カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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after3:纏いし炎は最強の証

3-2:希代未聞の報告会・前編

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■セイヤ・シンマ 基人族ヒューム 男
■23歳 転生者


「通信宝珠があって良かったわい。これを褒賞としたヴラーディオの小僧にはよくやったと言いたい」


 海王国旅行から帰って来た俺たちは忙しい毎日を過ごした。約一月ぶりの帰還だからな。
 挨拶周りから始まって、博物館の展示もあるし、装備の更新もあるし、迷宮に行きたがる侍女も多い。

 俺としてはそれに加え、海産物や海王国ならではの調味料などを仕入れたので、ヒイノと共にキッチンに籠る事もある。
 米がないからパエリアは無理だが、ペスカトーレ的なものは作れた。やはり海産物は偉大だ。


 そうして少し落ち着いた所で本業と言うべきか、俺も迷宮に潜ろうかと。
 正直博物館がある時点で不労所得者みたいなものなのだが、SSSランクとなっているからには迷宮探索が仕事だ。

 侍女たちは毎日ローテーションを組んで魔物部屋マラソンしているので【黒屋敷】としてはどのパーティー、どのクランより働いている事になっているのだが、侍女たちが目立つ以上、クラマスの俺がさぼっているという風にも見られかねん。


 というわけで本部長に相談し、長期探索を再び実施した。
 今回の目標の第一は『炎岩竜と氷晶竜を倒して祠が再出現するかどうかの確認』だ。
 祠が再び現れれば、未だ俺の<インベントリ>にある【邪神の魂】を封印する術が分かるかもしれない。
 そういった期待を込めての探索となる。

 本部長としても物騒すぎるお宝を封印できればそれに越した事はないと賛成していた。
 しかし前回祠が出現した時のように、また瘴気がカオテッドを襲うとも限らない。

 まぁ瘴気を出していた【邪神の魂】は俺の手元にあるから可能性は限りなく低いが、それでも何が起こるか分からないからな。
 何が起こるか分からないのが迷宮であり、その謎は依然として残り続けている。

 他にも黒曜樹を採取するだとか、ついでの目的もあるが、あくまで第一はそこ。
 新種の竜、二体の討伐。炎と氷の守護竜――と思われる魔物――を再度倒してみる事だ。


 というわけで通信宝珠の片割れを本部長に渡し、こちらの探索状況を随時報告する形で長期探索に赴いた。
 帰った翌日に報告会となったわけだが、開口一番言われたのが冒頭の台詞だ。

 どうやら今までのように探索内容をまとめて一気に報告とすると心労が激しいらしい。
 こまめに報告された方が幾分かマシだと。まぁそれでも驚かされたとは愚痴られたが。


 いつものように本部長の対面に俺が座り、一緒に来ていたエメリー、イブキ、ミーティア、フロロも座らせてもらう。
 本部長もすでに知っている部分も多いが、改めて最初から報告を行った。


「えー、とりあえずクラン全員、二六名で潜りまして」

「相変わらず多いのう。【魔導の宝珠】も同じようなもんじゃが」

「初日で三階層、二日目で四階層まで」

「相変わらず速いのう。走りすぎじゃろ」


 寄り道なし、バフありで走り続ければ問題なく行ける。何気に新人五人以上に、未だにユアが一番の懸念材料だったりするのだが、それでも手厚いバフを受けながらであれば問題ない。
 以前、滝つぼの蛇【大炎蛇】を倒した時は二日目でそれを倒す所まで行ったが、今回は四階層に入った段階で早めの休息とした。

 なんせ相手は亀だからな。
 侍女の大半は探索の計画段階で嫌そうな顔をしていた。あれと戦うのかと。

 アネモネとウェルシアの加入以前のメンバーは実際に戦った事があるからキツイ思い出しかない。
 シャムシャエルとマルティエル以降に入ったメンバーも以前の探索で遠目に亀を見ている。見ただけで無理だと判断するデカさだそうだ。まぁ気持ちは分かる。

 気持ちは分かっても俺の中で戦う事は決まっているので、何とか納得してもらった。
 その上で事前に入念な計画を立てて臨んだわけだ。


「で、三日目で炎岩竜か。倒したのは聞いたが、まさかまた釣ったのか?」

「一応遠距離でおびき寄せようともしましたけどね。結局は釣った方が早いですよ」

「さも釣って当たり前みたいに言うでないわ」


 前回は釣り上げた時点で全員が疲労困憊だったので、今回は釣らずに済ませられないものかと議論はした。
 遠距離から魔法と弓で攻撃し、亀が地面に上って来るのを待とうと。向こうの遠距離攻撃の手段が限られているのは知ってたしな。

 しかしやってみたはいいものの、亀の動きが遅すぎる。
 ノロノロと迫っては溶岩をビシャンってやってきたり、ブレスを吐いたり、またノロノロ動き出したり。

 というわけで結局は釣った。

 ミーティアの弓で鎌を射ったわけではない。事前にジイナが釣り専用のショーテル付きミスリル鎖を渋々造り、それをシャムシャエルとマルティエルに飛んで口内に投げ入れさせた。前回は飛べる人員が居なかったから出来なかった手だな。
 もちろん二人ともウォール系魔法を使えるので守りながら近づく感じだ。

 口内にショーテルを三本ほど突っ込み、前衛部隊で引っ張る。
 その前衛部隊にしても前回より人数が多いので楽になる。ジイナに引っ張りやすい鎖にしてもらったのも大きい。

 もちろん亀は暴れたが、引きずり上げるまでの時間はそれほどでもない。疲労で息を荒げるという事もなかった。


 そこからは真正面から戦うわけだが、氷晶竜と違って厄介なのが、亀を溶岩に戻すわけにはいかないという事だ。
 集団で一塊の陣を形成するわけにもいかず、必然的に包囲する事になる。

 一応小さな四つの陣を形成し、前後左右に配置。盾役タンクと魔法部隊を振り分けた。
 これも盾役タンクが四人となった今だからこそ出来た手だ。
 まぁコーネリアはかなりキツそうだったが。回復もバフも活用していたから安全ではあったと思う。

 あとは前衛が遊撃気味に戦うわけだが、結局は俺が首を落とすしかないというのは始めから分かっていた。

 ネネが毒らせてもいいし、エメリーが腐蝕させてもいいが時間が掛かる。
 亀の体重の乗った激しい攻撃にずっと晒されるのは間違いないので、さっさと終わらせるつもりでいた。

 全員の攻撃が入ったのを確認してから<空跳>から<抜刀術>【居合斬り】。それを思いっきり何度も食らわせ、倒す事に成功した。


 戦うのは二回目で、前回よりもはるかに安全で戦いやすくはあったが、やはり氷晶竜より強いと再認識。前回以上にパワーアップしている今で尚だ。
 巨体の重さと防御力が桁違いだ。どう戦っても苦労する。
 戦闘終了後には侍女たちが座り込んで勝鬨を上げていたから、それがその証だろう。

 ちなみにドロップに甲羅は出なかった。
 鱗と牙と角。運が良い。甲羅はまだ<インベントリ>に余ってるしな。最初の一個で十分すぎる。


「ほう、それは買い取りに出すのか?」

「いえ、前回のは装備に使っちゃったんで鱗も牙も展示に回します。角もですけど。魔石はダブりましたけど、何かで使うかもしれませんし一応とっておきます」

「むむむ……買い取りたい気持ちもあるが、博物館の集客も見込めるからのう……何とも言えん」


 これで博物館の炎岩竜の場所には、魔石・甲羅・鱗・牙・角が並ぶ事になるな。華やかになりそうだ。
 集客が増えれば本部長も嬉しいだろう。俺は現状でも客が入りすぎだと思っているが。
 しかし新種の竜の素材なんて売ればいくらの値が付くのか想像も出来ん。本部長の悩ましい気持ちも分かる。

 亀退治のあとはケニに上空から<千里眼>を使ってもらったが、火山方面に瘴気の紫の光は見えなかった。
 前回の亀退治ではこの時点で祠が出たのか不明だったから一応見て貰ったんだが、どうやら不発。

 これも合わせて通信宝珠で本部長には伝えておいた。
 亀倒しましたけど変化なし。探索を続けます、と。


「で、三日目はそれからトロールの集落でトロールキングを何体か倒しまして」

「待て待て待てい! 炎岩竜を倒したその足でトロールキングとやったんか!? また!?」


 うん。なんかみんなトロールの集落好きみたいなんだよね。
 トロールの群れにしてもトロールキングにしても戦いやすいとか何とか。
 亀戦で疲れたから気晴らしみたいな感じでトロールキングマラソンする事になった。
 まぁ亀の後はトロールの集落を経由して黒曜樹の森に行くつもりだったから通り道ではあるんだけど。

 と言っても前回のように半数くらいの侍女がトロールキングとタイマンするというわけではない。
 あくまで気晴らしなので、トロールを蹂躙しただけですっきりする娘も居る。
 だから半日程度で終わらせたわけだ。


「お前らが四階層に行く度にトロールキング素材が大量に買い取りに出るんじゃが……。いや、嬉しい悲鳴ではあるのかもしれんが」

「今回はそんなに数はないと思います。もし買い取れなければ出しませんし」

「はぁ、まぁ他の買い取り次第じゃな。どちらかと言えば黒曜樹の方を買い取りたいもんじゃが」

「そっちは四〇本くらいですかね」

「よおおおおし、よしよし! よくやった! さすがは【黒屋敷】じゃな!」


 ホント黒曜樹が絡むとテンションが上がると言うか、人が変わると言うか……。どんだけ高値で売るつもりなんだか。


 四日目はトロールの集落から黒曜樹の森へ行き、伐採ついでに五首ヒュドラを倒した。
 ここも通り道なのでマラソンするつもりもない。CP稼ぎには適しているとは思うが。

 で、黒曜樹の森から北上、山岳地帯へと向かう。
 山の麓で一泊し、五日目は氷晶竜のねぐらへと直行だ。

 以前に氷晶竜と戦った時には廃墟の街から山岳を登ったが、今回は黒曜樹の森方面から登る。
 ルートが違うので罠や宝魔法陣に注視しつつの登山だ。当然ここでもケニの<暗視><千里眼>が役に立つ。

 役割をとられた格好のパティは悔しがるどころか嬉しそうにしていたが、それでも<探索眼>は優秀なので普通に斥候役として活躍していた。


 氷晶竜と戦った事のない者は新人の五名のみ。他は経験があるし、前回の戦闘でも比較的安定して戦えていたと思う。
 何より『亀に比べればだいぶマシ』というのは全員が思っていた事で、無駄な緊張とかはなかったように感じた。

 戦術は前回と同じ。
 バフを積んで、守りを固める本陣と、その他遊撃部隊。ついでにランタンを灯す係。

 新人五人で言えば、カイナ、コーネリア、クェスは本陣だな。キャメロとケニが遊撃。
 カイナが突っ込みたがってたのと、反対にキャメロが接近戦を強いられてギャーギャー言っていたのが印象的だ。
 そうは言っても前回と違って俺も様子見とかする必要がないので、全員が攻撃したのを見届けてからさっさと斬ったが。

 ドロップは牙・氷塊・氷結袋。氷結袋というのは初なのでこれは博物館行きだな。
 袋と言っても内臓なのでどうやって展示したものか悩ましいが。


「ほう。と言う事は売れるものもあるのか」

「牙は装備で使いたいですね。売れるとすれば氷塊ですけど」

「うーむ、見た目はただの氷の塊じゃからのう……新種の竜素材とは誰も思うまい。<鑑定>で分かるのかもしれんが」


 氷塊は博物館にも展示してある。溶けるか心配だったが検証の結果、溶けなさそうだったので展示した。
 戦った俺たちからすれば『氷晶竜の身体の部分だな』と分かるんだが、知らない人から見ればただの氷だ。
 商人とかに売るにしても、これを見せて『新種の竜の素材ですよ』とは思われないかもしれない、と懸念しているわけだな。
 アネモネにでも聞いておけば良かったな。竜素材だと分かるもんなのかって。


 ともかく氷晶竜を倒した俺たちは、すぐにねぐらから撤退。氷の洞穴を出た。
 しかしあの時に見た紫の光――瘴気が立ち昇る光の柱は見られなかった。
 一応ここでもケニに見てもらったが、祠自体が出現していないらしい。


「うーむ、やはり封印するべきものがないから祠も出現しない、という事かのう」

「そうでしょうね、憶測ですけど。【邪神の魂】の保管施設だったという事でしょう」


 というわけで目論見は外れ、今回の探索の第一目標は失敗に終わった。
 期待薄だった事ではあるが、どうにかして再封印したいと思っているし、その為の手掛かりを一つ失ったのは痛い。

 とは言え気落ちしたまま探索を終えるつもりもない。
 俺たちは火山方向へと足を進めたのだ。


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