大好きな婚約者を僕から自由にしてあげようと思った

こたま

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 高校生の時、大輝はロボットコンテストやらサッカー部の試合やらで対外的に知られるようになり、非公認ファンクラブが出来るほど有名になった。

 学外の女子高生やオメガの人から時々告白されたり、手紙を渡されるようになった。
 でも本人はそれを歯牙にもかけず、周囲の友人達も大輝には僕という婚約者がいるから諦めるように言ってくれることもあった。

 僕も大輝が心配ないよ、智晴だけだと言ってくれることで安心していたのだ。
 でも次第に発情期もまだ訪れず、何の魅力もないような自分自身に次第に自信が持てなくなっていた。僕は大輝に相応しいのだろうかと。

 大輝が優しくしてくれると少しだけ元気になって、嬉しくなって期待をしてしまいながらもいつまでこの婚約者という関係でいられるのか不安がつきまとうのだった。

 大学に進学すると、外部からの入学生が多くなった。今までの幼なじみに守られる生活とは随分違ってくる。ある日、決定的な出来事が起こった。

「岡山くん、ちょっと良い?」

 講義後の休み時間、独りの時に学年でも可愛いと噂のオメガやベータの女の子数人に呼び止められた。

「何ですか?」
「ちょっと来て欲しいの」

 数人に腕を引っ張られて連れていかれる。女の子とはいえ、数人がかりではかなわない。
 女の子から無理に手を取り戻すこともはばかられ、目的がわからなくて不安だが仕方なくついていく。

 どこにいくのだろう?と思っていると講義棟の裏にある、昔喫煙所として使われていたようなスペースに連れて行かれた。
 もちろん他には誰もいないし、何かある場所でもない。

「岡山くん、香川くんにつきまとうのいい加減止めてよ」
「え?」
「迷惑だって言ってたよ?」
「大輝が?」
「そう。幼なじみだから仕方なく面倒みてるけど、手も出せないし、困ってるって」

「そうよ。香川くん、本当はエマと付き合いたいのに岡山くんのせいで付き合えないんだから」
「別れてあげなよ」
「っていうか、付き合って無いんでしょ?」
「つきまといなんて、みっともないんじゃないの?」
「そうよ、そうよ」
「とにかく!もう香川くんとは一緒にいないで。自由にしてあげて」

 迷惑?大輝が僕に困ってるって、この子に言ったの?

 僕が呆然としているうちに、彼女達はその場を去って行った。寒い外に立っていたことに気づいて、講義棟に戻る。
 今日の講義は大輝とは被らない。あとひとこま受けたら今日は終わりだ。

「授業聞いて、とりあえず帰ろ…」

 大輝。迷惑だったの?確かに、僕にはまだ発情期も来ていない。遅い成熟のせいで手も出せないっ言われたらそれは本当だ。
 あの人みたいな可愛い女の子のオメガが良かったのかな?お祖父様達のせいで、無理矢理婚約させられて嫌だったのかな?

 帰宅後、落ち込んでいる僕を母が心配してくれた。

「どうしたの?智晴何かあった?」
「何でもない。部屋にいるね」

 ベッドにうつぶせると、涙が出てきた。ずっと大輝には迷惑をかけていたのかな。ごめんなさい。
 僕は大輝が大好きだ。一緒に生きて行きたい。でも、大輝を困らせたり本当に好きな人と結婚できないようにはしたくない。
 無理に結婚して貰っても、本当に好きな人が愛人になんてなったら大輝に申し訳ない。

「う、ぅ…」

 トントンとドアが叩かれた。

「ご飯よ?」
「要らない」
「大丈夫?具合悪いの?」
「違うから。独りにしてください」

 母にも申し訳ないが、食べ物が喉を通るとは思えなかった。
 ひとしきり泣くと少し落ち着いた。僕の部屋は発情期に備えてシャワールームとトイレ、簡易キッチンのついたワンルームマンションのような設備がある。
 部屋の冷蔵庫からスポーツ飲料を出して飲み、シャワーを浴びた。

「大輝と話したいな。大輝の良いようにして貰いたい。迷惑かけないようにしないと」

 パジャマに着替えて、ベッドでスマホを手に悩む。なんて言ったら良いのか。通話するか、メッセージを送る?

 すると、大輝の方からメッセージが来た。

「智晴、元気無いの?何かあった?」

 どうしよう。母が大輝に連絡をしたのだろうか?心配させてしまった。またこうやって迷惑をかけてしまっている。

「大輝ごめんなさい、ありがとう。話したいことがあるんだけど、時間がある時にお願い出来る?」

「いつでも良いよ。明日の金曜日、講義終わる時間一緒だからその後で良い?」
「うん。お願い」
「昼はいつもみたいに皆でカフェテリア行こうね」
「うん。会えるの楽しみにしてる。ありがとう」
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