カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第九章 黒の主、魔導王国に立つ

223:褒賞の席のその後に

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■セイヤ・シンマ 基人族ヒューム 男
■23歳 転生者


「あ゛~~~~しんど~~~~」

「お疲れさまです、ご主人様。紅茶をどうぞ」

「ありがとエメリー」


 八階の応接室へと戻るや否や、ソファーにダイブをかました。
 もうこのまま眠りたい。眠りたいもう眠りたい。そんな衝動に駆られる。

 いや、あの狸親父、予定にない事色々とぶっこみ過ぎだろ。
 あんにゃろうこっちの足元見やがって。
 まぁ助かった事も多いからあんま言うつもりもないけどさ。


 と、愚痴るのは後だ。まずは一つずつ解決していこう。


「アネモネ、大丈夫か?」

「大丈夫です、ふふふふふふ……」


 分からん。本当に大丈夫なのかどうか、その含み笑いの意味が全く分からん。

 アネモネの実家が【ジキタリス商会】だって言うのはメルクリオにも教えていない。今日その名前が出て来たのは偶然だ。
 だからこっちもビックリした。
 なんでここでアネモネの実家が出て来るの!? って。

 しかも例のナントカ侯爵とつるんでたとかで捕まったんだろ?
 そんなに悪どい事してるとは知らなかったし、まぁ自分の娘を奴隷にするくらいだから悪どいのかもしれないけど。
 とにかく意外だった事は確かだ。


「私は、少し、知ってました。何か、悪い事、してるって」

「詳しくは知らなかったって事か」

「本当に、良かった……バチが当たって……ふふふ……」


 あ、本当に大丈夫っぽい。この家庭は複雑だなぁ。
 あんまり突っ込んじゃいけない気がする。次に行こう。


「ユア、お前は大丈夫か?」

「ひぃぃぃ……もうダメですぅ……緊張しすぎて死にますぅ……」

「いや、そうじゃなくてキルギストンってヤツの事」


 ユアはあの場に並んだだけでも限界だったらしい。
 それはそれとして聞きたいのはキルギストンってヤツの件だ。

 これもまたナントカ侯爵と繋がってたのは意外で、アネモネの実家とまで繋がっていやがった。
 フロロに言わせればこれも運命なんだろうが、俺は少し怖く感じる。

 しかもユアの師匠のデボンさんを殺した容疑、さらに他にも余罪があるって言ってたな。
 ユアはお世話になったって言ってたけど、やっぱり悪い奴に利用されてたんじゃないかと。

 それを決めるのは俺じゃなくてユアなんだが、もしデボンさんを殺していたのなら罰せられるべきだと思う。


「あの時はパニックで、お師匠様がどうやって亡くなったのかは分からないんです……でも、キルギストンさんが殺したのであれば私は……」

「とりあえず国の方で取り調べとかしてくれるはずだ。ユアは心構えだけしていればいい。もし王都滞在中にはっきりしたら、帰りがけにトランシルでまた墓参りしよう。そこでデボンさんに報告だ」

「ご主人様……はいっ、ありがとうございます!」


 もうここまで来たら俺たちが何をするってわけにもいかないからな。
 真相暴いて復讐するとか、もう無理だし。大人しく罰せられてもらおう。


「あと、ウェルシア。いや、ウェルシア伯爵、良かったな」

「止めて下さいご主人様。でもありがとうございます。ご主人様のお蔭です」


 こっちの望んだ『ベルトチーネ家の存続の公言』って言うのは完璧以上にこなしてくれた。

 陞爵……つまり爵位を上げるって事は、″男爵位が残ってますよ″と公言しているのも同じだからな。

 本来ならウェルシアは正式に男爵位を継いでいないから、平民と変わらない。
 そこから爵位を貰うのだから、普通なら陞爵でなく叙爵となる。
 だから陛下が「陞爵」と言った事に意味がある。父親から継いでいると認めたわけだ。

 しかも子爵を飛ばして伯爵だからな。
 まぁウェルシアどうこうより俺への当てつけだろうけど。

 あの狸親父め。恩の押し売りに感じるわ。ウェルシアが喜んでるから言わないけど。


「せっかく王都に来たのに墓参りに出られなかったからな。明日はまずお墓に行こう。そこで親御さんたちに報告してやれ」

「はい、ありがとうございます」


 陛下からの依頼でこっちの素性はなるべく隠すように動いてたからな。
 ウェルシアはシャムシャエルたちと一緒で、なるべく人目につかないようにしていた。
 でももう大丈夫だ。大手を振って歩ける。シャムシャエルたちもだけど。


「アネモネはどうする? 王都に出ずに王城に残るか?」

「はい、出来れば……すみません……」

「いや無理する事はない。じゃあ留守番は頼むな」


 親が捕まって店も閉まってるだろうが、知り合いは王都に居るだろうしな。
 むしろ親が捕まったからこそ見られたくないっていうのもあるだろう。
 せっかくの帰郷ではあるが仕方ない。明日からはアネモネ抜きだな。


「あとは国宝だなぁ」

「三つも貰えるとは思わなかったですね」


 俺が要求していたのは「風か水の杖で国宝級のもの」。
 まさか本当に国宝で、しかも風と水の二本貰えるとは思わなかった。
 さらにおまけとばかりに魔剣だし。太っ腹だな。狸だけに。


「ウェルシア、どうする?」

「えっ、わたくしに聞くんですの?」

「そりゃお前用の杖のつもりだったし。でもなぁ……悩ましいんだよな」


 【狂飄きょうひょうの杖】は風属性の杖。
 うちの侍女たちで<風魔法>を使えるのはウェルシアしか居ない。だからこれはウェルシアに決定。


 問題は【溟海めいかいの杖】。これは水属性の杖だ。

 うちで<水魔法>を使えるのはウェルシアの他にポルとラピスが居る。ツェンは除外。
 しかしラピスは槍を持つ以上、魔法触媒は今使っているアミュレットの方がいいだろう。
 ポルは……言うまでもない。


「というわけで現状、どっちもウェルシアが適任なんだよな」

「ラピス様は槍を使いながら杖を持てませんの?」

「私は両手で槍を持ちたいわねー。いい杖だってのは分かるんだけど、宝の持ち腐れだわ」

「とりあえず両方ウェルシアが持っていればいいんじゃないか? 使い分ける感じ、もしくは二杖流」

「両手に杖ですか……難しいですわね……」


 今後新しい侍女が入って来て、そいつが風か水を使えれば渡すって感じでいいんじゃないかな。
 あんまり侍女を増やす発言はしたくないんだけど。


「明日からの王都巡りで奴隷商に寄ればよかろう。魔法使いを増やせば良い」

「やめろフロロ、お前が言うと本当に買いそうだから言うな」


 お土産感覚で買うもんじゃないだろう。さすがに。


「それと最後に【魔剣パンデモニウム】か……」

「見せて下さいっ!!!」←ジイナ


 詳しくは聞いてないが、名前からして【風の魔剣】だと思う。俺の勝手なイメージだけど。効果は分からんしここで試したくもない。

 形状は短剣だ。短剣型の【魔剣】。
 他の【魔剣】と同じように柄尻には小さいながらも禍々しい意匠、形状。
 特徴的なのは刀身が膨らみをもって曲がっている事。まさかこの世界にククリナイフがあるとは思わなかった。

 うちで短剣を使うのはネネとミーティア。
 風を使わせたいのはミーティアなんだが、すでに神器を持ってるからな。
 ここはネネ一択だろ。


「ん! ありがとう、ございますっ! 魔剣!」


 おおう……いつになくテンション高いな。
 まぁ喜んでくれるならそれでいい。
 でもお前、魔力籠めるなよ? 間違っても王城の中で魔力籠めるなよ? これ″お約束″じゃないぞ?


「″お約束じゃないと念を押した場合、実はお約束である″という説もございます」

「お姉様、そう言って逆というパターンもあるという話でござる」

「むぅぅ難しいでございますね、使い分けをどう判断するのか……」


 天使どもは放っておこう。一生理解しなくていいと思う。

 そんなグダグダでまったりな時間にようやく落ち着いた……そんな頃だった。


 ―――コンコン


 もうこのタイミングでの来客なんて嫌な予感しかしないわけで。
 疲れるのが分かってるから迎え入れたくもないわけで。
 しかし、そうは言えない客人という身分なわけで。


「…………どうぞ」

「失礼する」


 そうしてガチャリと入って来たのは、やはりヴラーディオ陛下。

 続いてメルクリオ、ヴァーニー殿下、ジルドラ殿下……勢揃いかよ!


「いやはやお疲れのところ悪いなセイヤ殿。せっかく一段落したので改めて話をと……お、これが例のビリヤードか。なるほどこれは立派なものだ」

「実際かなり面白かったですよ陛下。王城に導入すべきです」

「あとで僕がルール教えますよ」


 貸してやるから帰れよもう。
 何しに来たんだこいつらは。


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