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side 皇祐
00.親友だけど、初恋で大切な人 ②
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その日、移動教室の際、ノートを忘れた皇祐は教室に戻った。
「コウちゃん、めずらしいねー」
敦貴は笑っていたけど、最近はうっかりしていることが多かった。
頭の中は敦貴のことばかりだ。
海外の大学に進むことは、親に勧められて敦貴に出逢う前から決めていたこと。
だけど、最近は日本にいたいという気持ちが日に日に強くなる。
敦貴のそばにいたい。離れたくない。
同じ大学じゃなくていい。すぐ会える距離にいたい。
友だちの関係のままでいいから、近くにいたいのだ。
教室に戻れば、すでにみんな移動していて誰もいなかった。
「早く戻らないと授業が始まる」
慌てた皇祐は机の上に出しっぱなしだったノートを手に取って、焦るように駆け出した。その拍子に後ろの席の机にぶつかり、椅子が倒れてしまう。そこは、敦貴の席だ。
卒業間近、皇祐は運良く敦貴の前の席を確保することができた。
授業中にこっそり会話をしたり、昼休みはその席のまま一緒にお弁当を食べたりもして、今まで以上に幸せなひとときを過ごす。最後の良い思い出だ。
椅子が倒れたせいで、そこにかかっていた敦貴のジャージが床に散らばっていた。
「ごめん、敦貴」
そう独り言をつぶやきながら、ジャージを拾えば敦貴の匂いが漂ったような気がした。
すぐそこに敦貴がいるみたいで、手にしたジャージをぎゅっと胸に抱いていた。
ただのジャージなのに、鼓動が速くなる。
いつだって想像してしまう。自分よりも大きな敦貴を抱きしめることを。
そのままジャージに顔をうずめそうになった。
普段ならそんなことをしないのに。不覚だった。
教室にクラスメートが入ってきたのは、すぐに気づかなかった。
「仲谷、次、移動だぞ。ぎりぎりなんてめずらしいな」
名前を呼ばれてジャージを手放したが、遅かったようだ。
「って、なーに、仲谷でもそんなことすんだ。誰のジャージだよ」
クラスメートの柿田は、にやにやとしながらさっきまで皇祐が手にしていたジャージを持ち上げる。
「え……?」
驚いたような声を上げた。ジャージのネームには『小此木』と書かれているから。
「これ、ノギのじゃねーの?」
「誰にも言わないで!」
咄嗟に出た言葉がこれだった。
もっとうまくやれば誤魔化せたかもしれないのに。これでは、自分が好んで敦貴のジャージを抱きしめていたと言っているようなものだ。
「えー、どうすっかな」
終わりだと思った。今まで誰にもばれないように、ずっと隠してきたのに。
敦貴のことが好きということがバレてしまう。
他の誰でもない。本人に知られてしまうのが怖かった。
身体がカタカタと震え出す。呼吸もうまくできない。涙も出そうだった。
そんな様子に気づいたのか、柿田がボソッとつぶやく。
「冗談だって、マジになんなよ」
「コウちゃん、めずらしいねー」
敦貴は笑っていたけど、最近はうっかりしていることが多かった。
頭の中は敦貴のことばかりだ。
海外の大学に進むことは、親に勧められて敦貴に出逢う前から決めていたこと。
だけど、最近は日本にいたいという気持ちが日に日に強くなる。
敦貴のそばにいたい。離れたくない。
同じ大学じゃなくていい。すぐ会える距離にいたい。
友だちの関係のままでいいから、近くにいたいのだ。
教室に戻れば、すでにみんな移動していて誰もいなかった。
「早く戻らないと授業が始まる」
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「ごめん、敦貴」
そう独り言をつぶやきながら、ジャージを拾えば敦貴の匂いが漂ったような気がした。
すぐそこに敦貴がいるみたいで、手にしたジャージをぎゅっと胸に抱いていた。
ただのジャージなのに、鼓動が速くなる。
いつだって想像してしまう。自分よりも大きな敦貴を抱きしめることを。
そのままジャージに顔をうずめそうになった。
普段ならそんなことをしないのに。不覚だった。
教室にクラスメートが入ってきたのは、すぐに気づかなかった。
「仲谷、次、移動だぞ。ぎりぎりなんてめずらしいな」
名前を呼ばれてジャージを手放したが、遅かったようだ。
「って、なーに、仲谷でもそんなことすんだ。誰のジャージだよ」
クラスメートの柿田は、にやにやとしながらさっきまで皇祐が手にしていたジャージを持ち上げる。
「え……?」
驚いたような声を上げた。ジャージのネームには『小此木』と書かれているから。
「これ、ノギのじゃねーの?」
「誰にも言わないで!」
咄嗟に出た言葉がこれだった。
もっとうまくやれば誤魔化せたかもしれないのに。これでは、自分が好んで敦貴のジャージを抱きしめていたと言っているようなものだ。
「えー、どうすっかな」
終わりだと思った。今まで誰にもばれないように、ずっと隠してきたのに。
敦貴のことが好きということがバレてしまう。
他の誰でもない。本人に知られてしまうのが怖かった。
身体がカタカタと震え出す。呼吸もうまくできない。涙も出そうだった。
そんな様子に気づいたのか、柿田がボソッとつぶやく。
「冗談だって、マジになんなよ」
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