シャルロット姫の食卓外交〜おかん姫と騎士息子の詰め所ごはん

ムギ・オブ・アレキサンドリア

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オーギュスト国へご訪問〜猫神様の祟り!?もふもふパンデミック大パニック

白竜の卵雑炊とパンデミック大パニック!?

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 オーギュスト国の宮殿内は動物で溢れかえっていた。
 太っちょ黒ぶち猫官僚トムは慌てた様子で宮殿内を走っていた。
 運動不足な上に肥満気味な猫の身体で走っているから息も辛そうに上がっている。

「大変です!ヴェル殿下~~!もう!こんなところにいらっしゃったんですかぁ!?」

 宮殿内の厨房には椅子に座っているヴェルと、割烹着姿のアルビノの青年・白竜が鍋をかき回していた。

「騒がしいぞ、どうしたんだ?」

「今ね~琥珀が卵雑炊と卵焼きを作ってくれてるんだ~トムも食べる?」

 お昼時だというのに料理人が一人もいない無人のだだ広い厨房。

「殿下になんて粗末な食事を!」

「無茶言うな!こちとら料理なんて二百年ぶりだぞ!」

「琥珀の料理は卵雑炊に卵焼きにオムレツに肉でも野菜でも魚でも何でも卵でとじちゃうの、もう飽きた~」

 ヴェルはうな垂れた。

 ヴェルの誕生パーティーまで一週間を切った頃。
 オーギュスト国では非常事態が発生していた。謎の奇病により、獣人が獣化したまま人間の姿に戻れなくなってしまうのだ。

 最初は神殿を管理していた神官数人が発症し、彼らの身内だった官僚が罹患。官僚達も半分は被害に。
 次に山へ山菜採りに行っていた料理人が数人、数日後には宮殿内の料理人は全滅。兵士達にもこの奇病が広まっていた。
 宮殿内に留まっていた奇病は街へと広がり、国民達の約半数近くが獣化したまま元に戻れなくなった。
 奇病の患者は日を追うごとに増加している。

 未曾有のパンデミックが発生していた。

「それで、何が大変なの?」

「紅国から殿下のお誕生日パーティーに出席するためにやってきた太子やお連れ様がたが獣化したまま戻らないと!今対応した者より連絡が……!」

 紅国はオーギュスト国の友好国。その国の太子とヴェルは以前より交流があり仲が良かった。
 隣の大陸にある紅国もまた、オーギュスト国のように東にある獣人の国だ。

 奇病が発生したのは各国へ招待状を送った直後のこと、今オーギュスト国へ各国の賓客が向かっている最中だろう。

「ど……っ、どうしよう……琥珀~」

 今のところ獣化が解けない事以外で被害報告は受けていないが、こんな非常事態は歴史書にも書かれていない。
 女王フリーシアが崩御し王が不在の今、官僚達も半数が獣化してしまって為すすべもない。

 ヴェルは無事であったが、まだ幼い彼にはどうしようもない。

「紅国以外の国の賓客には獣人はいないんだろう?それにクライシア大国からアルハンゲル大公が向かっているんだろう?一先ず彼を待とう」

 アルハンゲル元王配。本人に意志や気力もなくどこか捨て鉢的で官僚達の都合の良い傀儡王配であったが、地頭が良く仕事は出来て統治能力のある男だった。
 現在は王配の座を捨て他国へ渡ったが、この度ヴェルの誕生パーティーにやってくるそうだ。

 ーー 一方で、シャルロット達を乗せた馬車は長かった砂漠を越えてようやくオーギュスト国の中心街へとやってきた。

「わぁ~~!」

 窓の外には異国の風景が広がっている。
 それに夏のように暑い。
 田舎のようだが平和でラテン的な雰囲気に、シャルロットの胸は弾んだ。

「あの大きなモニュメントって白竜様かしら?」

 街中には凛々しい白竜の像が立っている。

「初めて来たわ」

 リリースも興味津々に街の様子を見ている。

「宮殿は丘の上にある。あともう少しだ」

 アルハンゲルは淡々と呟いた。

「ぎゃあ!」

「うわっ!!」

 突然、馬車に体当たりするような突風が吹いて外にいた騎士達が悲鳴をあげた。
 馬車の中にいたシャルロット達も急に止まった馬車に身を揺らす。
 シャルロットは目の前にいたアルハンゲルに倒れかかってしまっていた。シャルロットの身体を咄嗟に支えたアルハンゲル。

「どうされた!?」

 アルハンゲルは外の騎士に向かって叫んだ。
 シャルロットは頰を少し赤くしながら慌ててアルハンゲルの胸から体を剥がし、座席に座り直した。

「コハン団長とキャロルが……」

 シャルロット達が馬車を降りると、そこには大型犬と白うさぎの姿。
 獣人であるコハンとキャロルのようだ。

「どうして突然獣化……?も、戻れない!」

 二匹の動物達はパニックを起こした。
 呆然としていると、強い風が砂埃や街路樹の葉っぱを巻き上げてさらにこちらに襲いかかる。

 アルハンゲルを集中攻撃しているようだ。

「アル!」

 やがて風は空へ向かって去っていた。

「……え?」

 アルハンゲルは人間の姿のまま唖然とした表情で立っている。
 獣化はしていない。

「どう言う事なの?」

 よく街の様子を見渡せば、あちらこちらで動物の姿を見掛ける。
 皆 獣化した獣人たちだ。

 獣達はこちらの様子を心配そうに見ていた。

「一体これは何なんだ?」

「猫神様の祟りだ~~!恐ろしや~~!」

 軒下で震えているペリカンに、ムジナ。地面に伏せてうな垂れているカンガルーの親子。

「みんな、獣化したまま戻れないのよ!今この病気が流行っているの!」

「急に突風が吹いてね、突然獣化するの!」

 平民のおばさん達が教えてくれた。

「何ですって!?」

 アルハンゲルは声を出して驚いた。

「戻れない!?一生このままなんですか!?」

「あたしも知らないわよう~~」

 ウサギのキャロルはおばさんに食いかかる。
 平民のおばさんは病を恐れてさっさと退散し屋内に避難してしまった。

 シャルロットはユハと顔を見合わせた。

「まあ、人間や魔人には害はないようだね……」

「でも…獣人のアルも平気みたいですわよ?どうして……」

「とりあえず宮殿へ急ぎましょう!コハンさんやキャロルさんは馬車の中へ乗って!私が馬に乗り先導します」

「馬子は俺っちに任せて☆」

 動物姿ではとても馬車を操縦できないし馬にも乗れない。
 アルハンゲルとユハ、二人はそれぞれ馬の元へと向かった。

 白うさぎを抱っこするとシャルロットも馬車の中へ戻った。

 不安げに耳を垂らす白うさぎの背中をさすった。

「姫様……申し訳ありません」

「あなたのせいじゃないわ。早く元に戻れる方法を一刻も早く探しましょう?」

 オーギュスト国へやって来て初日の昼下がり。
 混乱のまま一行は宮殿を目指した。
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