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ワガママ王子様の更生プログラム〜ミレンハン国の俺様王子、騎士団で職業体験する
失礼なお客様
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ーー騎士団の調理場。
シャルロットは侍女服姿でかまどの前に立ち、アヴィやリッキーと共に騎士達の夕食作りに励んでいた。
今日のメイン料理は、ゆで卵をひき肉で包んでパン粉をつけて揚げたスコッチエッグ。
それから、クロウの畑で採れた大根をバターでソテーした大根のステーキに、人参のポタージュだ。
「なんだ?城の中に料理屋があるのか?」
料理の匂いにつられてやってきたのか、調理場の勝手口からいつの間にか知らない男が侵入してきた。
「どっ~どちら様で?」
アヴィが恐る恐る聞く。
男はフンっと不遜な態度で調理場に入ってきた。
「ミレンハン国の王子ゲーテだ」
「えええっ!?」
調理場に居た3人は驚愕した。
「俺は今腹を空かせている、さっさと料理を用意しろ。席はあちらか?」
ゲーテ王子は調理場を経由して調理場と連なる隣の食堂に入っていった。
食堂にいた騎士達もギョッとしている。
「恐れ入りますが ここは飲食店ではありません。騎士団の寮舎ですわ」
グレース皇子が急な賓客と本殿で一緒に晩餐をとることになったと小一時間前に報せに来ていた。
その相手はおそらくこのゲーテ王子だろう。
「おい下女!俺様がさっさと持ってこいと言ってるんだ!早く持ってこないか!」
「なんですか!その態度は!それが人に物を頼む態度ですか!?」
シャルロットは黙っていられず声を上げて反論した。
しばし睨めっこを続けるが、男はフンっとそっぽうを向いて不遜な態度だ。
「わかりました」
王子様とはいえ、態度の悪い人だわ。
もうすぐ騎士団の夕食の時間だし、さっさと食べて出て行ってもらおう。
シャルロットはハァっとため息をつきながら、一膳分の料理を彼に振る舞った。
「……いただきますは?」
無言で食べ始めようとする彼を制した。
「ハア?なんだそれは」
「食事を取るときに言う言葉です。ほら、言ってください。でないと料理はあげません」
「生意気な下女だな!クビにしてやろうか!」
「ほら、言うの」
お節介かもしれないが躾のつもりでキツく彼に対応した。
「ぐっ……いただきます……これでいいか?」
屈辱そうに小声で言うと、シャルロットはニッコリ笑って「はい、どうぞ」と声をかけた。
彼はよっぽどお腹を空かせていたのかスコッチエッグをガツガツ食べた。
「美味い」
食べっぷりはいいし、反応は素直だ。
本当に美味しそうに食べる人だ。
「これはなんだ?」
「大根のステーキです」
「大根は嫌いだ」
「好き嫌いはいけません、一口くらいお食べになって?」
かなり抵抗していたが、何度か食べるように促すと彼はやっと口に運んだ。
「う、美味い」
「でしょう?大根の頭の部分を使ってるから辛味もなくて甘くて美味しいのよ。隣の人参のポタージュも、牛乳とクリームでまろやかに仕立てていますわ」
おずおずとオレンジ色のスープをスプーンに掬ってゲーテ王子は味わった。
「うん……人参は大嫌いなはずだがこれは食べられる」
「でしょう!子供の頃人参が嫌いだった息子のために考えたレシピなの」
何だかんだ王子様は完食した。
そのタイミングでゲーテ王子の騎士とグレース皇子が寮舎にやってきた。
騎士団の誰かが報告に行ったのだろう。
「グレース皇子?何故ゲーテ王子が寮舎に来たのかしら」
「先刻、晩餐会を急遽始めたのだが、城の料理が気に入らないと怒って飛び出したんだ。まさかこんなところで食べているとは」
「申し訳ございません…。ゲーテ王子は大変偏食家でして……」
「まあ」
「俺は美味いものしか口にしない主義なんだ」
偉そうだ。
「だが、この下女の料理は気に入ったぞ!おい、お前!うちの城に来い!俺の食事係として雇ってやるぞ」
ふふんと高飛車に命令されて、シャルロットは苦笑した。
「お断りします」
すかさずグレース皇子はシャルロットの真隣に立ち、そしてゲーテ王子に見せつけるように彼女の腰に手を回した。
「ゲーテ王子、紹介が遅れた。彼女は下女ではない、オリヴィア小国の姫であり俺の婚約者のシャルロットだ」
シャルロットはなんだか気恥ずかしくて俯いてしまった。
しかし、顔をしっかり上げて、ゲーテ王子にお辞儀をした。
「はじめまして、シャルロットです」
ゲーテ王子は非常に不満そうな顔をしていたが、おとなしく自国の騎士を連れて本殿へ戻って行った。
グレース皇子も退散した。
「わー、今日は肉玉子だー」
ユーシンがチワワのクロウを連れてご機嫌そうに寮舎に戻ってきた。
「お帰りなさい。クロウもいらっしゃい、初出勤お疲れ様です」
クロウは社会奉仕活動の一環で第二騎士団でバイト中らしい。
今日は山へ行って討伐に参加していたそうだが……。
「シャルロット、見て、結構ポイント貯まったよ。魔物10匹も駆除したの!」
クロウは嬉しそうにシャルロットにカードを見せた。
まるでラジオ体操の出席カードのようだ。
働きに応じてグレース皇子がハンコをくれるそうで、これが全部埋まったら元の姿に戻してもらえるらしく、クロウは日夜あっちこっちに顔を出してバイトに励んでいた。
昨夜は城でネズミ捕り、その前は城に住んでる侍女たちの子供の子守り。
「まあ、えらい!」
褒めてあげると犬らしく尻尾を振って喜んだ。
「シャルロット~、人間の姿に戻ったら城下町でデートしようね!」
「はいはい、楽しみにしてるわ。アルバイト、頑張ってね」
可愛いからこの姿のままでいてくれても構わない……と密かに思うシャルロットであったが、本人はやる気を出しているので、水を差すまいと心の中だけで呟いた。
*
「あの、ゲーテ王子の執事さんですよね」
翌朝、城でゲーテ王子の隣に立っていた初老の男に声を掛けた。
彼はミレンハン国の執事らしい。
「野菜料理のレシピですわ。ミレンハン国の料理人達に渡して欲しいんです。野菜嫌いの方でも美味しく野菜が食べられるようなメニューの作り方を書いておきました」
シャルロットは紙の束を執事に渡した。
執事は深々と礼を言って、午後にはクライシア大国の城を出て帰国した。
(台風のような人だったわ…)
シャルロットはふと思い出して苦笑いした。
シャルロットは侍女服姿でかまどの前に立ち、アヴィやリッキーと共に騎士達の夕食作りに励んでいた。
今日のメイン料理は、ゆで卵をひき肉で包んでパン粉をつけて揚げたスコッチエッグ。
それから、クロウの畑で採れた大根をバターでソテーした大根のステーキに、人参のポタージュだ。
「なんだ?城の中に料理屋があるのか?」
料理の匂いにつられてやってきたのか、調理場の勝手口からいつの間にか知らない男が侵入してきた。
「どっ~どちら様で?」
アヴィが恐る恐る聞く。
男はフンっと不遜な態度で調理場に入ってきた。
「ミレンハン国の王子ゲーテだ」
「えええっ!?」
調理場に居た3人は驚愕した。
「俺は今腹を空かせている、さっさと料理を用意しろ。席はあちらか?」
ゲーテ王子は調理場を経由して調理場と連なる隣の食堂に入っていった。
食堂にいた騎士達もギョッとしている。
「恐れ入りますが ここは飲食店ではありません。騎士団の寮舎ですわ」
グレース皇子が急な賓客と本殿で一緒に晩餐をとることになったと小一時間前に報せに来ていた。
その相手はおそらくこのゲーテ王子だろう。
「おい下女!俺様がさっさと持ってこいと言ってるんだ!早く持ってこないか!」
「なんですか!その態度は!それが人に物を頼む態度ですか!?」
シャルロットは黙っていられず声を上げて反論した。
しばし睨めっこを続けるが、男はフンっとそっぽうを向いて不遜な態度だ。
「わかりました」
王子様とはいえ、態度の悪い人だわ。
もうすぐ騎士団の夕食の時間だし、さっさと食べて出て行ってもらおう。
シャルロットはハァっとため息をつきながら、一膳分の料理を彼に振る舞った。
「……いただきますは?」
無言で食べ始めようとする彼を制した。
「ハア?なんだそれは」
「食事を取るときに言う言葉です。ほら、言ってください。でないと料理はあげません」
「生意気な下女だな!クビにしてやろうか!」
「ほら、言うの」
お節介かもしれないが躾のつもりでキツく彼に対応した。
「ぐっ……いただきます……これでいいか?」
屈辱そうに小声で言うと、シャルロットはニッコリ笑って「はい、どうぞ」と声をかけた。
彼はよっぽどお腹を空かせていたのかスコッチエッグをガツガツ食べた。
「美味い」
食べっぷりはいいし、反応は素直だ。
本当に美味しそうに食べる人だ。
「これはなんだ?」
「大根のステーキです」
「大根は嫌いだ」
「好き嫌いはいけません、一口くらいお食べになって?」
かなり抵抗していたが、何度か食べるように促すと彼はやっと口に運んだ。
「う、美味い」
「でしょう?大根の頭の部分を使ってるから辛味もなくて甘くて美味しいのよ。隣の人参のポタージュも、牛乳とクリームでまろやかに仕立てていますわ」
おずおずとオレンジ色のスープをスプーンに掬ってゲーテ王子は味わった。
「うん……人参は大嫌いなはずだがこれは食べられる」
「でしょう!子供の頃人参が嫌いだった息子のために考えたレシピなの」
何だかんだ王子様は完食した。
そのタイミングでゲーテ王子の騎士とグレース皇子が寮舎にやってきた。
騎士団の誰かが報告に行ったのだろう。
「グレース皇子?何故ゲーテ王子が寮舎に来たのかしら」
「先刻、晩餐会を急遽始めたのだが、城の料理が気に入らないと怒って飛び出したんだ。まさかこんなところで食べているとは」
「申し訳ございません…。ゲーテ王子は大変偏食家でして……」
「まあ」
「俺は美味いものしか口にしない主義なんだ」
偉そうだ。
「だが、この下女の料理は気に入ったぞ!おい、お前!うちの城に来い!俺の食事係として雇ってやるぞ」
ふふんと高飛車に命令されて、シャルロットは苦笑した。
「お断りします」
すかさずグレース皇子はシャルロットの真隣に立ち、そしてゲーテ王子に見せつけるように彼女の腰に手を回した。
「ゲーテ王子、紹介が遅れた。彼女は下女ではない、オリヴィア小国の姫であり俺の婚約者のシャルロットだ」
シャルロットはなんだか気恥ずかしくて俯いてしまった。
しかし、顔をしっかり上げて、ゲーテ王子にお辞儀をした。
「はじめまして、シャルロットです」
ゲーテ王子は非常に不満そうな顔をしていたが、おとなしく自国の騎士を連れて本殿へ戻って行った。
グレース皇子も退散した。
「わー、今日は肉玉子だー」
ユーシンがチワワのクロウを連れてご機嫌そうに寮舎に戻ってきた。
「お帰りなさい。クロウもいらっしゃい、初出勤お疲れ様です」
クロウは社会奉仕活動の一環で第二騎士団でバイト中らしい。
今日は山へ行って討伐に参加していたそうだが……。
「シャルロット、見て、結構ポイント貯まったよ。魔物10匹も駆除したの!」
クロウは嬉しそうにシャルロットにカードを見せた。
まるでラジオ体操の出席カードのようだ。
働きに応じてグレース皇子がハンコをくれるそうで、これが全部埋まったら元の姿に戻してもらえるらしく、クロウは日夜あっちこっちに顔を出してバイトに励んでいた。
昨夜は城でネズミ捕り、その前は城に住んでる侍女たちの子供の子守り。
「まあ、えらい!」
褒めてあげると犬らしく尻尾を振って喜んだ。
「シャルロット~、人間の姿に戻ったら城下町でデートしようね!」
「はいはい、楽しみにしてるわ。アルバイト、頑張ってね」
可愛いからこの姿のままでいてくれても構わない……と密かに思うシャルロットであったが、本人はやる気を出しているので、水を差すまいと心の中だけで呟いた。
*
「あの、ゲーテ王子の執事さんですよね」
翌朝、城でゲーテ王子の隣に立っていた初老の男に声を掛けた。
彼はミレンハン国の執事らしい。
「野菜料理のレシピですわ。ミレンハン国の料理人達に渡して欲しいんです。野菜嫌いの方でも美味しく野菜が食べられるようなメニューの作り方を書いておきました」
シャルロットは紙の束を執事に渡した。
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