アモスの魔法学校

高橋

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第八話

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時は2日遡る
カファロンシ王国第59代国王ベルモルス12世とその妻は、危機に晒されていた。他国へと行った帰り道、馬車の周りを魔獣に襲われたのだ。兵士が守っているとはいえ、相手は魔獣。雷系の魔法を次々と撃ち、攻撃していく。国王が懐から何かを取り出す。それは、国王が代々受け継ぐ、魔球であった。天にそれを掲げると、魔法陣が次々と展開される。しかしその魔法陣は突如消え去った。魔獣が雷をぶつけ、破壊したのだ。そして、国王・王妃は魔獣によって、兵士と共に遺体が残らないほど強力な雷をぶつけられた。ではなぜ死亡が確認されたかというと、王冠2つの一部が現場に残っていたのだ。

残された子供たちの中で、一人いじめられている姫がいた。名前はアラムル。この姫だけがとても可愛らしく、とても美人であった。他の姫はお世辞にも美人とはいえないのにだ。この国は一夫一妻制。これは国王でも例外はない。国王は切実なひとなりで、愛人などはいなかった。ではなぜアラムル姫だけが美人なのか。アラムル姫を出産したとき、王妃は重い病に侵されていた。これが影響したのではないかと多くの人間が思っていた。そのアラムル姫だが、アモスのことを気になっている。古神竜の件で、書類を眺めていたときのことだ。アモスの写真が添付されていたのだが、アモスの顔は整っている。可愛いよりに、だ。それを見たアラムル姫は、元老院に頼み込み、ヴォリダラン研究都市へ大使として向かうことになった。そして、今に至る。

「アモスくーん。校長から手紙預かってきたよ」
ルミスがそういうと、アモスに封筒を渡す。表には【カファロンシ王室】と印字され、王室のシンボルである鷹(たか)のマークが描かれている。中の手紙を見ると、アモスはとても驚いた。
【アモス様
 この度の、古神竜クリスタルドラゴンの件、おめでとうございます。それを受けて、カファロンシ王室より称号を贈りたいと思います。手紙に同封されているピンを制服に付けていてください。後日、そちらに向かいます。
                         ベルモルス・アラムル】
王室からの手紙に目を通したあと、アモスはピンを制服の袖に付ける。隣から覗き込んでいたルミスや、その他の生徒も驚いていた。
「「王室から、称号!!」」
「なんの称号がつくんだ?」
「まあ竜関係ではないかな?」
アモスの周りではA組の生徒が口々に話す。
「というか、アラムル姫ってどんな姫だ?」
「確か王室の姫で皆可愛くないよね…」
魔法使いの少女、サリスは顔について問題提起する。姫が可愛くないことなど誰もが承知の事実なのだ。しかし、一人の男子生徒が異を唱える。戦士のカイヴァーンだ。
「皆そう思うだろ?だがね、アラムル姫はすごく可愛いぞ」
「「えっ!?」」
クラスメイトが驚く。今まで王室に可愛い姫がいないと思っていたからだろう。その時アモスがいるA組の扉をノックするものがいた。ルミスは「どうぞ」という。入ってきたのは衛兵を引き連れたベルモルス・アラムルであった。
「アモスさん。称号授与おめでとうございます」
((これがアラムル姫か、可愛すぎるだろう))
「ありがとうございます」
「称号名は【竜王】です」
竜王、それはトップクラスに位置する称号だ。それと同列に語られるのが【鳳凰】【麒麟】【剣王】などである。竜王の名前を聞き、アモス以外の人間は驚いた。アモスは凄さに気づいていないのである。そして、アラムル姫から金の腕輪を通される。その腕輪には細かな竜王の装飾がなされていて、様々な宝石が埋め込められている。その後、アラムル姫に、アモスは握手された。周りの男子生徒は羨望の目で見ている。アラムル姫は語る。
「この称号は王室からのお礼です」
そういって、アラムル姫は教室から出て行った。
「おまえ、羨ましいな・・・。あんな可愛い子と…」
「アモス君、竜王って」
アモスは喜び、そして授業が終わり、寮へと戻る。アモスはアラムル姫から貰った金の腕輪をじっくりと見ていた。スタルも一緒に覗き込む。
「アモスすごいですねー」
「いや、たぶんスタルのおかげだよ」
アモスの言うことはあながち間違いではない。確かに古神竜であるスタルのおかげで竜王という称号を得たのだ。そして、アモスの部屋を訪れる人間がいた。その人間は生徒会長ベルモ。妖精科の女子生徒で、生徒からの人気は高い。ベルモが何のようできたのかというと・・・。
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