死にたがりな魔王と研究職勇者

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勇者は理由がわからない①

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「はっ」


急激に引っ張られる形で目が覚め、目を開けると明け方なのか、日が差しており日の光が目に差し込む。
眩しさに慣れたころ、自分がベッドに横になっていることに気づいた。
どうやら死んではいなかったようだ。
ルイードはそこで左手が温かいことに気づき、横を見ると



「勇者・・・?」



勇者が自分の手を握って転寝をしているようだった。
その手をじっと見つめ、不可解な状況に困惑した表情を浮かべる。
勇者の手を追い、顔を覗きこむとパッと勇者の目が開き、目が合った。
急なことにビクッと体が反応してしまった。


 
少し無言の時間が流れたが、口火を切ったのは勇者だった。



「漸く起きたか。」



そう言ってそっと握っていた手を放した。



放された手をそろそろと引き寄せ、ルイードは困惑した表情のまま勇者を無言で見つめた。



「異常はないか?」



そう言って逆に顔を覗きこまれる。
なんのことなのかと記憶が混同し、


「なにがだ」



逆に疑問を返すと勇者は顔を覗きこんだ体制のままルイードの髪に手を伸ばしてくる。
その様子に体を引いて避けると勇者ははっとした表情になり、手を戻し、身体も座っていた椅子の背もたれに戻した。



「身体に異常がないかということだ。お前は5日間もあれから眠っていた。」



聞かされた日数に驚くが、体内の魔力が枯渇していたのであればそうなっても仕方がないかと納得した。

 

「それで、身体はどうなんだ」

  

再度勇者が聞いてくるが、なぜそんなに自分の身体のことが気になるのか。ああ、研究対象だからか?
そう思い、左手の熱が再度気になった。眠っていた時に感じたあの左手の温かさはもしかして・・・と



「身体は・・・今は少しだるいくらいだ」


そう答えると勇者は少し表情を緩め、

 

「そうか、よかったな。」


フッと少し微笑んだようだった。
その様子に不意を突かれた魔王は何も言えずに黙り込んでしまった。


ーーなぜ、そんな表情をするのだ。



そんな魔王を気にすることなく、話を進めていく勇者はなぜか魔法士のトリスを呼んでくると話し、さっさと部屋の外に出ていってしまった。




その様子にぽかんとして何が起こっているのか検討もつかない魔王は勇者が戻ってくるまで手持無沙汰に左手を握ったり開いたりを無意味に繰り返してしまうのだった。

 


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「今のところ体内の臓器に目立った損傷はなさそうですね。まあ、あえて言えば栄養失調のような状態ではありますが。」



そう言ってルイードに対してではなく勇者にルイードの身体の状態について診断結果を伝えるのはトリスであった。
トリスは以前見た時よりラフな格好をしており、白シャツに灰色のズボン、髪は束ねているが、身体の前に垂らしている。




「栄養失調か・・・」




勇者はルイードの方を見て、


「魔王に聞きたいことは多々あるが、まずは体調を戻すことが先だな。」



そう言うと部屋から出て行ってしまった。
部屋には魔法士のトリスと二人きりになってしまった。
あからさまに自分のことを敵視している人物であるため、警戒したいところではあるが、体のだるさもあるため、とりあえずルイードは体を起こすことにした。


その様子を無言でトリスは見ていた。



勇者と二人の時には何故か感じない居心地の悪さを感じるが、世間話をするような間柄ではないため、ベッドに座ったまましばらくその場を過ごしていると、



ガチャ

扉が開いた。


そこにはコンラッドを連れた勇者がおり、コンラッドの手元には食事の乗ったワゴンがあった。



「食事にしよう」


そう言って勇者はやテーブルの席にさっさと着き、コンラッドは勇者の目の前に食事を用意していく。


さっきまで話をしていたのに急に食事に切り替えた勇者の行動についていけず、ルイードは困惑した様子で反応できず固まっていたが、一方のトリスは頭を押さえてため息をつくと、勇者の向かいの席に着席した。


その様子にますます訳の分からないルイードはどうしたものかと手持ち無沙汰にしていると



「ああ、そうか」



何やら一人納得した様子の勇者がコンラッドに伝え、コンラッドがベッドの方にワゴンを押して向かってきた。
警戒する魔王が座るベッドの横に置かれたのは、湯気のたつスープと柔らかそうなパンの乗ったトレーであった。


「消化に良いものですので」


そう言って下がるコンラッドと勇者の方に目線を向けるが、勇者は満足そうに頷くと、自分は食事を始めてしまうのであった。
向かいにいるトリスも気にした様子なく食事を始めている。



ルイードは自分の隣に置かれた食事を見てため息をついた。

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