カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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最終章 黒の主、聖戦の地に立つ

323:敏捷特化型聖女、そして再会

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■サリュ 狼人族ウェルフィン 女
■15歳 セイヤの奴隷 アルビノ


「速いな、こいつら!」「ゾォミィ! そっちだ!」「おおよ!」


 ご主人様にご指名されたのはいいんですけど、公爵級の山羊さんたちにはエメリーさんとイブキさんとツェンさんが一対一で戦う感じになってしまいました。

 そうなると周りに居た骨頭さんたち六体は私とネネちゃんしか居ません。
 山羊さんに比べると弱いって判断なのかもしれませんけど……強いですよ? 骨頭さんたち。


 こっちは二人だけですし、ネネちゃん前衛で私が後衛なんて、そんな戦い方出来ません。
 だからとりあえず動きながら戦ってます。
 さすがに私も接近戦で回避しながらだと魔法もろくに撃てません。
 <聖なる閃光ホーリーレイ>撃ちたいんですけど……。


 おまけに骨頭さんたち、ネネちゃんの動きについていけてるんですよ。
 もちろん【敏捷】ステータスだとネネちゃんどころか私より下だと思います。
 でも察知能力が高いと言うか、反応速度が速いと言うか。

 ネネちゃんもそれは意外だったようで、なんとか不意を突こうとしている感じ。攻撃よりも動いて翻弄するのが主目的のような戦い方です。
 私としてはさっさと斬りかかって欲しいですが。


「さすがは狼人族ウェルフィンと言うべきか、相当な速さだな。武器が杖ってのが気になるが……魔法使いだってのか?」


 私に付き纏ってくる蛇骨の人が喋りかけて来ます。
 片手剣で斬りかかりながら。
 そんなの無視。とりあえず回避しつつ、こっちの聞きたい事を聞きます。


「あなたは侯爵ですか? 子爵ですか?」

「侯爵だよ。残念だったな」


 残念ですね。山羊頭さんのすぐ下って事でしょう? やっぱり強いって事です。
 そんなの六体も一緒に戦うとか……こんなのトロールの集落を一人で殲滅するほうが楽です。

 侯爵さんたちは片手剣と小盾とか、槍とか、斧とか、みんな武器が違って、それもまた戦いにくい。
 なんとか隙を見て神聖魔法を撃ちこみたい所ですが……。

 そう思っていた所で、やっとネネちゃんが仕事してくれたようです。


「ぐあっ! なんだ、どこから斬ってきやがった!?」

「そいつの短剣だ、スナッカ! 刃が消えたぞ! 飛ばしてるのか!?」

「警戒しろ! 死角から斬られるぞ!」


 暗殺ってわけじゃないですし、さすがに一撃で殺すのは無理なようです。
 でも強化された侯爵級悪魔族ディーモンにも魔剣は効くと。収穫です。

 そして騒ぎを聞いた、私の周りに居る侯爵さんたちもネネちゃんを警戒し始めました。

 これもまた収穫。やっと出来た隙ですね。行きますよ!


「<聖なる閃光ホーリーレイ>!!!」


 ――バシュゥゥゥン!!!


「ぎゃああああ!!!」


 超至近距離からの<聖なる閃光ホーリーレイ>。思ってた以上に効きました。
 リッチでも二発だったのに一発で死に体です。よしよし。


「こいつ……回復職ヒーラーか! 魔法使いじゃねえのかよ!」

「魔法使いだろうが回復職ヒーラーだろうが動きすぎだろうが!」

「今の神聖魔法、おそらく天使族アンヘルより上だぞ! そいつを先に片付けろ!」


 あわわ、私が注目の的になってしまいました!
 こうなるともう、さすがに<聖なる閃光ホーリーレイ>を撃つ暇なんてないです。
 ネネちゃん! 私が回避してる隙に暗殺して!




■ミーティア・ユグドラシア 樹人族エルブス 女
■142歳 セイヤの奴隷 日陰の樹人 ユグド樹界国第二王女 


 ――バシュンバシュンバシュンバシュンバシュン!!!


 見上げる空は晴天のはずなのに、黒い魔族と白い天使族アンヘルによって埋め尽くされています。
 私はご主人様の命を受け、ただ一人、地上から上空への迎撃を行っています。


 これほど早く弓を引いた事はありません。
 魔力で形成される矢は番える必要がない為、引いては撃ち、引いては撃ちを繰り返すのみ。

 どうやら狂心薬によって強化された魔族であっても『神樹の長弓』であれば一撃で倒せる。
 貫通力があるので一撃で二体倒す事さえ出来るようです。

 とは言えシャムとマルが放つ<聖なる閃光ホーリーレイ>と違い、範囲攻撃ではありませんからそこは手数で補わなければなりません。


 上空に居る魔族は前衛の飛魔族ソリディオが四百、後衛に妖魔族ミスティオが五百と幽魔族レイルスが百といった所でしょうか。

 とにかく数が多い事と、飛魔族ソリディオの回避率が高いのが難点です。
 天使族アンヘルとの接近戦に持ち込まれる前に出来るだけ数を減らしたいのですが……さすがに厳しいですね。


 さらに注目すべきは悪魔族ディーモンの存在。数は少ないながらも強者であるのは確実です。

 目鼻口のない、模様の描かれた面のような顔を持つ悪魔族ディーモンが八体。
 そして青いオーガのような――これは事前情報を持っていますが、男爵級悪魔族ディーモンが十五体。

 今はまだ様子見なのか前に出て来ていませんが、これこそ天使族アンヘルとは戦わせたくありません。


 と、考えながら撃ち続けていると、さすがに魔族も動き始めました。
 男爵級悪魔族ディーモンの十五体と妖魔族ミスティオが一体、私に向かって急降下して来ます。
 そしてあっという間に私を半円状に囲みました。


「お前か、さっきから邪魔してる弓使いは」

天使族アンヘルの前にお前を潰して来いとよ、子爵級のお歴々がさぁ」


 子爵級……あの面の顔を持った六体は子爵級なのですか。
 そう思っていた矢先、一体の妖魔族ミスティオが前に出ます。
 男爵級悪魔族ディーモンの前に妖魔族ミスティオという異様な光景。


「お久しぶりですな、ミーティア姫様」


 私を知っている? ……いや、この口調、どこかで……。


「おや、分かりませんか。これならばどうです? <変化>」


 狂心薬を飲み、成人男性のような躯体となった妖魔族ミスティオですが、その魔法を使うと姿形はすぐに変わります。
 そこに居たのはよく見知った顔の男。
 お父様の隣にいつも居た、温和な顔のその男は――


「ゲルルド……!?」

「ふふっ、貴女を奴隷商人に売ってからですから、一年も経っていませんがね。なぜかとても懐かしく思えますよ」

「あ、貴方……やはり魔族だったのですかッ!!!」


 お兄様が幽魔族レイルスに取り憑かれ、ズール大司教は淫魔族サキュリスと結託していました。
 だからこそ姿を消したゲルルドが魔族と繋がっているという懸念はあったのです。
 もしかするとゲルルド自身が魔族という可能性も……。


「私も姿を変えていましたが、貴女ほどではないでしょう? 『日陰の樹人』となり奴隷となり、このまま堕ちるかと思いきや、まさか勇者の僕となって力を得るとは……さすがに予想出来ませんでしたよ」


 首を傾げながら笑うその表情は、当時のゲルルドを彷彿とさせながらも、嘲笑う魔族のそれです。


「容姿も能力も戦い方も……どれも変わり過ぎですよ、ミーティア姫様。いくら狂心薬を飲んだところで、今の貴女は私一人で倒せる相手ではありません」

「だから男爵級を十五体も?」

「念には念をと頼み込んだのですよ? 少しは労ってくれても良いのでは?」


 大仰な仕草をするゲルルド。そして後ろの男爵級悪魔族ディーモンは笑いながらも、今にも襲い掛かってきそうな雰囲気を出しています。

 私もすでに臨戦態勢。これ以上ゲルルドに関わっている暇などありません。


「貴方に与えるのは労いではありません――国を乱した重罰です! 神樹の巫女としてではなく、女神の使徒たるご主人様の侍女として、私が貴方を罰しますッ!」


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