親衛隊隊長だけど彼女がいます!

kira

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(21)運命の赤い糸

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 紐をもらうために歩いていると人の数が増えてきた。やはりこの祭りのメインイベントということもあって、多くの参加者がいるんだろう。今度ははぐれないようにしっかりと雫と手を繋ぐ。

 ざわざわ……
「人いっぱいだねー。」
「そうだな。どこで紐貰えるんだろ?」
「あっ!あそこじゃない?行列があるよ!」
「ほんとだ。行こっか!」

 俺たちは行列の最後尾へと向かう。この時点でざっと50人以上が前に並んでいる。比較的若い男性が多く並んでいることから学園の生徒が多いんじゃないかなんて想像する。
 ふと前に並んでいる人に見覚えがあることに気づく。東金先輩だ。思わず声をかける。

「東金先輩?こんばんは。」
「おや藤岡くんこんばんは。……そちらは彼女さんですか?素敵ですね。」
「えっと……私はただの友人です!お褒めありがとうございます。東金さん?も浴衣が似合って素敵ですよ!」
「ご友人でしたか。それは失礼しました。……ありがとうございます。」

 やはり東金先輩で合っていたようだ。声をかけるとにこやかに反応してくれ、雫と和やかな会話をしてくれている。
(前も思ったが、やっぱり雫と東金先輩の雰囲気が似ているな。兄妹って言われたら信じるかもしれない。)

 東金先輩と話していると疑問が出てきた。東金先輩が1人でこの行列に並んでいるのだ。連れ合いはいないのだろうか?

「先輩、おひとりですか?」
「いえ隆弘くんと来たのですが、はぐれてしまって。とりあえず私が2人分の赤紐をもらっておこうと思いまして。」
「そうなんですね!こんなに人が多いとはぐれちゃいますよね。」
「私たちもさっきはぐれてしまったばかりなんですよねー。」
「そうなんですか?合流できて良かったですね!」

 会話をしているうちにだいぶ列が進んだようだ。次で先輩が紐をもらう順になる。

「並んでいるうちに合流できたらって思ったんですけど、1人で受け取るしかないようですね笑」
「じゃあ一緒に受取所に入りませんか?」
「ちょっと!幸輝!それは図々しいよ。なるべく早く入りたいみたいに聞こえる!」
「あっ!違う!ただ1人で入るのは寂しいかなって……すみません。」
「雫さん大丈夫ですよ。ちゃんと気持ちは伝わってます。ですが私はお邪魔では?」
「「いえいえ!一緒に行きましょ!」」
「……!仲良しですね。」
「……昔からの付き合いなので考えることが近くなりがちなんです笑」
「なるほど。ではご一緒させてもらってもいいですか?もちろん紐を結ぶのはお二人で。」

 なんだか先輩が悲しそうな目をしている気がしたため、思わず一緒に入る提案をしてしまった。雫には叱られたが。
 順番が来たので、3人で一緒に受取所に入る。

「次の方どうぞー。紐3つでよろしいですか?」
「いえ4つでお願いします。」
「はい。どうぞー。こちらの紐を縁が続いてほしい方同士で結ぶと、末長く縁が続くと言われています。恋人同士はもちろん、友人同士で結んでも良いものですよー。結んだらあちらの建物にある木箱の中に入れてくださいねー。」

「「「ありがとうございます。」」」

 無事に紐を受け取って、受取所から出る。すると急いでいた人が東金先輩にぶつかった。

「あっぶね!大丈夫ですか?」
「えぇ。ありがとうございます藤岡くん。」

 倒れそうになった先輩を俺が支える。文句でも言ってやろうかと思い、ぶつかってきた人物を見ると……副会長だ。
 思わず驚きで、俺の動きが止まるとなぜだか副会長は睨み付けてくる。
(いやなんでぶつかってきた方が睨んでるんだよ?なんか東金先輩というより俺を睨んでる……?あっ!俺が東金先輩を支えたままだからか。)

「では私はこれで。藤岡くん、雫さんありがとうございました。」
「待ってください!葵!」
「……あなたと話すことはないです。」
「どうしてですか!?私がなにかしてしまいましたか?」
「いえ別にそんなことはないんですが……私の問題です。」
「お二人は喧嘩中ですか?」
「「え?」」

 雫が突然、2人の会話に切り込む。そして紐をそれぞれに渡す。

「東金さん紐片方持ってください。あなたも持って。」
「「……はい。」」
「はい!紐は結ばれました!これで仲直りしてくださいね!」
「ですが……私は……。」
「東金さんうじうじしない!別に彼のことは嫌いじゃないなら、問題が解決したときに疎遠だったら寂しいですよ!?」
「……そうですね。」
「葵……!」
「ですが今は話すことはできません。失礼します。」

 そう言って、東金先輩は結ばれた紐を持って立ち去った。

「……そこのあなた感謝します。」
「いえなんだかもどかしくって……つい。」
「それで藤岡くん。あなたは葵に好かれてるからって調子に乗らないでくださいね。」

 なんだか俺にライバル視をしながら副会長も立ち去った。
(なんか副会長に会うたびに、こんな場面に出会うな……。)

「東金先輩は紐、木箱に入れるかな?」
「きっと入れると思うよ。」
「へぇなんで?」
「ん?女の勘!」
「そっか笑」
「そういえば副会長の好きな人って東金さんだったんだね。」
「あぁたぶんな。」
「なんか幸輝、めっちゃ敵視されてなかった?笑」
「いつも出会う場面が東金先輩と一緒だから嫉妬してるのかも……。」
「そうなんだ笑」
「うん。でもこの赤い紐効果で、東金先輩と副会長が仲良くなったら問題ないだろ!」
「そうね!それにしても東金さんの問題ってなんだろう?」
「さぁ?なにか深刻そうではあったが。」
「もしかしたら行方不明事件に関係あるかもね。」

 結局、このまま2人で話していても解決はしないという結論で落ち着いた。
 とりあえず自分たちの分の紐を結び、無事に木箱に入れることができた。そのときに東金先輩や副会長を見かけることはなかった。





 夏祭りもメインイベントがほぼ終了し、帰宅する人が増えてきた。俺は寮へ帰るが、雫は実家の方へ帰るらしい。しばらくは実家の方で過ごすと言っていた。

「今日は久しぶりのデートだったけどなんか色々あったねー。」
「本当に……。特にあの奏多とかいう偽転校生にはストレスが溜まった。」
「そんなに強烈な人だったの?」
「うん。前会長がベタ惚れっぽかったけど、どこが可愛いかわからない……。」
「あはは!幸輝がそこまで言うって珍しいね!」
「あれはもはや新人類だよ……。せっかくの楽しいデートがあの出来事で上書きされてやがる……。」

 俺が愚痴っていると、雫がそっとキスをした。

「これで上書きの上書き?」
「……上書きされました。」
「ふふふ!じゃあ電車の時間あるから帰るね!夏休みの間は実家にいるからまた学校始まったら会おうね!」
「わかったまたな!」

 カランコロンと下駄の音をさせて、雫は駅へと向かっていった。

「くっそー!彼氏の俺からすれば良かった……。」

 別にキスは初めてではないが、照れ臭い。さりげなくのかっこ良さが雫にはあって、どこか負けた気がする。
 偽転校生のことも記憶のすみに追いやって、俺も寮へと帰ろうと歩き出す。だが目線の先に偽転校生が目に映る。
(なんでせっかく上書きできたのにまた現れるんだ!……こっちに気づくなよ?)

 見つからないようにコソコソと移動していると、奏多が誰かの腕を引っ張って歩いているのが見えた。どうせ前会長だとぼんやりと見ていた。
 だが引っ張られているのは前会長とは違い少し線の細い男性だ。よくよく見て気づく。あれは響だ。思わず追いかけようとしたが、大人数の集団が間に入り2人の姿が見えなくなる。
 視界が開けるとすでにいなくなっていた。急いで2人がいたらしき場所へ向かうが、周りは森林になっていてよく見えない。夜だということもあって、どこへ向かったか見当もつかない。

(まさか響がいるなんて!……昼間にもう一度来て確かめよう。)





 - 寮
 ローリエの集のグループへメッセージを送る。

『親友を見かけた。探すのを手伝ってほしい。』

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