カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

文字の大きさ
80 / 421
第四章 黒の主、オークション会場に立つ

77:死にたがりの三眼

しおりを挟む


■アネモネ 多眼族アフザス 女
■17歳 三眼


 私は本当に「死にたい」のだろうか。
 どこかで「生」に惹かれているのではないか。
 そう考える事が時々ある。


 多眼族アフザスという種族は元を辿ればエクスマギア魔導王国の領土に起源を持つとされる。
 当然、導珠族アスラと同様に魔法に偏った性質を持つ。

 特徴的なのはやはり″眼″だろう。
 多い者だと六眼や八眼の者もいて、私のような三眼などは数だけは多いが素質は低いとされている。
 眼の数が多ければ魔法に長け、少なければ弱い。そんな大まかな印象だ。


 私の実家は貴族も相手にしている大店の商家だった。
 貴族にほど近く、しかし貴族ではない、裕福な平民といった所。
 貴族で″三眼″となれば落ちこぼれ同然だが、平民である以上、通常はそこまで酷い扱いは受けない。

 もっとも両親は貴族かぶれ・・・・・の平民であった為、産まれた時に三眼であった事に残念がってはいたようだが。


 しかし実際は、両親は私を残念がるどころか嫌厭していた。
 毛嫌い、いや、恐れていたと言っても良いだろう。

 なにせ私の額の″眼″は『魔眼』だったのだから。


 ―――魔眼。

 瞳に魔法陣を宿した眼。
 それは多眼族アフザスにとっては『呪われた存在』と呼ぶべき者。
 ″眼″に魔力を集め、″眼″で優劣をつける多眼族アフザスにだけ現れる稀有な存在だ。
 百人に一人とも千人に一人とも言われるそれは、過去幾度となく多眼族アフザスの中に現れた。


 魔眼の種類は様々で、【麻痺】【遠視】【暗視】【視線のみでの魔法発動】など個人によって異なる。
 酷いものだと【即死】や【石化】といった場合もあり、幼い子供が意図せずに魔眼を発動させた事による事故が過去に多くあったという。
 だからこそ『呪われた存在』として多眼族アフザスの中では嫌厭される。


 私の場合は【看破】の魔眼だった。

 物の真贋を見抜くそれは商家としては非常に有用だろう。
 売り買いする商品に偽物が混じる事がなく、商談しても相手の嘘を見抜ける。
 だからこそ両親も私を育てたのだと思う。

 ただ、有能な子供を育て上げ、稼業を盛り立てたいというのは普通の種族・・・・・の場合だ。
 私の両親は多眼族アフザスであるが故、魔眼持ちの子供を嫌厭する。

 魔眼持ちの呪われた娘。
 しかし商売には使えるから育てよう。
 本当ならば顔も合わせたくないが仕方ない。

 そう考えているのが幼い頃から分かってしまっていたのだ。


「まぁ、アネモネは本当に優秀ね~」

「かわいい娘だ、将来が楽しみだな」


 そう言った声が全て嘘だと分かるのだ。
 両親の褒め言葉が、ただのお世辞・・・・・・だと。
 ただでさえ大店の商家など詐欺まがいの嘘が日常化しているもの。
 日頃から嘘にまみれた生活に私は耐えきれなかった。

 毛嫌いはしていても育てなければいけない。
 だから褒めるし、学校にも通わせた。そういう事なのだろうが……


「アネモネちゃんかわいい~!」

「頭良いよね~、うらやましい~!」


 嘘、嘘、嘘。
 学校へ行っても周りは嘘つきだらけ。
 せっかく入学金を出したのに不登校となった娘に両親はさらに幻滅した。

 誰からも嫌われ、誰からも必要とされない。
 毛嫌いされる呪われた存在。
 私は人ではなく嘘を見抜くただの道具なのだ。


 そして私は自殺を試みた。

 しかし死にきれなかった。
 計三度の自殺を試みたが、どれも失敗した。

 両親はさすがに三度目で全てを諦めたらしい。
 利用価値があるからと魔眼持ちでも無理して育てたというのに、勝手に死のうとしている娘。
 そんな私にいい加減見切りをつけた。


「お前は自分をなんだと思っているんだ!」


 呪われた道具ですよね。


「なんのために今まで育てて来たと思ってる!」


 道具を利用したかっただけですよね。


「どれほど私たちが愛情を込めてきたか! お前は分かっていない!」


 はい、嘘。


 私は父の知り合いの奴隷商人に売られた。
 名目は借金奴隷。
 実家が裕福なのにおかしな話だ。

 しかし奴隷になろうが、どこに売られようが関係ない。
 私はもう死んだも同じ。
 どうせ誰からも必要とされず、誰からも毛嫌いされる。
 一人で死んでいくだけの呪われた存在なのだから。


 さて、いつ死のうか。
 しかし奴隷となれば自殺も難しい。

 ああ、神はなぜ楽に死なせてくれないのか。
 私に何を望むというのか。
 いや、神など居ないのかもしれない。
 私ごときに神などいるはずがない。


 そんな事を思いながら奴隷商の馬車で送られた先は、【混沌の街 カオテッド】だった。
 そこで私は出会う事になる。




「俺は『女神の使徒』なんかじゃない」


 ……嘘……だと?


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

異世界帰りの英雄は理不尽な現代でそこそこ無双する〜やりすぎはいかんよ、やりすぎは〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
<これからは「週一投稿(できれば毎週土曜日9:00)」または「不定期投稿」となります> 「異世界から元の世界に戻るとレベルはリセットされる」⋯⋯そう女神に告げられるも「それでも元の世界で自分の人生を取り戻したい」と言って一から出直すつもりで元の世界に戻った結城タケル。  死ぬ前の時間軸——5年前の高校2年生の、あの事故現場に戻ったタケル。そこはダンジョンのある現代。タケルはダンジョン探索者《シーカー》になるべくダンジョン養成講座を受け、初心者養成ダンジョンに入る。  レベル1ではスライム1匹にさえ苦戦するという貧弱さであるにも関わらず、最悪なことに2匹のゴブリンに遭遇するタケル。  絶望の中、タケルは「どうにかしなければ⋯⋯」と必死の中、ステータスをおもむろに開く。それはただの悪あがきのようなものだったが、 「え?、何だ⋯⋯これ?」  これは、異世界に転移し魔王を倒した勇者が、ダンジョンのある現代に戻っていろいろとやらかしていく物語である。

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
よくゲームとかで敵を回復するうざい敵キャラっているだろ? ――――それ、オレなんだわ……。 昔流行ったゲーム『魔剣伝説』の中で、悪事を働く辺境伯の息子……の取り巻きの一人に転生してしまったオレ。 そんなオレには、病に侵された双子の妹がいた。 妹を死なせないために、オレがとった秘策とは――――。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

処理中です...