになってしまった私の頬をなでながら武はやさしく言った。
「いいやつと出会えたんだね。よかった」
もう、言葉が出なかった。
「葵、本当に今までごめん。そしてこんな俺を一生懸命支えてくれてありがとう」
彼の言葉が私の心の鎖を溶かした。
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