シャルロット姫の食卓外交〜おかん姫と騎士息子の詰め所ごはん

ムギ・オブ・アレキサンドリア

文字の大きさ
197 / 262
新婚旅行はミレンハン国へ!猫になったシャルロットとポチたま大論争勃発!?

恐怖のレストランへご招待

しおりを挟む
木々が生い茂った山奥に、レンガ造りの大きな屋敷があった。
ここではミレンハン国の王室とも関わりが深い老いぼれた公爵夫妻が隠居している。

ミレンハン国王の伯祖母で、姪孫である国王を『ボクちゃん』と気安く呼んで猫可愛がっている。
他国から嫁入りしてきたナージャ王妃を姑のごとくイビリ倒し、気の強い王妃も黙ってはいない性格なので対立し、顔を合わせる度に激しく言い争っていた。
社交界から退いたものの、未だに宮殿内では権力を握っている。

そのシーザー公爵夫人から、ヴィラ夫人や密猟者の男達の元へ食事会の招待状が届いた。

『我が公爵家のキティの誕生パーティーが某月某日の夕刻より催されます。
この日のためだけに、庭の離れに、一夜限りの特別なレストランをオープンいたします。ぜひ、いらしてください』

小粋なメッセージ。

公爵夫人が飼っている白猫キティのために、新鮮な肉を買い取りたいとの話だった。
山奥に住んでいるから肉屋から取り寄せると夏場はどうしても傷んでしまい、手間が掛かってしまうとのことーー。
この食事会のために、わざわざ料理人も呼んでいるそうだ。

「私だけではなく猟師らまで招待するなんてーー山で、鹿やイノシシでも狩ってもらうつもりなのかしら?」

不可解に思ったものの、招待状をもらったヴィラ夫人はすっかり有頂天になり舞い上がっていた。

シーザー公爵夫人の目に留まり、お気に入りになれたら、社交界では最強の後ろ盾を得られる。
夫人から国王に進言してもらって、公妾ーーあわよくばナージャ王妃を離縁させ新たな王妃の座に就かせてもらえるかもしれない。

ヴィラ夫人の胸は弾んだ。

「……しかし、軽装で、しかも徒歩で行かなきゃいけないなんて面倒ね」

招待状にはそう指定されていた。

*

山の麓でひとりの青年が待機していた。

「ようこそ、いらっしゃいました。お荷物お持ちいたします。レストランまでご案内いたしますーーどうぞ」

「えっと……」

「シーザー公爵に雇われている小間使いのユーシンと申します」

ニコニコ穏やかに笑うユーシンはヴィラ夫人らから荷物や銃を受け取ると、「近道だ」と言って獣道を進んだ。

「ちょっと~!靴やドレスが汚れるじゃないのよ!」

「大丈夫です。ドレスコードはありませんし、屋敷に着いたら湯浴みをしていただきます」

「へ……?」

山の中程まで進んだ辺りで突然ユーシンは走り出し、木陰に消えて行った。

「あ!ちょっと!あんた、どこへ行くのよ!?」

完全にユーシンを見失ってしまった一行は、とりあえず前に向かって進んだ。
背の高い草をかき分け進むと、小さな看板が見えてきた。
公爵家の屋敷の場所を教える道導だ。

1~2時間ほど歩き続けてヘトヘトになった頃ーー。
見えてきたレンガ造りの大きな屋敷の門前で、今度は金髪の美少年キャロルが待っていた。

「ようこそ、おいでくださいました。バトラーのキャロルです、さあさ、中へお入りください」

「ええ……」

正面入り口ではなく、何故か裏口から屋敷の中へ通された。
そこでメイド服姿のシャルロットとウェスタ、黒いスーツを着た大男達が現れて客人を取り囲んだ。

「洋服を脱いでください、泥や汗を流しましょう」

「ええ?」

身に付けていた物を強引に剥ぎ取られ、ガウンを羽織らされ裸足のまま長い廊下を歩くように促された。
そして浴室ではなく厨房までやってくると、更に奥にある薄暗い部屋の中へ押し込まれる。

「こ……ここって!?」

ーー屠殺場だ。
入室するなり問答無用で、冷水をひっかけられた。

生暖かい血の臭いが漂う部屋の中。
暗くてよく見えないが、奥には、首が切り落とされ、毛や皮を削がれ内臓を綺麗にくり抜かれた牛が天井から逆さに吊られていた。
真下にある水を張った樽の中には牛の内臓や尾が打ち込まれている。

「ヒィ!なっ……なんなのよ!?なんの真似よ?」

逃げようとしたところをオーギュスト国の騎士らに取り押さえられた。

「いや!離しなさい!」

「クックックッ……今夜は国中の猫を招いてパーティーをするのじゃ!お前の身体をバラバラに切断して、骨がトロトロになるまで煮込んで、シチューを作るのだ。ああ、ひき肉にして腸に詰め込んでウインナーにしてやろうか?その長い髪はカツラにして売り捌いてやろうか」

猫神様が極悪面でケラケラ笑いながら登場した。
わらわらと屠殺場に猫が集まって来た。

「ヒィ~!」

首元にナイフを突き付けられた密猟者の男たちは、腰を抜かしてしまった。

「ほうら。猫ちゃん達もみんなお腹を空かせて待ってるわよ。うふふ、美味しく料理してあげますわ!」

包丁を黙って研いでいたシャルロットは立ち上がり、包丁を手にじわじわと拘束されているヴィラ夫人に迫って来た。

天使のような笑顔でーー。

「キャアアアア!」

愚かな客人どもは金切り声を上げ、泣き喚いた…。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

若返った老騎士の食道楽~英雄は銀狼と共に自由気ままな旅をする~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
あるところに、数百年周期で現れる魔王がいた。 人族から生まれ、闇に魅入られし者、妖魔を統べる魔王と呼ばれる存在。 度々現れては、人々を恐怖のどん底に貶めてきた。 此度、その魔王との戦いに終止符を打った男がいた。 名をシグルド卿といい、六十歳を迎えた老人の男だ。 元平民にも関わらず、爵位を得て史上初の将軍にまで上り詰めた英雄である。 しかし、魔王と一騎討ちの末に相打ちになった……と世間では言われていた。 当の本人は実は生きており、しかも若返っていた。 そして自分が生きていることが知られると、色々と面倒なことになると悟った。 それにどうせなら、自由の身になって世界を旅したいと。 これは役目を終えた英雄が旅をし、様々な人と出会い、美味い物を食べていく物語。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。

希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。 手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。 「このまま死ぬのかな……」 そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。 ​そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。 試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。 ​「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」 ​スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。 たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。

処理中です...