【完結】三度の前世でヤンデレに殺されている俺は今世こそ寿命で死にたい。

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幼馴染は心の病気

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    バタンと扉の閉まる音を聞いてようやく詰まりそうになっていた息を吐き出す。
    靴を脱ぐために手を解こうとして、それは叶わなかった。

「はくり、あいつなに」
「え、と…部屋で話そう。な?」
「いま聞いてる」
「コンビニの店員さんだよ」
「それは顔を見れば分かる。あいつなに、なんで話してたの、なんで一緒にステバにいたの、はくりのなんなの」
「っ…」

    帰り道では俺の方が強く握っていた手を、今は礼於がギリギリと搾り取られるような強さで圧迫してくる。
    あまりの強さに顔を顰めて唇を噛む。本当は手を振り解きたいが、そんなことをすればもっと奴を悪化させるだけだ。

「はくり、ずっとあいつとあそこにいたの?俺が電話したときも?嘘ついたの?ねぇ、なんで?」
「ご、ごめん、礼於。違う、あの時はまだ学校にいた」
「…なんですぐに帰らなかったの」
「寝ちゃってたんだ」
「うそだ」
「っ…」
「なんでうそつくの、はくり。殺されたいの」
「ちがっ、…いっ」

    さらに強く捕まれた手。そのまま思いっきり引っ張られてその拍子に靴が玄関に飛び散った。
    自分の家のはずなのに、進むのが怖いと思わざるを得ないのは奴の背中から滲む濁った空気のせいだ。

    迷わずに連れてこられた俺の部屋。そのまま投げ捨てるようにベッドへと乱暴に倒された。
    ギシリと嫌な音がなる。あぁ、このベッドが壊れるのは遠い日ではないかもしれないと嘆いた。

「はくり」

    ベッドに転がされた俺の上へと迷わずにのし掛かってきた礼於。
    首に手を当てられ少しでも力を入れたら窒息死するぞと空気だけで圧力をかけられた。
    もう片方の手で眼鏡を外され、前髪を後ろに撫で付け、頭を抱え込まれながら鼻先がくっつきそうな距離で暗い瞳に捕まった。

「はくり、嘘ついたら殺す」
「……」
「学校で寝てたんじゃないよね?」
「…うん」
「なにしてたの」
「…呼び出しくらってて」
「だれに」
「先生に」
「先生ってどいつ」
「橘先生」
「なんで」

    言いたくない。これだけは言いたくない。
    何としてでも阻止しないといけないのに、押し黙る俺の首を掴む手に力が込もって息を吸うことが僅かに苦しくなる。

    確かに俺は、生きたくもなければいつ死んでもいいと思っている。だがなるべく寿命で死にたい。
    特に絶対にこの死に方はしたくないのだ。もう何度も経験してきたことだから。
    俺は諦めて口を開くと、力のこもっていた手が緩んだ。

「……小テストの点数が悪くて、何かあったのかって聞かれて」
「そう。それが本当かどうかはあとでテスト見せてもらうから。それをなんで隠そうとしたの」
「…礼於に、バカにされると思って」
「橘とはなに話したの」
「特に何も。腐男子だってことがバレないように必死だった」
「本当になにもない?」
「なにもない。心配されただけ」
「ふーん」

    1つ解決されたのか、元の色を取り戻しつつある礼於の瞳。
    早く解放されたい一心で俺は礼於の機嫌ハンドルを注意深く操作する。もう事故に遭ってるようなものだがこの先はいかに被害を最小限に出来るかだ。

「あのコンビニ店員はなに」
「この前注意されたって言っただろ?そのときと昨日で俺が腐男子だってことがバレた。そしたらあの人も腐男子で語り合いたいみたいになって…」
「一緒にスタバで仲良くお喋りしてたんだ」
「…そんな仲良くはなってない」
「連絡先は?」
「知らない」
「はくり、うそついたら殺すっていった」

    ぐっと再び首に圧力をかけられる。こうなることはもちろん分かっていた。わざと、嘘をついた。

「見てたなら見てたって言えばいいじゃん。止めに来れば良かったじゃん。礼於にはその権利があるのに」
「…権利、ある」
「あるよ。幼馴染だもん。俺は礼於が止めに入ってくれたら嬉しかった」
「うれしい?なんで?」
「そ、れは…その」
「はくり、なんで?なんでうれしいの?」
「し、嫉妬してくれたのかなーとか思っちゃったりするし、礼於が俺を大好きなんだって分かるから…」
「はくり…かわいい」

    抜け落ちていた表情はいつの間にかうっそりと甘い果実のように蕩け、そのまま近付いてくる。
    首にあった手は頭に回り、両手でしっかりと抱え込まれた。
    降りてきた唇と唇が合わさり、俺は礼於の首に腕を回す。するとさらに俺の頭を抱え込む手が強まり、唇の間から舌を差し込まれた。

「んっ…」
「はくり…かわいい、おれのもの」
「ふぁ、んんっ」
「ねぇ、あいつのLINE、消すよね?」
「うん消すよ」
「はくりはおれ以外、いらないよね?」
「うんいらない」
「おれのもの、おれだけのもの…」

    ぴちゃ、くちゅ、と濡れた音が部屋に響くのをぼんやりと聞いていた。
    俺のポジションが俺でなければ最高に萌えるのになぁと残念感が拭えない。

    しばらく唇を合わせて満足したのか、礼於はようやく俺の上から退いた。
    ふと時計を見れば20時を過ぎていて1時間くらいかと考える。まぁ、今回は平均より長かったけど大丈夫だろう。

「はくり、今日泊まる」
「おっけー。親遅いから適当に何か作るわ。それとも食べに行く?」
「外はやだ。はくり作って」
「了解。先に風呂入れば?」
「そうする」

    礼於は風呂へ、俺はキッチンへ。こうなったときに礼於が俺の家に泊まるのはいつものことだ。
    そして同じベッドで眠って朝目覚めればいつもの幼馴染に戻っている。
    口調も表情も瞳も、何もかも無かったかのように俺たちは普通の幼馴染みに戻れるのだ。だから、大丈夫。

    神林礼於は、病気だ。心の病気だ。
    だから俺は幼馴染としてそれを治す手伝いをする義務がある。

    必ず治して、俺は早く解放されたい。

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