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アルが部屋を出る時にはどこかに隠れていたのかリノさんが遠くに現れて二人でアルを見送った。
「リノさん、さっきより距離が遠く無いですか?」
「陛下のフェロモンがハルト様を覆っておられるのでこれ以上お近くには…」
「そうなんですね?」
「はい。他の獣人を近寄らせないお力がおありですので」
そうか。強いフェロモンには寄って来れないんだ。それは、その薫りを付けられた僕も同じなんだな。フェロモン付けられた自覚は無いけど、もふもふしたからかな?
ソファーで座っていたら、誰かが本を届けてくれたようだ。リノさんが受け取り、ワゴンに乗せて少し離れた所に置いてくれた。立ってその本を取る。三冊あり、三冊とも文机に置いて椅子に座って読み進める事にした。
上の一冊目は、国の歴史を纏めた体裁の書籍である。一部分にその転生者である王妃の記載があるようだ。
おそらく随分昔の事のようだ。暦年の数え方や時間感覚をまだ把握しきれていないが、紙は古い感じがする。
その頃番が見つからず、似た種族と後継者を作ろうとしていた王がいた。しかし、強いフェロモンに耐えれる相手が少ない上に産まれにくく、産まれた子供に先天的な異常が多く生き残れなかったようだ。
決意して儀式を行い現れたのは金髪で白い肌の女性。彼女は獣人をとても怖がり、完全な人型になれる使用人と王のみとしか会わずに王宮の奥で過ごした。
息子を二人産むと暫くして体を弱らせ、妃は儚くなってしまった。嘆いた王は息子達が一人立ちする頃には自分も徐々に生きる気力を無くし、王としてはとても早い生を終えたとある。
アルは僕も長く生きるような事を言っていたけど、この転生者はあまり長生きしなかったみたいだ。他にも伝承があるのか、彼の希望なのかわからない。でも王と人間の女性で子供が出来たってことは分かった。ただ僕は男性なんだけどね。
その後は、その子供の王が立派に国を治めた歴史が少しだけ続いている。王子二人のどっちが王なのかはっきりしない。残りの一人がどうなったかはこの本には書いてないがライオンの習性や人の国の王を継がない兄弟の行く末を考えると、王室を出た可能性があるな。
次に真ん中の一冊を手に取った。こちらは妃の書いた物のようだ。日記というか、備忘録というか手記?これ、英語だ!今まで読んでいた本と比べて読むスピードが格段に落ちた。普通に英語の文章を読む。
固い表紙には何も書いてない。めくると内表紙に名前が書いてある。メアリー・グラッドストン。さらに本文を読む。メアリーは、自分の事をまず書いてある。貴族令嬢の一人だったようだ。
メアリーは突然この世界にいて、周りには動物と人がまざったモンスターのような人がたくさんいて怖いと大変恐れている様子が書かれている。
王は人で、見た目も良かったようだ。でも王が直ぐに自分を妻だと言って襲ってきた。結婚式もしていないのにって。そして首の後ろを噛まれたら言うことを聞かなければならないように感じてしまったと。これ、オス猫がメス猫の首を噛むネックグリップみたいなものだろうか。
定期的に自分の気持ちとは関係なく頭が熱くなって子供を作ってしまうとある。これは多分発情期の事だろう。
食事も合わなかったみたいだな。野菜と嫌いな魚ばかりでおいしくない。ミントティーを飲んではフルーツばかり食べていたようだ。元の食事をしたいって、帰りたいって書いてある。
子供を産んだがその子が完全な人ではなく、時々ライオンに変わるのが怖くて受け入れられなかった。嫌だと言ってもさらに一人望まれてまた直ぐに産んでからは食事も喉を通らず、体調回復せずに亡くなったようだった。最後まで帰りたかったみたい。この人は運命の番なのにあまり王を愛していなかったのか。動物に関する知識もないし動物が苦手だったのかも。そんな状態で子供を産まされたらさぞや哀しかったことだろう。不安で寂しかっただろうな。可哀想に。
アルがこの手記を読めたのかどうかはわからないが、少なくとも僕にとって辛い記載がある事はわかっていて見せてくれた。彼の誠実さは理解出来たし、儀式を行う事にためらいがあった様子も、人型のリノさんを付けてくれたのもわかった。
辛い気持ちでもう一冊を手に取った。これはもっと古い書だ。体裁が擦れて切れそうな所もある。
中を開くと過去の王が書いた日記のようだ。どうしても番が見つからず、年を重ねるばかり。そこで伝説の儀式を行った。現れたのは美しい男性であった。彼からは芳しいフェロモンを感じた。この地での生活を送るうちにオメガの特徴がよりはっきり現れた。発情期が起こるようになり、王を求めたのだ。二人は愛し合い、項を噛んで番となり子供が出来た。
アルファの息子を産んでくれた妃に感謝し大切にしていることが書かれている。そして長く一緒に暮らし、更には孫が産まれとても可愛いという記述もある。
ああ、良かった。愛し合っていた転生者もいたんだ。これを読んだから僕に子供が産めて長く生きられるように言ったってことだ。あと、番契約は項を噛んで成立するようなこともわかったぞ。
しかし、この二対の番の例を考えると儀式で呼んでも上手くいかない事もあれば上手くいくこともある。政略結婚だってその後仲良く過ごす夫婦と仮面夫婦がいるんだしな。
これを読めて良かった。帰れないならそれなりに、嘆いてばかりではなく楽しみを見つけて幸せを感じたいじゃないか。
幸いアルは僕を無理に組み伏したりせず気遣う人間性と誠実さを兼ね備えていて聡明だと思う。
僕もゆっくりこの世界を知って、自分が変化するのか経過を追ったり彼を愛せるのか考えていけば良いんじゃないだろうか。
せっかく獣医の知識を蓄えて来たんだ。自分を守って、この国の人に役に立つ部分があるかも知れない。アルの逞しい体と格好良い顔、気持ち良かったモフモフの毛並みもまた僕に希望をもたらしている。
「リノさん、さっきより距離が遠く無いですか?」
「陛下のフェロモンがハルト様を覆っておられるのでこれ以上お近くには…」
「そうなんですね?」
「はい。他の獣人を近寄らせないお力がおありですので」
そうか。強いフェロモンには寄って来れないんだ。それは、その薫りを付けられた僕も同じなんだな。フェロモン付けられた自覚は無いけど、もふもふしたからかな?
ソファーで座っていたら、誰かが本を届けてくれたようだ。リノさんが受け取り、ワゴンに乗せて少し離れた所に置いてくれた。立ってその本を取る。三冊あり、三冊とも文机に置いて椅子に座って読み進める事にした。
上の一冊目は、国の歴史を纏めた体裁の書籍である。一部分にその転生者である王妃の記載があるようだ。
おそらく随分昔の事のようだ。暦年の数え方や時間感覚をまだ把握しきれていないが、紙は古い感じがする。
その頃番が見つからず、似た種族と後継者を作ろうとしていた王がいた。しかし、強いフェロモンに耐えれる相手が少ない上に産まれにくく、産まれた子供に先天的な異常が多く生き残れなかったようだ。
決意して儀式を行い現れたのは金髪で白い肌の女性。彼女は獣人をとても怖がり、完全な人型になれる使用人と王のみとしか会わずに王宮の奥で過ごした。
息子を二人産むと暫くして体を弱らせ、妃は儚くなってしまった。嘆いた王は息子達が一人立ちする頃には自分も徐々に生きる気力を無くし、王としてはとても早い生を終えたとある。
アルは僕も長く生きるような事を言っていたけど、この転生者はあまり長生きしなかったみたいだ。他にも伝承があるのか、彼の希望なのかわからない。でも王と人間の女性で子供が出来たってことは分かった。ただ僕は男性なんだけどね。
その後は、その子供の王が立派に国を治めた歴史が少しだけ続いている。王子二人のどっちが王なのかはっきりしない。残りの一人がどうなったかはこの本には書いてないがライオンの習性や人の国の王を継がない兄弟の行く末を考えると、王室を出た可能性があるな。
次に真ん中の一冊を手に取った。こちらは妃の書いた物のようだ。日記というか、備忘録というか手記?これ、英語だ!今まで読んでいた本と比べて読むスピードが格段に落ちた。普通に英語の文章を読む。
固い表紙には何も書いてない。めくると内表紙に名前が書いてある。メアリー・グラッドストン。さらに本文を読む。メアリーは、自分の事をまず書いてある。貴族令嬢の一人だったようだ。
メアリーは突然この世界にいて、周りには動物と人がまざったモンスターのような人がたくさんいて怖いと大変恐れている様子が書かれている。
王は人で、見た目も良かったようだ。でも王が直ぐに自分を妻だと言って襲ってきた。結婚式もしていないのにって。そして首の後ろを噛まれたら言うことを聞かなければならないように感じてしまったと。これ、オス猫がメス猫の首を噛むネックグリップみたいなものだろうか。
定期的に自分の気持ちとは関係なく頭が熱くなって子供を作ってしまうとある。これは多分発情期の事だろう。
食事も合わなかったみたいだな。野菜と嫌いな魚ばかりでおいしくない。ミントティーを飲んではフルーツばかり食べていたようだ。元の食事をしたいって、帰りたいって書いてある。
子供を産んだがその子が完全な人ではなく、時々ライオンに変わるのが怖くて受け入れられなかった。嫌だと言ってもさらに一人望まれてまた直ぐに産んでからは食事も喉を通らず、体調回復せずに亡くなったようだった。最後まで帰りたかったみたい。この人は運命の番なのにあまり王を愛していなかったのか。動物に関する知識もないし動物が苦手だったのかも。そんな状態で子供を産まされたらさぞや哀しかったことだろう。不安で寂しかっただろうな。可哀想に。
アルがこの手記を読めたのかどうかはわからないが、少なくとも僕にとって辛い記載がある事はわかっていて見せてくれた。彼の誠実さは理解出来たし、儀式を行う事にためらいがあった様子も、人型のリノさんを付けてくれたのもわかった。
辛い気持ちでもう一冊を手に取った。これはもっと古い書だ。体裁が擦れて切れそうな所もある。
中を開くと過去の王が書いた日記のようだ。どうしても番が見つからず、年を重ねるばかり。そこで伝説の儀式を行った。現れたのは美しい男性であった。彼からは芳しいフェロモンを感じた。この地での生活を送るうちにオメガの特徴がよりはっきり現れた。発情期が起こるようになり、王を求めたのだ。二人は愛し合い、項を噛んで番となり子供が出来た。
アルファの息子を産んでくれた妃に感謝し大切にしていることが書かれている。そして長く一緒に暮らし、更には孫が産まれとても可愛いという記述もある。
ああ、良かった。愛し合っていた転生者もいたんだ。これを読んだから僕に子供が産めて長く生きられるように言ったってことだ。あと、番契約は項を噛んで成立するようなこともわかったぞ。
しかし、この二対の番の例を考えると儀式で呼んでも上手くいかない事もあれば上手くいくこともある。政略結婚だってその後仲良く過ごす夫婦と仮面夫婦がいるんだしな。
これを読めて良かった。帰れないならそれなりに、嘆いてばかりではなく楽しみを見つけて幸せを感じたいじゃないか。
幸いアルは僕を無理に組み伏したりせず気遣う人間性と誠実さを兼ね備えていて聡明だと思う。
僕もゆっくりこの世界を知って、自分が変化するのか経過を追ったり彼を愛せるのか考えていけば良いんじゃないだろうか。
せっかく獣医の知識を蓄えて来たんだ。自分を守って、この国の人に役に立つ部分があるかも知れない。アルの逞しい体と格好良い顔、気持ち良かったモフモフの毛並みもまた僕に希望をもたらしている。
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