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after5:久しぶりのカオテッド
5-3:新年早々スペッキオ本部長の心労が酷い
しおりを挟む■セイヤ・シンマ 基人族 男
■24歳 転生者 SSSランク【黒屋敷】クラマス
明けましておめでとうございます。
そんな挨拶や風習はないのだが、何はともあれ新年一発目から本部長への報告を行う。
いつものように組合を訪れれば、自動的に本部長室へと案内された。
「新年早々、セイヤの報告は聞きたくないんじゃがのう……疲れるのは勘弁して欲しいが」
「それはホントすいません」
「否定せんのか。はぁ……通信宝珠の定時報告ではそれほど驚くような展開はなかったんじゃがのう。せいぜい迷宮を最速で制覇したとか竜を狩ったとか。お主らの実力を知っていれば当然と思える程度のもんじゃったし」
だいぶ毒されてきたな、本部長。
聞けばザラとトルテーモの支部長から手紙の返信があったらしい。俺たちが去った後で。
どちらの支部長も記録を大幅に更新するような速度での制覇や、迷宮を走ったり、バフを使い続けたり、魔物部屋に行ったりといった俺たちの通常探索に言及するような内容だったらしい。
しかし本部長からすれば「ああ、【黒屋敷】のいつものやつね」くらいで終わる。
特に驚くような内容ではないと。まぁそれでこっちに愚痴られたら堪らないから助かるんだが。
「で、改まって報告とは何じゃ? そっちのツェンの妹の事か? 金色の竜人族が居るとは知らなかったのう。竜人族の里から連れてきたのか?」
今日の報告に来たのは、俺とグレンさん、セキメイ、エメリー、フロロ、ツェン、プラムだ。プラムはツェンの膝の上に座っている。と言うかツェンが抑えている。
髪色は全く違うがツェンと並ぶと顔はそっくりだ。姉妹に見えるのも仕方ない。
というわけでプラムの事から相談することにした。
俺が竜神に会ったというのはあまり言いたくないので、族長に神託が下りて、俺たちの竜狩りを制限するよう言われたと。神はどうやら風竜や水竜を狩った俺たちをマークしていたらしいと。そんな感じで誤魔化した。
「【竜神ドラウグル】から名指しで警告とか……お前らもう大概じゃのう」
「それと神託の内容がもう一つありまして、本部長『竜の王』って知ってますか?」
「『竜の王』? 知らんが、そんなのが居るのか?」
「族長は多少知っていたんですが、マツィーア連峰の上の方には【輝帝竜】という『竜の王』が居るそうなんです。で、竜神は【輝帝竜】に手を出してはいけないと」
【輝帝竜】はマツィーア連峰の竜を統べる者。
仮にそれが倒されれば多くの竜は山脈を離れ人里を襲うようになってしまう。だから決して害してはいけない。
そんな忠告を受けたと本部長に説明した。
「この情報の扱いについて悩んでいるんです。人を守る『竜の王』という存在は周知させるべきなのか、それとも秘匿するべきなのか。それで本部長に相談をと」
「はぁぁぁ……なるほど、言いたい事はよく分かる。周知させても周知させなくても危険じゃ。迷宮組合よりも魔物討伐組合で判断すべき内容じゃろう。もしくは山脈と接した全ての国か……いずれにせよ儂の方から内々に相談しよう。お前たちはやたら吹聴せんでおいてくれ」
「すいません、お願いします」
投げっぱなしになっちゃったけど俺にはどうする事も出来ないからな。本部長にお任せしよう。
で、ある意味これからが本題なんだが。
「その【輝帝竜】なんですが、神託のあった翌日にふらっと里に飛んできましてね」
「はあ!?」
竜神が族長に神託したように、【輝帝竜】にも神託があったと説明する。
内容は俺たちの事で、それに興味を持った【輝帝竜】が様子見に来たと。
で、何やかんやあって、娘を預かる事になったと。
俺たちを気に入ったのか、娘の社会勉強の為かは分からんと、そんな感じで。
「で、その【輝帝竜】の娘というのがこのプラムなんです」
「……ちょっと儂、混乱してよく理解出来ないんじゃが、え? プラムってそのツェンの妹? 竜? 竜人族じゃなくて?」
「【輝帝竜】という種に関しては人語も介しますし、人の姿にもなれるらしいです。プラム、元の姿に戻って」
「む? よいのか? では――」
ツェンの膝から浮き上がると、プラムは<変異>を解いた。
光と共に現れたのは2mほどの小柄な竜。白金の鱗に四枚翼。小さくてもさすがに【輝帝竜】と言える姿だ。
『妾がプラムじゃ! よろしく頼むぞ、本部長とやら!』
「な、な、な……っ!?」
「とりあえず茶を飲め、本部長。死ぬでないぞ」
フロロのナイスフォローで、本部長が一気に茶を飲む。
「……はぁ、フロロ、お前の主はどうなってるんじゃ。儂を殺す気か。グレンよ、お前が付いていながら何をやっておるんじゃ」
「さすがにもう慣れました。一緒に居ると毎日退屈しませんよ」
「儂は退屈な日々を送りたいわい」
グレンさんが居なくても【輝帝竜】は来ただろうけどな。
どうにか気を持ち直した本部長が改まって、プラムと俺に視線を動かす。
「つまりそのプラムと言うのが次代の『竜の王』となるのか?」
「ですね。父親が現役なので当分先ですけど」
「それで人の姿になってカオテッドで共に暮らすと? まさか組合員にするつもりか?」
プラムはツェンの妹って事で通そうと思っている。ちびっ子だけど百歳の竜人族ですよと。本当は二千歳オーバーらしいけど。
組合員にして一緒に迷宮探索するつもりだが、組合員証を作るのに本部長に黙ったままというわけにもいかない。
というわけで先に話を通しておきたかったのだ。
「これこそまさに周知させるわけにはいかん情報じゃのう……人に化ける竜とか……。まぁ人として普通に過ごせるのであれば組合員とするのも吝かではないが、何かが起きた時はセイヤに責任をとってもらうぞ?」
「それは承知しています」
「うむ……ん? 【黒屋敷】に加入させるという事は、まさかその娘も奴隷にするつもりか?」
「竜が奴隷に出来るか分からないので、これからティサリーン商館に行って試してみるつもりです。仮に奴隷に出来なくても組合員にはしますけど」
「ふむ、それもそうか……」
本部長は頭を抱えながらも何とか冷静さを保っている。さすがだな。
しかし残念。爆弾の投下は止まらない。
「本部長、私とセキメイも奴隷となり【黒屋敷】に加入しますので」
「ちょっ!? はぁぁぁあああ!?」
「本部長よ、我の茶を飲め。もうちょっと生きろ」
フロロのナイスフォロー。やっぱり対・本部長だとフロロは扱いに慣れているな。誰より付き合いが長いし。
「いや、ちょっと待てい! お前が強さを追い求める性格なのは知っておる! だからSSSランクとなったセイヤに惹かれたのであろう! しかしだ! ソロのSランクなど世界にグレンしかおらんのだぞ!? それを捨てると言うのか!?」
「Sランクとなったのは修行の成果であって目的ではありません。強くなる過程でたまたまランクが上がったに過ぎないのです」
「……いやまあ、確かにグレンならばそう言うか……紹介したのが間違いじゃったかのう……」
「紹介して下さって感謝していますよ。このような御仁は二人と居ないのですから」
本部長はグレンさんの強さを追求する性格を知っていた。だからカオテッドに来たのも納得していたし、俺を紹介したわけだ。
それがまさか俺の奴隷になるだなんてなぁ……俺でさえも思ってなかったし。
ソロのSランクがSSSランククランに加入。世間的には大ニュースになりそうだけど本部長からすれば勿体ないんだろうな。俺もそう思う。
本部長は遠い目をして語り始めた。
「儂はなぁ、セイヤ……昨晩かなり真剣に『昇魔の儀』を行ったのじゃぞ? 昨年起こった数々の事件――【天庸】事件やら【聖戦】やら【黒屋敷】関連の諸々やら……それらで煩った心労を払拭すべくとな。今年こそは心休まる一年にしたいと願っておった。……それがなぜ新年初日からこんな事態になっておる!?」
もう一日早く帰還していれば去年のうちに報告出来たんですがね。
俺自身、予想外の展開ばかりだったし、昨日が大晦日だって知らなかったし、仮に知っていても報告するのには変わりないし。
ただ俺には謝る事しか出来ません。ご迷惑おかけしますと。
「はぁ……セイヤを二月も旅に出すとこうなるんじゃなぁ……こんなことなら迷宮探索の報告を聞いている方がまだマシじゃわい」
「あ、本部長、もう一つ相談があるんですけど」
「なんじゃ! まあだ儂を困らせる気か! もう嫌じゃぞ! 儂はもう聞きたくない!」
いやいや、そういった類の話じゃなくてですね。
本部長が喜びそうな件でのご相談です。
「博物館を移転もしくはリニューアルしたいと考えてるんです」
「……む?」
ほら、一気に乗り気になった。
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