カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第四章 黒の主、オークション会場に立つ

78:逃げ出した針子



■ドルチェ 針毛族スティングル 女
■14歳 セイヤの奴隷


 私は針毛族スティングルのドルチェ。
 家はカオテッドの北西区で服飾屋を経営している。
 裁縫の得意な針毛族スティングルは、服飾や布地を扱う仕事に就く事が多い。


 私が物心つく前にカオテッドへと来たらしいから、出来てまだ十年のカオテッドとしては古株になるのだろう。
 うちの服飾屋は結構好評だったようだ。
 私も店が繁盛していた記憶しかない。

 経営が苦しいという事もなく、両親共に笑顔の絶えない家庭だったと思う。
 私も大きくなってからは手伝いとして働き、近所の常連さんたちにも良くしてもらった。


 それが変わったのは、いや、変わったと気付いたのはここ一年ほどだ。

 両親はいつの間にか【ゾリュトゥア教団】に入信していた。
 【ゾリュトゥア教団】っていうのは、今の世界は間違ってるから邪神ゾリュトゥアを復活させて浄化してもらおうっていう、いわゆる終末思想を掲げた邪教だ。

 北西区の広場などで説法をしている黒いローブの人たちを時々見かける。
 何なんだこの人たちはと思っていたが、まさか自分の両親が入信するとは思わなかった。


 気付いたのは店のカウンターに真っ黒な邪神像が置かれたからだ。


「お父さん、なにこれ」

「これは邪神ゾリュトゥア様の像さ。神々しいだろ? こうやって毎日祈るんだ」

「貯金全て使ったけどいい買い物したわね~、ご利益あるわよ~」

「えっ」


 真面目にそう言った両親に衝撃を受けた。
 何を言っているんだろうと理解できなかった。
 私にも祈りを強要され、とりあえず言われるがままに祈ったフリをしていた。

 でも、店の入り口から良く見えるカウンターに邪神像が置いてあったら、お客さんが入るわけない。
 そんなこと私にだって分かる。
 それでも両親は祈り続け、寄付を続けた。

 経営が悪化し、物を売り払い、食事も減っていく。
 転がり落ちるように生活が変わっていく。
 しかし両親は自分たちが間違っているとは思わない。
 むしろ正しい事をしているのに苦しめられているのだから、やはり邪神を復活させねばと躍起になって祈るのだ。


 私は私なりに両親をどうにかしよう、店をどうにかしようと調べたり動いたりと頑張ってみたが、結局何も出来ないまま、ただ生活が苦しくなっていくだけだった。


 そんなある日、夜、両親の部屋から声が聞こえたんだ。


「あなた、もうお布施するものが……」

「大丈夫だ、ドルチェがもうすぐ成人になる。そうすれば邪神様に捧げられる」

「そうね、そうすればあの娘の魂も邪神様の御許へ行けるわ」

「ああ、浄化だ。ドルチェもきっと喜ぶだろう」


 ……っ!?

 え……え……つまり……私は……


 私は逃げた。
 最低限の荷物だけ持って、とりあえず家から飛び出した。
 恐ろしくて、震えて、泣きながら走った。

 どうしてこんな事に。
 なぜ両親は変わってしまったのか。
 私はどうなってしまうのか。
 何も答えが出ないまま、とりあえず逃げた。

 でも行く当てなどない。
 お店の常連さんやご近所さんではダメ。
 衛兵さんに保護? 商業組合? 区長様に訴え?
 ダメだダメだダメだ。

 誰が邪教徒か分からない。
 助けを求めた先が【ゾリュトゥア教団】と繋がってるかもしれない。
 もう誰も信じられない。


 そうして出した結論が、中央区の迷宮組合。
 邪教徒かどうかは分からないけれど、とにかく強そうな人を探そうと。
 守ってくれそうな人を探そうと、組合に飛び込んだ。

 そして組合に入った瞬間に出会ったのだ。


「ちょっ! エメリーさん! どうしたんですかそれ!」

「ああ、メリーさん。この人たちが襲ってきたので捕らえました。手慣れている様子でしたのでおそらく迷宮殺人の常習かと思います」

「はあっ!?」


 ザワつく組合内、慌てる受付嬢。
 中心にいたのは屈強な十二人もの男性組合員を引きずった四人のメイドさん。
 そしてメイドさんたちの左手には、女神様の奴隷紋があったのだ。

 なんて美しく強いメイドさんたちなんだろう。
 創世の女神様を象った奴隷紋という事は、この人たちの主人はおそらく創世教の関係者なのだろうか。
 少なくとも【ゾリュトゥア教団】とは無関係なのは確か。
 もうこの人たちしかいない!


「す、すみません! 助けて下さい!」


 私はそう言いながら泣きついてしまった。
 メイドさんたちはそんな私に驚いた様子だったけど、受付嬢さんへの説明を終えると、私をお屋敷まで連れて行ってくれた。
 そして美味しい紅茶を淹れてもらい事情を聞いてくれた。


「それで助けて欲しいとは?」

「じ、実は―――」


 主人の方は不在という事で、侍女長のエメリーさんに全てを話した。
 一通り説明し、私はどうしても帰りたくないと訴えた。
 帰れば両親に捕まり、邪教に捧げられるかもしれない。
 だから必死に伝えた。

 エメリーさんは少し思案した後、となりで聞いていた星面族メルティスのメイド……侍女さんに聞いた。


「フロロ、どう思います?」

「なんだ我が決めて良いのか?」

「意見を聞きたいのですよ。貴女には見えて・・・いたのか」

「運命が見えても決めるのはご主人様だ。まぁ伺うまでもないと思うがのう」

「ふむ、そうですね」


 そして私に向き合ってこう言ってくれたのだ。


「とりあえずここで保護します。それからの事はご主人様がお帰りになってからお聞きしましょう。それまでは仮契約の雇い侍女という事でどうでしょうか」

「よ、よろしくお願いしますっ!」


 そして、私はこの大きなお屋敷で住まわせてもらい、侍女として教育を受けながら働かせてもらうことになった。
 両親に居場所がバレるかも、と恐れていたが


「問題ありませんよ。誰が来ても同じことです。貴女は安全です」

「むしろ教団まるごと引き連れて来てくれると助かるのう。まるごと叩ける」

「あくまで防衛ですよ、フロロ。こちらから仕掛けてはいけません」

「分かっておる。ご主人様の意に反するからのう」


 な、なんか良く分からないけど大丈夫そう。

 そうして数日後には迷宮組合から受付嬢さんがエメリーさんを訪ねて来た。
 先日捕らえた人たちが、調べた結果【宵闇の森】だと言う。
 私が【ゾリュトゥア教団】を調べる中で聞いた、南東区、樹界国の闇組織の名前だ。

 エメリーさんたちは皆さん知らなかったようだが、知っている人なら、それが樹界国に古くから蔓延る巨大組織だと分かる。
 そんな人たちを倒してしまうとは……。
 やはりここに逃げ込んで正解だと思った。

 あとはご主人様にお会いして、正式に雇って……いえ、奴隷にして貰えれば……。
 期待と不安を持ちながら、今日、その日を迎えたのだ。

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