財産が無ければ不要と離縁されました。でも、そのおかげで大切な人と一緒になれました

甘海そら

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後日談2:友人の恋路

5、彼女の事情

(……やっぱりですよね)

 ヘルミナは内心で頷く。
 やはりだった。
 ルクロイにカシューは気づいていないようだが何か違う。
 久しぶりに会った彼女は、学院時代とは間違いなく同じでは無い。

 知人から呼ばれたということで、カシューはすぐに人混みに戻っていった。

 すると、イブリナだ。
 カシューの後ろ姿を追っていた彼女は、呟くように口を開いた。

「……貴女たちはよく会うのかしら?」

 カシューにということに違いなかった。
 ヘルミナは頷きを見せる。

「はい。ルクロイ様にお会いされるためにたびたびいらっしゃいますので」

「ふふ。ルクロイじゃなくて貴女に会うためだと思うけど……ねぇ? 貴女、屋敷を替えたのよね? 何か困ってることとかってある?」

 唐突ではあるが、親切の問いかけだった。
 ただ、これがただの親切であるようにはヘルミナには思えなかった。

(これは……)

 裏の意味を考えているとだった。
 何かしらの理由で答えにくいのかと気を利かせてくれたのだろう。
 ルクロイがヘルミナの表情をうかがいながらに口を開いた。

「え、えーと、いや? 俺とヘルミナの実家の手伝いもあれば、さして問題は……」

 ヘルミナが見つめる中でだった。
 イブリナは笑みを浮かべた。
 悲しげと言うべきか、寂しげと言うべきか。
 そんな笑みであれば、ヘルミナは、

「い、いえいえ、大ありですとも!!」

 咄嗟に叫ぶことになった。
 ルクロイは大きく目を見張ってくる。

「へ、ヘルミナ?」

「な、何分、使用人さんたちが大勢になれば、その、色々と!! 色々と問題があるのです!! 女性にしか分からない問題が色々とありまして、是非イブリナ様の力をお貸しいただければ……っ!!」

 半ば以上、自分が何を言っているのか把握出来なかったが、ともあれ必要だと思えたことは為せたらしい。

 突如のヘルミナの叫びにイブリナも目を丸くしていたのだが、それはじわりとした笑みに変わる。

「……そう。だったら、お手伝いに訪ねさせてもらっても良いかしら?」

「もちろんっ! よろしくお願いいたしますっ!」

 イブリナは笑みを深めて頷く。
 そうしてだ。
 彼女もまた知人に呼ばれて去っていった。

「……あ、あの、申し訳ありません」

 ヘルミナは真っ先に、先ほどの奇行について頭を下げることになった。
 ルクロイは「いや?」と一言置いて、何故か頭を下げ返してくる。

「こちらこそごめん。考えが足りずに、君に叫ばせることになって」

 ヘルミナは思わず目を丸くする。

「あの……お気づきになられていたのですか?」

 ルクロイは苦笑を返してきた。

「まぁ、君ほどじゃないけど、俺も多少はその辺りは分かるから。彼女は僕たちの屋敷に来る理由を求めていたって、そういうことだろ?」

「は、はい! 私はその、そのように感じました」

「だよね。今思い返せば、彼女らしい覇気に乏しかったように感じるけど何かあったのだろうか?」

「分かりません。ただ、何も無かったという感じは無く……何か力になることが出来たら良いのですが」

 ルクロイは真剣な表情で頷きを返してくれた。

「だね。君にとっての親友であれば、僕にとっても代えがたい友人だ。僕は屋敷を留守にすることが多いけど……ヘルミナ?」

「はい。私に出来る限りで」

「うん。俺も出来る限りでね」

 お互い、友人のために力を尽くそうということだ。
 ヘルミナは夫と頷きを交わすのだった。
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