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仮装をする博士と助手の話

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「あうー、助手君、包帯が絡まってうまく巻けないよー」


僕と博士しかいない研究室では、今日も博士の情けない声が響く。
と言っても今日はなんか博士の様子がおかしい。
部屋に入ってきた博士は包帯ぐるぐる巻きの状態だった。


「だから、ちょっと包帯を巻くのを手伝ってくれないか?」

「えっ!?博士どうしたんですか!?怪我でもしたんですか?」

「ん?あ、いや、そういう訳じゃないんだが」

「痛くありませんか?痛み止めでも持って来ましょうか?」

「……別にけがをしたから包帯をしているわけじゃない」

「え、違うんですか?」

「そうだよ。まったく君は私がこんな包帯ぐるぐる巻きになるような怪我をするような人間だと思っているのかね」

「はい、思ってます」

「……そこまでハッキリと言われるとは中々悲しいものがあるのだが。まぁいい、君は今日が何の日か知らないのか」

「今日……ですか?えっと、今日は10月の31日……あっ」

「そう今日はハロウィンだよ!仮装をする日では無いか!」

「だからそんな怪我人みたいな恰好をしているんですね」

「むぅ、怪我人じゃなくてミイラの仮装をしているだけど」

「あ、それミイラだったんだ。なるほど」

「まぁ、そういう訳だから、ハッピーハロウィン!さぁ、お菓子を用意するか、今すぐ実験に付き合うか。好きな方を選ばせてあげよう!」


……いつの間にか、お菓子を入れるであろう籠を持っている。
これ、実験って答えたらどんな反応するんだろう……


「じゃあ、実験ですかね」

「え……」


……めっちゃシュンとするやん。


「そ、そんな悲しそうな顔をしなくても」

「……」

「冗談ですよ、すいません。ちゃんとお菓子ありますから。」

「ふぅーん……?(チラチラ)」

「そ、それじゃあ、さっそくお茶にでもしましょうかね!その後に実験しましょうか、ね!」

「まぁ、君がそう言うのならそうするか、仕方が無いな」


そうして、僕は拗ねてしまった博士のためにコーヒーを淹れたり、色々走るのだった。
……なんとも面倒くさい博士を持ったものだ。





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