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第2章 【side 皇祐】

36.太陽のように眩しい

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 皇祐は敦貴に背を向けて、奥の部屋へ移動する。そのあとを敦貴がついてきた。

「ねえ、コウちゃん、ごめんね。許して」

 自分が不甲斐ないから、敦貴に迷惑をかけるのだ。もっと、彼に相応しい相手になりたい。その思いは、強くなる一方だ。

「……お金は、きちんと返すから」
「そんなこと気にしなくていいよー」

 背中越しに、敦貴がへらへらと笑っていた。皇祐は振り返って、はっきり告げる。

「ダメだ! そのお金は、敦貴が貯めてきたものだろ。たとえ、僕たちがこれからずっと一緒にいるんだとしても、こういうことはきっちりしないといけない」
「ふふっ」

 だらしなく口元を緩ませて、敦貴が笑う。

「何が、可笑しいんだ」
「これからずっと一緒にいられるんだなあって考えたら、嬉しくなっちゃったの」
「僕は真剣に……」

 最後まで言葉を口にする前に、敦貴に腕を引っ張られ、彼の腕の中に包み込まれた。

「これで、コウちゃんの傍にいてもいいんだよね」

 頭上から、敦貴の幸せそうな弾む声が聞こえる。それだけでもう、怒れなくなってしまう。

「少しずつだけど、お金は、きちんと返すから」

 敦貴を見上げれば、太陽のような眩しい笑顔を向けてくる。

「うん、わかったー」

 そう言って、ちゅっと触れるだけのキスを唇にしてきた。
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