カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

文字の大きさ
86 / 421
第四章 黒の主、オークション会場に立つ

83:新人侍女の憂鬱

しおりを挟む


■アネモネ 多眼族アフザス 女
■17歳 セイヤの奴隷


 死ぬべき私を生かす存在。『女神の使徒』であるご主人様。
 何度死のうと試みても死ねなかったのは、ご主人様に仕える為だったのだろうと、今ならば思える。
 私風情がお傍に付くのもいかがなものかとは思うが、どうにか役立ちたいとそう思えるのだ。

 ところがご主人様は私のそんな思いを振り払うが如く、色々と規格外な面を次々に見せてくる。
 私が「何とかお傍に」と意気込んでも「お前ごときが烏滸がましい」と突き放される感覚。

 ふふふ……やはり神は死ねと言うのか……いやしかし……。


 ともかく自分の常識に囚われていると、痛いしっぺ返しをくらう。
 あまりに常識とかけ離れていて、驚きショックを受けるたびに「本当にお傍に居られるのか」「私はやっていけるのか」「遠まわしに死ねと言われているのでは」と思ってしまう。


 奴隷商館で契約した際にも散々驚かされたはずだが、お屋敷に行って、さらに驚きの連続となった。
 私と同じく買われたウェルシアさんも同じように驚いている。
 なんかすごく仲間意識を感じる。
 ……いや、私なんかが仲間なんて不敬ですよね、すいません。

 ともかく、私の実家以上に大きなお屋敷だし、その中の設備もとんでもない。
 実家は大店の商家だったが、確実にそれより裕福だ。
 自室のベッドはふかふかだし、いや、それ以前に私なんぞが広い一人部屋なんて許されざるだろう。


 中でも驚いたのがお風呂とトイレだ。
 これはもう王侯貴族以上なのは確実。
 まぁ『女神の使徒』が王侯貴族以上なのは当然だろうけど。
 それを私ごときが使わせてもらうというのがおかしな話でして、ふふふ……。


 食事にしてもやはりと言うべきか、規格外の美味しさで驚く。
 私もウェルシアさんも、それなりに美味しいものを食べてきた経験がある。
 にも関わらず、驚くほどの美味しさの未知の食事。
 私なんぞ残飯でもいいと言うのに。
 いや、このレベルの料理の残飯ならばむしろご褒美……ふふふ……。


 これから奴隷として侍女として働くにあたり、このレベルの料理を作らなければならないのかと少し不安になる。
 これで不味いものを作ろうものならば、私は投げ捨てられるだろう。


「せめてお片付けくらいはお手伝いさせて頂きたいですわ」


 ウェルシアさんは貪欲にこの非常識な空間に馴染もうとしている。
 なんて眩しい人だ。
 一緒に買われたというのに私ごときとは器が違う。


「今日は歓迎会も兼ねているので明日からでも結構ですよ? 色々とお疲れでしょうし」


 侍女長のエメリーさんはそう言う。
 しかし奴隷として買われた以上、持て成されるわけにはいかないとウェルシアさんは食い下がった。
 私も追従する。
 私なんぞに出来ることは限られているだろうけど、やらないわけにはいかない。

 そして片付けるだけのつもりで入った調理場でまた驚かされる。

 えっ、これをひねると水が? 魔道具ですか?
 これ竈ですか? 薪はどこに入れれば……ああ、これも魔道具ですか?
 窯が……えっ、あのパン自家製なんですか? ヒイノさんが?
 こっちは……寒っ! 氷室!? こんな魔道具存在するんですか!?


 明日から料理をお手伝いする自信がありません。
 ウェルシアさん、一緒にがんばりましょうね。


「なるほど、ここで火力の調節が……」


 ど、貪欲ですね……。
 やはり私なんぞとは器が違う。
 出来損ないで馴染めない私は、ただ一人、追い出される運命に……。


「エメリーさんお皿を持ってうわああっっっとぉ!!!」

「私も持ってきたのでsうわああっっとぉ!!!」

「ドルチェ、ポル、貴女たちは大人しくしていなさい」

「「はい……」」


 おお、お仲間に入れそうです。


■ウェルシア・ベルトチーネ 導珠族アスラ 女
■70歳 セイヤの奴隷


 ご主人様には驚かされることばかりです。
 転生者であり『女神の使徒』様なのですからそれは当然なのかもしれませんが。
 色々とわたくしの常識を無理やりこじ開けてくる展開に驚き疲れてしまいます。

 理解しがたい事は多々ありますが、何といっても<カスタム>というスキルに集約されるでしょう。
 種族的に弱いのに力を得ているのも、Aランククランとして稼いでいるのも、お屋敷の設備が異常なのも、大概はご主人様の<カスタム>に行きつきます。


 わたくしの事情を知っているご主人様は、わたくしを<カスタム>で強くすると仰いました。
 迷宮に潜り、経験を積み、そして仇たる【天庸】と当たった時に戦う為。
 つまり、わたくしが<カスタム>を理解する事が最優先課題です。


 その上で、ステータスやレベルといった事を最初に習いました。

 わたくしは今まで「人の強さ」というものを漠然と捉えてきました。
 戦いを多く経験すればそれを糧として強くなる。魔法を多く行使すれば強い魔法が使えると。

 おそらく世界の全ての人がそう思っているのではないでしょうか。
 ご主人様のように『項目』と『数字』で強さを見ることなど出来ないのですから。
 だからこそ驚きはしたのですが、同時にこんなにも明確に、そして簡素化されて強さが表れるものなのかと感動したのです。


 わたくし自身のステータスも見せて頂きました。
 レベルは1、戦いの経験がないのですから当然です。
 そしてやはり【魔力】の値が高いようです。

 同じように魔法が得意な種族と言われる多眼族アフザスのアネモネさんと比べても、若干わたくしの方が【魔力】が高く、代わりに【敏捷】【器用】といった値が低い。
 これは種族差の場合もあるし、個人差の場合もあるそうです。

 何にせよ、わたくしもアネモネさんも魔法主体の戦い方になるだろうと。
 だから集団戦闘時の戦い方はサリュさんかフロロさんに聞くべきだと言われました。


「もっと言えば、アネモネは基本的に<魔法陣看破>による罠の警戒が第一。雑魚敵に関しては<闇の弾ダークバレット>とかでもいいし、強敵相手ならデバフが主体になるだろうな」

「……はい」

「ウェルシアはそれこそフロロのように攻撃魔法が主体だ。バフ系の魔法もあるが、うちの場合、よほどの強敵相手じゃなければバフを使うまでもなく倒せると思うから、だったら攻撃魔法オンリーで考えるべきだ」

「はい」

「どちらも第一に【魔力】、次いで【器用】【体力】を上げる。その他は考えて話し合いながらだな」


 となりました。
 アネモネさん、よく分かってないみたいですけど大丈夫でしょうか……。


 わたくしが理解しづらかったのは【器用】です。
 ご主人様はこの項目を重要視しているようですが、これを上げることで強くなるとは思えませんでした。
 【魔力】【MP】【防御】【体力】この辺りが重要だと思うのですが……。


「俺のイメージとこれまでの経験も合わせての事だけどな、【器用】を上げるメリットは大きく二つ。一つは『動きと考え方がスムーズになる』という事」

「動きと考え方……ですか」

「どう動けばいいか、思考速度が上がり、身体はそれに対して動きやすくなる。つまりざっくり言えば『戦闘が上手になる』って事だな。まぁ家事とかにも活かせるらしいが」


 確かに【攻撃】や【魔力】を上げても戦闘時に身体も頭も働かないのでは弱いままでしょう。
 なるほど、と納得しました。


「もう一つが『スキルを覚えやすい』ってことだな。【器用】を上げた途端にスキルが生えた・・・連中もいる。【器用】が高い状態で何かのスキルを習得しようと励んだ結果、短期間で習得できる事もある。いい例が器用特化のエメリーなんだが、まぁ……エメリーは特殊だから真似できないと思うが」


 ちらりと見ると、エメリーさんは「侍女ならば当然です」という顔をしています。
 ご主人様がこう仰るくらいですから、エメリーさんもまた異常なのでしょう。


 しかしスキル習得も【器用】が鍵だとは……。

 スキルの有用性は誰もが知っている事。
 ならば【器用】は上げるべきなのでしょう。
 聞いておいて良かった。わたくしが強くなる指針が見えた気がします。


 その後、侍女教育をエメリーさんからして頂きつつ、戦闘に関する事はイブキさんやフロロさんに教わります。
 戦闘時のリーダーはイブキさんなので教わる事も多いのですが、わたくしやアネモネさんの場合、魔法が主体なのでフロロさんに教わる事も多いのです。
 アネモネさんは罠の対処もあるのでネネさんにも教わっていますが。

 しかしフロロさんは開口一番、こう仰います。


「<カスタム>で上げるべきは【魔力】でも【器用】でもない! まずは【体力】だ!」


 そ、それはご主人様のお考えとも、わたくしの考えとも違うのですが……。


「今は分からずとも良い。だが迷宮に潜った後、汝らは悟るであろう。我の言葉が正しかったとな」


 星面族メルティスの占い師であるフロロさんにそう言われると少し怖い気になります。

 そして数日後、フロロさんの言葉は正しかったと理解させられました。

 まさか迷宮をあんなに走るはめになるとは……何ですかマラソンって……。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!! スティールスキル。 皆さん、どんなイメージを持ってますか? 使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。 でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。 スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。 楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。 それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。 2025/12/7 一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

処理中です...