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トゥルルル…
「蒼士君。ごめんお待たせ」
「黒田さん。急にすみません」
「いやいや。それで?新しいシステムの事?」
「はい。遅いですけど今から研究室来て貰って良いですか?」
「うん。行くよ」
「お待たせ~。ちょっと飲んじゃったんだけど、頭は働くと思うよ」
「あ、すみませんでした。宴会でした?研究中のシステム止まって、バグは見つかったんですけど、これが問題なのかちょっと…」
「おー、どれどれ?」
「!黒田さん。その香り?!…どこに行って誰と会ってました?」
「うん?酒臭いってこと?」
「違いますよ!フェロモン!」
「え?アルファかオメガの子?居たかなぁ?ずいぶん美人の姉弟は居たけど。帰り一緒に歩いた」
「その人の名前は?どういう関係ですか?!」
「え?何々?」
「俺の運命の人です!春川茜くんの香りです」
「え?御曹司の運命!なんかドラマみたい」
「俺にとっては大事件ですよ。小学生の時に出会って、アメリカに行っちゃってからもずっと待って、探してて…帰国したんだ」
蒼士は、手で目を覆ってうつむいた。黒田は泣いているのかと思い、びっくりしていた。
宝来グループの御曹司で超優秀。入学前から研究室に出入りしていて、既に本格的に研究しながら実家の仕事もこなし、大学生として講義も受けているスーパーマンのような後輩が…。
「私大の電算研サークルの新歓コンパだったんだよ。蒼士君も知ってるうちの中高の後輩達が作ったサークル。いろんな大学の子も入ってて、知り合い増えるからさ。そこに来たアメリカ帰りの編入学姉弟が美人だった。フェロモンわかんなかったけど、抑制剤飲んでるからかも。超美形だった。オメガかも知れない」
「すみません。連絡先を知りませんか?」
「俺は聞いてないけど。誰か知ってるか聞いてみるよ」
「ありがとうございます」
黒田はその場で、会っていた後輩達に連絡を入れた。しかし誰も連絡先はわからないという。今回の新歓コンパは、大学で配布した印刷物を見て来てくれたようだった。
「大学名はわかったし、今年編入学したばかりなんだ。すぐ見つかるだろうよ。確かお姉さんの方が、弟にあかねって呼び掛けていたの聞いた気がする。蒼士君の探している運命の相手だと良いな」
「はい。そうですね。明日探しに行きます」
「じゃ、さっさとやることやって終わりにして、帰って寝てから身なり整えて行くんだな」
「はい」
泣き笑いのような情けない笑顔を浮かべた蒼士。黒田は、イケメンはどんな表情でも絵になるなと思いながら微笑み返した。
「お母さんー、ただいま」
「ただいま」
「お帰りなさい。遅かったね。大丈夫だった?」
「うん。帰りにね、院生の人が駅まで用事ついでに送ってくれたの」
「そう。良かったわね。どんな人?」
「優しい人だったわよ。ね?茜」
「うん。優しい…アルファの人」
「やっぱりそうか。T大って言ってたもんね…それで、やっぱり苦手な感じ?」
「苦手では無いよ。フェロモンは違う、ていうふうに感じたけど」
「そっか。日本人のアルファなら皆相性が合うってわけでもないもんね」
「そうよね。今度落ち着いたら、こっちの病院にも行ってみましょうね」
「お母さん。お姉ちゃん。心配させてごめんなさい」
「気にしないで。気長に考えましょう茜」
翌朝、早い時間から茜の通う大学の正門前に蒼士が立っていた。黒田の話から推察すると、駅から真っ直ぐの正門を通るはずだと考えた。
茜に再会出来たら渡したいと以前から用意していたプレゼントを手にしている。
これから講義ならば花束は迷惑だろうし、荷物になる大きな品物ではいけない。
自分を覚えてくれているだろうか?覚えて居なくても、何か思い出すきっかけになるものを。かねてより考えて用意していた物だった。
そこに登校してきた複数の大学生達が、興味深い視線を投げたり、噂話をしだした。特に女性達がチラチラと見ている。
「ねえ、正門前にイケメンがいる」
「本当!誰かな?誰待ちだろうね」
「アイドルみたい。俳優さんかな?」
「何か、見たことある」
「え?」
「なんだっけ?数学オリンピックとか?」
「雑誌に載ってた人?」
「茜、何か正門前に人が多いわね」
「そうだね。何かやってるのかな?」
「日本の大学は、色々勝手が違うわよね」
「うん」
「茜さん!」
「えっ?」
正門前に立っている身長の高い端正な顔をした黒髪の男性。若いようだが上品なスーツを身に纏い、まるで雑誌から抜け出して来たようだった。
モデルのようなその人が、自分の名前を呼びながら笑顔を向けて歩いてきたのだ。茜はびっくりして立ち止まる。
「茜さん。会えて良かった。元気でしたか?」
蒼士は茜の前に立ち、にっこりと輝くような笑顔を浮かべた。そして戸惑う茜の手をそっと取り
「私を覚えて居ますか?宝来蒼士です」
「え?っと、以前お会いしているんでしょうか?」
「あっ、ごめんなさい...急に失礼しました」
そっと名残惜しげに手を離すと、胸ポケットから名刺を出して、茜の手に持たせた。
「小学生の時に校外学習の宿泊先でお会いしています。これ、私の連絡先です。受け取って頂けませんか?」
「校外学習…、ごめんなさい。あの後、僕高熱で入院してしまって。記憶が曖昧なんです」
「そうでしたか…ずっと探して、ずっと待って居ました。良かったらお話させて下さい」
「すみません。あの、茜の姉ですが。ここ、目立ってどんどん人が増えてきているので。夕方とか後日改めてにしませんか?」
「申し訳ありません。本当だ。お邪魔してすみませんでした。是非、ご連絡ください。それとこれ。是非あなたにお贈りして使って頂きたいと用意していました。どうか、受け取ってください」
茜の手に小さな紙袋が渡された。周囲と自分と姉に対しても会釈し、後ろを振り返りつつ、去っていった人。
「茜、覚えがある人なの?」
「きっと会った事がある。思い出しそうなんだけど…とっても大事なこと」
「そう。昼ご飯カフェテリアで一緒に食べよう?それまでに何か分かったら教えてね」
「ありがとう、お姉ちゃん」
「蒼士君。ごめんお待たせ」
「黒田さん。急にすみません」
「いやいや。それで?新しいシステムの事?」
「はい。遅いですけど今から研究室来て貰って良いですか?」
「うん。行くよ」
「お待たせ~。ちょっと飲んじゃったんだけど、頭は働くと思うよ」
「あ、すみませんでした。宴会でした?研究中のシステム止まって、バグは見つかったんですけど、これが問題なのかちょっと…」
「おー、どれどれ?」
「!黒田さん。その香り?!…どこに行って誰と会ってました?」
「うん?酒臭いってこと?」
「違いますよ!フェロモン!」
「え?アルファかオメガの子?居たかなぁ?ずいぶん美人の姉弟は居たけど。帰り一緒に歩いた」
「その人の名前は?どういう関係ですか?!」
「え?何々?」
「俺の運命の人です!春川茜くんの香りです」
「え?御曹司の運命!なんかドラマみたい」
「俺にとっては大事件ですよ。小学生の時に出会って、アメリカに行っちゃってからもずっと待って、探してて…帰国したんだ」
蒼士は、手で目を覆ってうつむいた。黒田は泣いているのかと思い、びっくりしていた。
宝来グループの御曹司で超優秀。入学前から研究室に出入りしていて、既に本格的に研究しながら実家の仕事もこなし、大学生として講義も受けているスーパーマンのような後輩が…。
「私大の電算研サークルの新歓コンパだったんだよ。蒼士君も知ってるうちの中高の後輩達が作ったサークル。いろんな大学の子も入ってて、知り合い増えるからさ。そこに来たアメリカ帰りの編入学姉弟が美人だった。フェロモンわかんなかったけど、抑制剤飲んでるからかも。超美形だった。オメガかも知れない」
「すみません。連絡先を知りませんか?」
「俺は聞いてないけど。誰か知ってるか聞いてみるよ」
「ありがとうございます」
黒田はその場で、会っていた後輩達に連絡を入れた。しかし誰も連絡先はわからないという。今回の新歓コンパは、大学で配布した印刷物を見て来てくれたようだった。
「大学名はわかったし、今年編入学したばかりなんだ。すぐ見つかるだろうよ。確かお姉さんの方が、弟にあかねって呼び掛けていたの聞いた気がする。蒼士君の探している運命の相手だと良いな」
「はい。そうですね。明日探しに行きます」
「じゃ、さっさとやることやって終わりにして、帰って寝てから身なり整えて行くんだな」
「はい」
泣き笑いのような情けない笑顔を浮かべた蒼士。黒田は、イケメンはどんな表情でも絵になるなと思いながら微笑み返した。
「お母さんー、ただいま」
「ただいま」
「お帰りなさい。遅かったね。大丈夫だった?」
「うん。帰りにね、院生の人が駅まで用事ついでに送ってくれたの」
「そう。良かったわね。どんな人?」
「優しい人だったわよ。ね?茜」
「うん。優しい…アルファの人」
「やっぱりそうか。T大って言ってたもんね…それで、やっぱり苦手な感じ?」
「苦手では無いよ。フェロモンは違う、ていうふうに感じたけど」
「そっか。日本人のアルファなら皆相性が合うってわけでもないもんね」
「そうよね。今度落ち着いたら、こっちの病院にも行ってみましょうね」
「お母さん。お姉ちゃん。心配させてごめんなさい」
「気にしないで。気長に考えましょう茜」
翌朝、早い時間から茜の通う大学の正門前に蒼士が立っていた。黒田の話から推察すると、駅から真っ直ぐの正門を通るはずだと考えた。
茜に再会出来たら渡したいと以前から用意していたプレゼントを手にしている。
これから講義ならば花束は迷惑だろうし、荷物になる大きな品物ではいけない。
自分を覚えてくれているだろうか?覚えて居なくても、何か思い出すきっかけになるものを。かねてより考えて用意していた物だった。
そこに登校してきた複数の大学生達が、興味深い視線を投げたり、噂話をしだした。特に女性達がチラチラと見ている。
「ねえ、正門前にイケメンがいる」
「本当!誰かな?誰待ちだろうね」
「アイドルみたい。俳優さんかな?」
「何か、見たことある」
「え?」
「なんだっけ?数学オリンピックとか?」
「雑誌に載ってた人?」
「茜、何か正門前に人が多いわね」
「そうだね。何かやってるのかな?」
「日本の大学は、色々勝手が違うわよね」
「うん」
「茜さん!」
「えっ?」
正門前に立っている身長の高い端正な顔をした黒髪の男性。若いようだが上品なスーツを身に纏い、まるで雑誌から抜け出して来たようだった。
モデルのようなその人が、自分の名前を呼びながら笑顔を向けて歩いてきたのだ。茜はびっくりして立ち止まる。
「茜さん。会えて良かった。元気でしたか?」
蒼士は茜の前に立ち、にっこりと輝くような笑顔を浮かべた。そして戸惑う茜の手をそっと取り
「私を覚えて居ますか?宝来蒼士です」
「え?っと、以前お会いしているんでしょうか?」
「あっ、ごめんなさい...急に失礼しました」
そっと名残惜しげに手を離すと、胸ポケットから名刺を出して、茜の手に持たせた。
「小学生の時に校外学習の宿泊先でお会いしています。これ、私の連絡先です。受け取って頂けませんか?」
「校外学習…、ごめんなさい。あの後、僕高熱で入院してしまって。記憶が曖昧なんです」
「そうでしたか…ずっと探して、ずっと待って居ました。良かったらお話させて下さい」
「すみません。あの、茜の姉ですが。ここ、目立ってどんどん人が増えてきているので。夕方とか後日改めてにしませんか?」
「申し訳ありません。本当だ。お邪魔してすみませんでした。是非、ご連絡ください。それとこれ。是非あなたにお贈りして使って頂きたいと用意していました。どうか、受け取ってください」
茜の手に小さな紙袋が渡された。周囲と自分と姉に対しても会釈し、後ろを振り返りつつ、去っていった人。
「茜、覚えがある人なの?」
「きっと会った事がある。思い出しそうなんだけど…とっても大事なこと」
「そう。昼ご飯カフェテリアで一緒に食べよう?それまでに何か分かったら教えてね」
「ありがとう、お姉ちゃん」
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