財産が無ければ不要と離縁されました。でも、そのおかげで大切な人と一緒になれました

甘海そら

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後日談2:友人の恋路

4、イブリナとカシュー

「……あー、にしても、あのバカ2人は? てっきり、貴女たちにべったりかと思ったけど」

 羨望らしき表情を引きずりながらの問いかけだった。
 やはり違和感を覚えたが、ともあれヘルミナは笑みを作って応じる。

「は、はい。先ほどまでは一緒だったのですが」

 「まぁ、公爵家の嫡男とあれば人付き合いもね。それはそうよね」

 納得を見せつつも、未練はあるように見えた。
 小さくだが、周囲の群衆に視線をさまよわせている。

(何かご用件でもあるのでしょうか?)

 彼らにか、もしくはどちらになのか。
 会いたいという意思はうかがえるような気がした。

「……探して参りましょうか?」

 問いかければ、イブリナは苦笑で首を横に振った。

「いや、いいわよ。特に用事なんて無いし、今日の主役にそんなことさせられるわけないでしょ?」

「ですが、その……」

「だからいいってば。本当、アイツにわざわざ会いたいとか、そんなわけじゃ……」

「おや? 久しいですな。イブリナ殿ではありませんか」

 目に見えてだ。
 イブリナはびくりと体を震わした。

「あぁ、カシューか」

 ルクロイの言葉通りの人物だった。
 怜悧な雰囲気を漂わせる、切れ長の双眸が印象的な貴公子。
 すぐ側で、カシューがわずかに目を見張って立っている。

 発言通りだ。
 彼は久しぶりの再会に驚きを露わにしているのだろう。
 ただ、それはともあれだ。
 ヘルミナはイブリナの様子に注視する。
 明らかにいつもの彼女では無かった。
 呼吸が早ければ、その緋色の瞳には緊張の色が見て取れる。

 しかし、それも一瞬だった。
 イブリナはヘルミナの知る泰然とした様子を取り戻した。

「あら、カシュー。久しぶりね」

「えぇ、お久しぶりです。そう言えば、先ほど怒鳴り声が聞こえたような気がしますが、もしや?」

「そうだと言ったら何?」

「いや、けっこうなことだと思いまして。学院の時と変わらず、今も同じ調子で周囲をバシバシとやっつけておられるのでしょうね。いやはや、素晴らしい」

 からかうような調子でのカシューだった。
 ヘルミナはイブリナの表情を再びうかがうことになる。
 学院時代であればだ。
 このようなからかいの言葉に、イブリナはまず「ふん」と鼻を鳴らすことで答えていた。

 だが、今日は違うかもしれないという予感があった。
 案の定だ。
 彼女の対応は違った。
 イブリナは嬉しそうに笑みを深めた。

「えぇ、そうよ。おかげで良い評判しかいただいていないけど、貴方こそ同じみたいね。かしこまった皮肉な物言いで周囲を感心させているんじゃない?」

「ははは。また手厳しいな。まぁ、貴女ほどでは無いと言っておきましょうか」

「何よそれ。相変わらず失礼な男ね。まったく」

 その呆れの言葉にも喜色がにじんでいるように思えた。
 
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