宇宙タクシー

はらたいらさんに全部

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いち

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僕は宇宙タクシーの運転手。いつもお客さんを乗せて宇宙を走り回ってる。
今日のお客さんは地球に住んでるおばあちゃんだ。娘さんが結婚してから住んでいる火星へ連れて行ってほしいと頼まれた。これまで何度か娘さんに会いに行きたかったんだけど宇宙旅行が怖くてどうしても会いに行く勇気が出なかったそうだ。
少し前に娘さんからお孫さんが生まれたと連絡があってどうしても会いたくなって火星へ行くことにしたんだそうだ。
おばあちゃん、任してよ。さあ出発だ。

月を超えた辺りだった。月の影から何台かの宇宙カーが飛び出してきて、タクシーの行く手を邪魔するように止まった。宇宙カーにはドクロのマーク。あっ、宇宙ギャング団だ。
「ここは俺たちの縄張りだ。通行料を払ってからじゃないと通れないぜ」
何を言ってるんだ、ここは誰がどこを通ってもいい宇宙じゃあないか。こんな連中に関わってなんかいられない。僕のタクシーはこう見えてもスピードでは他の車には負けない自信がある。毎日ていねいにあちこち点検してちょっとでも悪くなった部品があったらすぐに交換してるからいつも絶好調なんだ。
僕は通行料を払うと見せかけて、ギャング団の隙をみて急発進した。びっくりしたギャング団が慌てて追いかけてきたけど、ぶっちぎってやった。いつも調子を万全にしておくことは、本当に大切なことだ。

火星まで残り半分くらいになった頃だった。急にタクシーが影になった。見上げると、大きな影が。あっ、宇宙怪獣だ。
あいつはいつもお腹を減らせている。きっと今日も食べ物を探して宇宙を飛び回ってるんだ。
宇宙で一番早く飛べる動物なんだ。
どうしよう?僕は考えた。
そうだ、僕のタクシーはスピードではあいつに負けるけど、あいつは僕のタクシーのように小回りはきかないはずだ。
右へ行くと見せかけて、左。
上へ行くと見せかけて、下。
前へ行くと見せかけて、後ろ。
僕はタクシーを怪獣の前でちょこまかと動き回らせた。
すると僕のタクシーを見ていた宇宙怪獣の目が泳ぎだした。
今だ。僕は怪獣の顔をめがけて飛んで行き、ぶつかる直前にきゅっと曲がって、そのまま怪獣の後ろに向かって全速力で飛んだ。
ぶつかると思った怪獣は思わず目を閉じたはずだ。そして僕のタクシーを見失ったはずだ。やった。宇宙怪獣から逃げたぞ。

火星まであと少しのところまで来た頃だった。おや、景色がなんだか変だぞ。この前来た時と何か違う気がする。こんな時は宇宙ナビで分析だ。
ナビのモードを色々と変えてみる。
宇宙地図モード、異常なし。
通常光モード、異常なし。
重力モード、異常あり。
すごく巨大な引力が押し寄せてきてる。
大変だ。ブラックホールだ。
僕は急旋回してアクセルを全開にした。
うっ、スピードが出ない。
ブラックホールが吸い込もうとしてるんだ。ブラックホールに吸い込まれたら二度と出られないぞ。
こうなったら瞬間移動だ。タクシーのエネルギーが無くなっちゃうかも知れないけど、今はそんなことを言ってる場合じゃあない。
瞬間移動スイッチ、オンッ。
窓ガラスの向こうの星々が、消えてゆく。


どれくらいの時間がたったんだろう。
気が付くと、何事もなかったようにタクシーは自動走行していた。ナビからは巨大な重力波が消えていた。
もう大丈夫だ。逃げ切れたぞ。

科学技術がいくら発達しても宇宙には危険がいっぱい潜んでる。でも、常に注意して運転していれば大丈夫。もし何かあってもよく考えて対応すればなんとかなるもんだ。

瞬間移動でたくさんの電気エネルギーを使ってしまったけど、バッテリーにはまだ少しだけ電気エネルギーが残っていた。このわずかに残ったエネルギーを使ってなんとか火星に到着した。
火星につくと、赤ちゃんを抱いた娘さんがおばあさんを迎えに来ていた。
女の人を見つけたおばあさんが言った。
運転手さん、火星に連れてきてくれてありがとう。

赤ちゃんにあえておばあさんは幸せそう。
娘さんも、赤ちゃんも嬉しそうだ。

大切な人とは会う事が、一緒にいる事が、幸せなんだね。
おばあちゃん、良かったね。
地球から見るより小さい太陽を横目に、僕はエネルギーを補給できるスタンドを探し始めた。
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