シャルロット姫の食卓外交〜おかん姫と騎士息子の詰め所ごはん

ムギ・オブ・アレキサンドリア

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奪われたお城と皇子の愛を取り戻せ!?〜シャルロットの幸せウエディングパレード

レイナとの接触

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議会が開かれる本殿の赤の間と呼ばれる部屋にはたくさんの官僚たちが集まっていた。

現在の王、レイメイが10年前に新設した赤の間には真四角に席が配置されており、右側には貴族から選出された議員が大臣らが座り、左側には平民出身の政治家は有識者が座り、主に内政について話し合う。

王が座る席は彼ら1番後ろにあった。
大体のことは宰相が議長を務め皆で話し合い、王は最終的な決定を行う程度でほとんど発言はしない。

かつてこの国が帝国だった前の時代は王(皇帝)がワンマンであれこれ決めていたし、議員も貴族、お気に入りで固めていたのだがーー。
従来の戦争による領土拡大より工業や経済で国を発展する方向へシフトしたりと、レイメイは長く続いていた国の体制をも大きく変えてしまったのだ。

破天荒すぎる彼のことをよく思わない貴族も居た。

「どうぞ」

グレース皇子はワゴンに乗ったティーポットを手にしカップに紅茶を注ぐと、それを議員らの前に置いた。

「あっ……ありがとうございます……グレース皇子」

小太りな大臣が激しく動揺している。
顔は真っ青だ。

グレース皇子はピンと背筋を伸ばし、毅然とした態度で紅茶を淹れている。
その様は一枚の絵のように美しい。

隣り合っている貴族たちの顔も顔面蒼白だったり、冷や汗たっぷりだったりと様々で、窓際の席で足を組みながら座っている白髪頭の貴族だけが小馬鹿にするような笑みを浮かべて不遜な態度だった。

彼はゴルソン侯爵だーー。

「皇子様に手ずからお茶汲みをさせるなど、我が王は何をお考えになっているんでしょうか?」

嫌味っぽく口を出した。
後ろの席に座っている王は黙ったまま紅茶を飲む、その隣にいた補佐官や宰相が苦笑いをしていた。

「大事な話し合いの場に乱入して申し訳ない。国の運営について勉強をさせていただきたく、お茶汲みでも良いから参加させてくれと自分で頼んだんだ」

グレース皇子はゴルソン侯爵に怯むことなく堂々と応えた。

「今まで国のことには全く無関心であった御坊ちゃまが…これはこれはご立派になりましたね」

「今までは皇子としての自覚が足りていませんでした、心を入れ替えて真面目に取り組んでいく所存です」

皮肉たっぷりの笑み、だがグレース皇子はそんなあからさまな嘲笑には煽られなかった。
グレース皇子の側にいた人の良さそうな笑顔を浮かべる年老いた貴族の議員メハードは笑った。

「オホホ、昨日まではヨチヨチ歩きしていた殿下が、もうこんなに立派なになられて…メハードは大変感動しておりますぞ。ああ、陛下、将来も安泰ですなぁ」

心からの発言だろう。
この中で一番力を持つ年配貴族のひと声に、次々と同調するような声が上がる。
グレース皇子は安堵したかのように笑う。
ゴルソン侯爵の睨むような視線がグレース皇子の背中に突き刺さる。

(かなり苛立ってるようだ……。いろいろと不正が明るみに出て焦っているんだろう)

グレース皇子は考えていた。
メハード侯爵は王レイメイ派の代表貴族だ。他の貴族からも信頼は厚く、人格者。人脈は広く、公爵ほどには及ばないが権力も持っている。
普段は優しいおじいちゃんで、グレース皇子のことも幼い頃からとても可愛がっていた。

グレース皇子は議会の様子を王の隣で立ち見し、話し合いの内容をびっしりとノートに書き上げていた。
奇妙そうにグレース皇子をジロジロ見る貴族たちの視線にも慣れた。

*

「うん…貴族らの名前と顔は覚えた。大体の派閥も」

お茶汲みを通して普段関わり合いのない貴族達とも少し会話ができた。
一口に貴族と言っても訝しげな態度の人、好意的な態度の人、媚びを売る人様々だ。
一筋縄ではいかないのだろう。

議会が終わって本殿内の廊下を1人で歩いていると、突然目の前で侍女がすっ転んだ。

「キャ!」

「?」

目の前で派手に転んだのはーーシャルロットの世話係のライカ・レイナだった。
彼女は目をウルウルさせてむくりと身体を起こし、グレース皇子の顔を見ると赤面して慌てて立ち上がった。

(ここは赤の間や大臣の執務室が集まる場所だ、何故あいつがいるんだ…)

グレース皇子は呆れた顔をして、何も言わずにレイナの横を素通りした。

「…チッ」

背後で微かに舌打ちする声が聞こえた。
それからすぐにレイナが賑やかな声でグレース皇子の目の前に現れた。

「グレース様、今 議会が終わったの?」

「退け、お前には関係ないことだろう。俺に気安く話しかけるな」

「あの…あたし、グレース皇子に何かしましたぁ?」

媚びを売るような上目遣いに辟易するグレース皇子。
彼女はグレース皇子の腕に絡み付いてきた、グレース皇子はそれをすぐに振り払う。

「無礼な!お前のことなど知らん!」

声を荒げた。
いつもならすぐにも騎士なり執事なりが駆け付けてくるのに、辺りを見渡しても誰もいない。
議会の間、廊下や控え室で待機しているように命じてたはずだが。

「誰も来ませんよ~?」

レイナは黒い笑みを浮かべる。

「なんだと…?」

ふと視線を彼女の背後の窓に移した。
窓際には黒い香炉がーー気付けば香炉から出た煙が廊下に立ち込めていた。

手足が痺れ硬直する。
身体は動かないし、声も出せなかった。
魔法では無い、神経に作用する薬草を使ってるんだろうーー。

「大丈夫です、時間が経てば治りますから」

弾むような明るい声。

「あたしだってこんな真似したくないんです」

「……!」

彼女がどこからか取り出したのは一本の長い針だ。
おどろおどろしい光を放ってる、ただの針ではなさそうだ。

彼女は躊躇なく、それをグレース皇子の首に突き刺した。

「ーーーー!?」

痛みはないが、針が体内へ溶け込んでいくような気味の悪い感触がした。
すぐにグレース皇子の瞳から光は抜け、意識は消え失せてしまった。

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