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第6話
しおりを挟む「こ、ここは…?」
潮の香りに、船の汽笛。
麻袋から解放された私は手足を拘束されたまま地面に転がった。
ふ頭の倉庫?なんてベタな……お約束な……もっとひねりはないの?ありがちな展開に、ネットの書籍レビューに文句書いちゃうレベルよ。
顔を上げると見知った顔がいた。
私を無表情で見下ろしている男。
「ケビン!?」
「ハハハハハ!いい気味だ!クローディア!」
「何の真似よ!」
強気に睨んで見た。
ケビンは私の髪を荒っぽく引っ張ると顔を間近に近付けた。
「子供の頃からお前には奴隷のように扱われていたからな!復讐だ!こうでもしないと気が治らない!」
「あんたが雇ったのね?あのチンピラ!?」
「こんな時でも気が強い女だなあ、もっと泣きじゃくりながら命乞いするかと思ったぜ」
「そうだな生きたまま海に沈めてやるとして、今まで虐げられて来た分お返ししないとな。性格はクソみたいでも顔と身体はなかなかの上玉だし、俺らを楽しませてくれよ」
「乱暴する気!?最低!」
ゾロゾロと周りにおっかないナイフを持ったチンピラが集まって来て、怖くて手が震えた。
それでも負けじと男らを睨む。
ああ、神様、仏様、オスワルド様……っ
目をギュッと閉じ心の中で叫んだ。
するとすぐ目の前にナイフが転がって来た。ギョッとして顔を上げると、チンピラが何故かケビンにナイフを突き付けガッチリと取り押さえていた。あっという間に縄で身体を拘束されて形勢逆転していた。
もう1人のチンピラは私の背後に回り、拘束していた縄を解いて身体を丁重に起こしてくれた。
「え?……」
「お前ら!何故、俺を……っ」
「あんな端た金で俺たちを従わせられるとでも思ったか?」
「裏切るつもりか!?」
「裏切る?もともと俺らの雇い主はお前じゃねえからな」
そして倉庫の扉が開き、外の光が薄暗い庫内に差し込んだ。
逆光の中颯爽と登場したのは伯爵様だった。
「え……!?オスワルド様?」
「ご苦労だった。お前たちは下がっていいぞ。伯爵家の従士がそれの回収に来るからな」
「へへ、毎度毎度。領主様はやっぱ羽振りが良くていいや。またのご利用お待ちしております~」
チンピラどもはニッと笑うと倉庫を出て行った。
伯爵様が雇い主だったのか?
「怖い思いをさせたな、クローディア。僕が来たからもう大丈夫だよ」
「い、いいえ……っ」
涙がポロポロと溢れていた。
伯爵様は私をギュッと優しく抱きしめてくれた。
「……な!お前……っ、俺の計画を知ってたのか?」
「本当に馬鹿な男だな。計画とも言えない杜撰なものでしたよ。あれで成功すると思ってたのか?」
伯爵様は私を横抱きにし、歯をギリギリさせて睨んでいるケビンを見下ろした。
「け、ケビン、今までごめんね。許してもらえるわけないけど、ごめん!」
「……クローディアが謝った?」
以前の私なら例え100パーセント自分に非があっても絶対に謝らなかったろう。
彼をこうしてしまったのは私にも原因があった。
そして小説の中で伯爵様が私を殺したのだって、同じようなものよね。勿論殺したり、暴力なんてどんな理由があっても許されないけれど、私にも非があった。
「ねえ、オスワルド様、ケビンをどうにか許してあげられない?ほら、未遂だし……」
伯爵様の腕の中で必死に彼に懇願する。
「……ああ、そうだな」
伯爵様が頷くとケビンは心底ホッとしたような顔をした。
私も安堵した。
伯爵様は倉庫の前の馬車の中に私を押し込んだ。
馬子席には金髪の若い男がいる。
「クリス、彼女を伯爵家の屋敷へ。私は彼の処理をして従士団と共に帰ります」
「ええ、わかりました。“ほどほど”に」
意味深な事を言うクリスに伯爵様はニッコリと笑顔を向けた。
馬車の中から伯爵様を見ていた私はゾッとした。
不気味な笑顔、手には鞭を持っている。そんな物騒な物が何故かよく手に馴染んでいる。
「ギャアアアアアア」
走ってる馬車の中、倉庫の方角から痛ましい悲鳴が微かに聞こえたような気がしたが、気のせいだろう。
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